日本薬理学雑誌
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70 巻, 6 号
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  • 国友 勝, 長倉 利行
    1974 年 70 巻 6 号 p. 735-746
    発行日: 1974年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    1-〔2-(dodecyloxy)ethyl〕pyrrolidine hydrochloride(DEP)は豚回虫に対し強い殺虫性を示す新化合物である.回虫に対するDEPの作用性を生化学的手法により検討し,次の結果を得た.glucoseを基質にした場合の回虫筋細胞質でのmalate生成能に対し,高濃度のDEPにおいては阻害作用が認められたが,殺虫閾値濃度での作用は微弱であった。DEPは回虫筋ミトコンドリアのsuccinate生成能を強く阻害したが,可溶性酵素fumaraseおよびmalicenzyme活性に対しては影響がなかった.DEPは殺虫閾値濃度において回虫筋ミトコソドリアのsuccillate cyt.c reductase活性およびsuccinate methylene blue reductase活性を著しく阻害した.これら両酵素活性に対するDEPの諸種濃度での阻害率はほぼ同程度であった.またmalate cyt.c reductase活性に対するDEPの阻害作用はsuccinate cyt.c reductase活性に対する場合と同様な傾向を示した.DEPはsuccinateまたはmalateによって還元されたcyt.cの再酸化反応を著しく促進した.これらの結果,DEPはsuccinate dehydrogenaseおよびNADH dehydrogenaseを中心としたミトコンドリア膜依存性酵素系を強く阻害することが示唆される.
  • 政本 久美子, 荒井 裕一朗, 黒岩 幸雄, 黒沢 安彦, 安原 一, 庄 貞行
    1974 年 70 巻 6 号 p. 747-756
    発行日: 1974年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    牛肝臓より作製した5つのmonoamine oxidase(MAO)標品,すなわちhomogenate-MAO,mitochondria-MAO,可溶化抽出したMAO-1,MAO-2,本来可溶性で存在するS-MAOに対するethyl alcohol,butyl alcoholの影響を検討した.また,これら薬物のmitochondriaにおよぼす形態的な変化を電子顕微鏡で観察した.牛肝臓中のこれら5つの標品に対してethyl alcoholは0.1~1%濃度でそれらの活性を増加させた.また,10%以上の高濃度では活性阻害が認められた.ラット肝臓mitochondria MAOに対してbutyl alcohol,ethyl alcoholの影響を検討した結果,butyl alcoholはその0.01~10%で著明な活性阻害を示した.ethyl alcoholは0.1~10%で活性の促進作用を示し,特にその10%でその作用は最も著明であった.ラット肝臓より分離したmitochondriaに対し,butyl alcohol,ethyl alcoholを作用させた後オスミウム酸で固定して電顕標本を作製し,その形態変化を電子顕微鏡で検討した.その結果,両者ともあきらかな形態の変化を認めた.butyl alcohol0.01%では対照のmitochondria像とほとんど相違は認められなかったが,0.1%では大きさの均一性がなくなり,輪郭が失なわれ,cristae,matrixの消失が認められた.1%ではさらにmatrixの消失が著るしく,個々の輪郭膜が接近または結合していた.10%ではmitochondriaの構造は全く認められなくなった.一方,ethyl alcoholでは前者とは異なる形態変化を呈し,外膜,内膜の存在が比較的よく観察され,内部のcristae,matrixの消失もわずかであった.0.1%ではさまざまな形状のmitochondria像が認められた.10%ではmitochondriaの膨化,cristaeの膨化,matrixの変化が認められるとともに,外膜の剥離状態が著るしく観察され,中には外膜が完全に剥離し,外膜のみが小胞状に存在する像も観察された.40%ではかろうじてmitochondriaの外形を保ち,内部matrixの著るしい凝集,空胞化が認められた.
  • 久保田 哲弘, 佐々木 忠治, 中沢 政之
    1974 年 70 巻 6 号 p. 757-766
    発行日: 1974年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    本論文では呼吸興奮薬であるDoxapramのイヌにおける呼吸および循環作用を検討し以下の成績を得た.1)Doxapram静脈内注入は著明な全身血圧の上昇および速やかな呼吸数増加,呼吸深度の増大を示し,それに伴なう血中ガス分圧の変化(PaO2の上昇,PaCO2の下降)が認められた。2)Doxapramの点滴持続注入は深麻酔下の高PaCO2,低PaO2値を示すイヌに対し,血中ガス分圧の改善を示した,3)Doxapram静脈内注入により生ずる血圧上昇作用はphenoxybenzamine,hexamethonium,guanethidineないしはreserpine処置犬において消失または著明に抑制され,cocaineにより増強された。また,脊髄犬においてはDoxapramの血圧上昇作用は認められなかった.4)心肺標本においてnorepinephrineは一過性の心拍数,心拍出量の増加,血圧上昇,心尖運動の充進ならびに右心房圧の低下を来たした.tyramineによっても軽度ではあるがnorepinephrine類似作用を来たした.一方,Doxapramによっては著明な変化は認められなかった.5)後肢潅流標本においてはDoxapramの動注により著明な血流量増加作用が認められたがnorepinephrine注入により血流は減少した.6)以上の成績よりDoxapramは著明な呼吸興奮作用を有し,また,Doxapramによる血圧上昇作用は主に中枢性に生ずるものと推定された.
  • 渡辺 繁紀, 川崎 博己, 植木 昭和
    1974 年 70 巻 6 号 p. 767-784
    発行日: 1974年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    慢性電極を植込んだウサギを用いて,maprotilineの脳波作用をimipramine,amitriptylineのそれと比較検討した.maprotilineは自発脳波に対して,皮質および扁桃核では高電圧徐波,海馬ではθ波の脱同期化などdrowsy patternを惹起した.imipramine,amitriptylineも同様に脳波をdrowsy pattern化するが,その作用はmaprotilineよりもはるかに強い.またimipramine,amitriptylineでは動物は行動上鎮静を示し,軽度の筋弛緩,歩行失調を起こすのに対して,maprotilineでは軽度の鎮静状態を示すのみであった,maprotilineは音刺激および視床内側中心核,視床下部,中脳網様体の電気刺激による脳波覚醒反応に対してほとんど作用を示さなかった.imipramine,amitriptylineはこれらの反応を著明に抑制し,覚醒閾値を上昇させた.またphysostigmine投与によって誘発される脳波覚醒反応はmaprotilineによってほとんど変化しなかったが,imipramine,amitriptyline,chlorpromazineはこの覚醒反応を抑制し,発現時間は著明に短縮した.視床内側中心核刺激による漸増反応はmaprotilineにより変化を受けず,imipramine,amitriptylineにより増強される傾向を示した.海馬,扁桃核の電気刺激による大脳辺縁系後発射はmaprotilineによって抑制されずむしろ増強される傾向を示したが,imipramine,amitriptylineでは投与初期に著明な抑制,その後増強という2相性の作用がみられた.以上,maprotilineは自発脳波のdrowsypattern化をおこす点imipramine,amitriptylineの作用と類似しているが,その作用は弱く,脳幹網様体賦活系に対する抑制作用もほとんど認められず,imipramineやamitriptylineとはかなり異なった脳波作用を示す新しい型の抗うつ剤である。
  • 水沢 英甫, 藤原 寛
    1974 年 70 巻 6 号 p. 785-799
    発行日: 1974年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    ifenprodilの薬理作用を主として摘出血管について検討し,以下の結果を得た,(1)ifenprodil(10-8~2×10-5M)前処置は兎摘出大動脈のnoradrenaline収縮を抑制し,その抑制は競合的であった(pA2=7.45).10-6~10-4Mの濃度ではhistamineおよびserotonin作用に拮抗した.また,2×10-5~5×10-4MでBaCl2収縮を,5×10-6~10-4MでKCl収縮を非特異的に抑制したが,angiotensin II収縮に対しては5×10-4Mではじめて抑制した.(2)予めBaCl2でもって収縮した兎大動脈をifenprodil(5×10-6~10-4M)は有意に弛緩し,その強さはpapaverineの約1/6.7であった.(3)予めKClでもって収縮した犬摘出動脈(脳,上腸間膜,腎および大腿動脈)をifenprodil(5×106~5×10-4M)は弛緩し,その強さはpapaverineの約1/10~1/6であった.脳および腎動脈における弛緩は上腸間膜および大腿動脈に比べて強かった.(4)兎摘出心房において,ifenprodil(10-5~10-4M)は陰性変時および変力作用を示した.(5)isoproterenolのモルモット摘出気管の弛緩作用をifenprodil(10-6および10-5M)は変化しなかった.
  • 藤村 一, 鶴見 介登, 平松 保造, 呉 晃一郎, 中野 万正, 渋谷 具久
    1974 年 70 巻 6 号 p. 801-818
    発行日: 1974年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    Kletoprofenは強力な抗炎症作用を有し,鎮痛下熱作用も比較的強いのでその一般薬理作用を試験した.Ketoprofen投与により外観上異常症状を認めなかったが,自発運動を軽度減少させ,協調運動もわずかに障害した.Hexobarbitalおよびbarbitalの睡眠作用にも協力効果を示したがごく弱いものであった,その協力はphenylbutazoneのように代謝面からの協力ではなく,多分indomethacinと同様中枢抑制作用からの協力と思われたがilldomethacinに比しかなり弱いものであった―従ってketoprofenは中枢神経系に対して抑制的に作用するもののごく軽度なもので,抗炎症作用用量にてはほとんど影響のないものであった.呼吸循環系に対しても大量の静注で心拍動を抑制し,血圧血流量をわずかに低下させ,呼吸は促進から抑制的になったが,極めて大量の場合で抗炎症作用用量では全く影響がなかった.腎に対しては尿量を減少させ,尿中電解質排泄量も減少したが,ketoprofenのみに特有な作用ではなく他の既知酸性抗炎症薬すべてに認められる性質であった.気管,子宮および輸精管などにはほとんど作用せず,横隔膜収縮に対しても高濃度で抑制するのみで,平滑筋および骨格筋にもほとんど影響しなかった.自律神経系にも作用なく,catecholamineやacetylcholineの作用にも影響しなかった.その他histamineや5-HTおよびbradykininに対しても拮抗作用はなく,BaCl2の腸管収縮にも影響しなかった.さらに血液凝固や血糖値にも影響せず,局所刺激作用もほとんど認められなかった.以上の結果からketoprofenは抗炎症作用用量にては尿量減少以外明らかな薬理作用はなく,既知抗炎症薬と同様な作用物質と思われた.ただ大量では中枢抑制および呼吸循環系に対する影響が認められたが,大量投与による中毒症状と思われる.
  • 都築 建仁
    1974 年 70 巻 6 号 p. 819-830
    発行日: 1974年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    まずepinephrine(2.5μg/kg i.v.)と,等モル量のisoproterenol(3.4μg/kg i.v.)ならびに血糖上昇がほぼ同じになる用量のcyclic AMP(2.0mg/kg p,v.)の作用を比較した結果,1)isoproterenolにより血清カリウムの下降に先立ち一過性の上昇が現われることが見い出された,2)その上昇度は,cyclic AMPと同じであり,epinephrineの約1/4であった.3)血糖上昇,肝phosphorylase活性上昇,肝組織カリウム減少,肝glycogenの変化には三薬物間に有意の差が認められなかった.4)肝cyclicAMPレベルの上昇はepinephrine,isoproterenolとも時間的経過,上昇度において一致していた.5)Adrenergic blocking agentsの影響からは,epinephrineの血清カリウムの上昇はdihydroergotamine(α-blocker),dichloroisoproterenol(β-blocker)により阻害され,阻害後の上昇値の和は対照epinephrineの上昇値と近似しており,isoproterenolの上昇はβ-blockerのみにより阻害され,epinephrineのα-blocker処置後の上昇値とisoproterenolの上昇値とは近似していることが認められた.なお,insulin,glucose添加insulinのinfusionにより,血清カリウムと肝Phosphorylase活性の減少,肝組織カリウムと肝glycogenの増加がみられるが,epinephrineの作用には有意の影響が認められなかった.次にin vitroにおいて,イヌ肝adenylc yclase活性に対する影響を調べた結果,1)カリウムは0.05mM以上の高濃度において阻害を示した.2)Isoproterenolによる活性上昇はカリウムの併用により阻害されなかった。3)その上昇はα-blockerよりもβ-blockerにより大きく阻害されることが認められた.以上より,epinephrineによる血清カリウム上昇はα,β両receptorを介する反応であり,そのうちのβ-receptorを介する変化において,過カリウム血と過血糖の相関性が肯定される.
  • 田村 俊吉, 前橋 浩, 野崎 茂, 水上 玲子
    1974 年 70 巻 6 号 p. 831-836
    発行日: 1974年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    ヒ素の吸収,排泄に対するこれまでの研究で,雑穀で飼育したラットとミルクで飼育したラットを比較すると,ミルクで飼育したものに明らかに吸収の抑制が見られた.さらにミルクの成分を解けて実験した結果,カゼインがその作用を現した,そこで本実験では,カゼインをパンクレアチンで消化して作るpolypeptoneと,カゼインを加水分解酵素でアミノ酸に分解して作るpolytamineが,Asの吸収臓器内貯留,排泄におよぼす影響について調べた.その結果,体重増加,飼料摂取量,糞便内のAs排泄量はいずれの群も統計的に有意差はなかった.尿中のAs量はpolypeptone添加群で有意に増加した.脳のAs量はpolypeptone群で有意に少なかった,肝ではpolypeptoneで臓器全体のAsは増加したが1g当りのAs量では差がなかった.腎ではpolypeptone群で明らかに増加した.肺ではpolytamine群で明らかな減少を示した.脾ではpolytamine群で明らかに少なかった.このことより,polypeptone,polytamineはカゼインのように吸収を抑制する作用は認められなかったが,吸収されたAsの挙動に対し,何らかの作用をおよぼしていると思われる.
  • 田村 俊吉, 野崎 茂, 前橋 浩, 田中 いずみ
    1974 年 70 巻 6 号 p. 837-841
    発行日: 1974年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    本研究において,650PPmのAs2O3を加えた雑穀飼料にmethionine,taurine,cysteineをそれぞれ1%添加して,尿および糞便内のAs量,脳,肝,腎,肺および脾内のAs量に影響を与えるか検討し,以下の結果を得た.1)尿および糞便内のAs量はmethionine,taurine,cysteineをそれぞれ添加した群とAs対照群との間にかなり動揺はあったが統計的には影響は全く認められなかった.2)脳,肝,腎,肺および脾内のAs量はmethionine,taurine,cysteineをそれぞれ添加した群とAs対照群との間にかなりの動揺はあったが統計的には影響は全く認められなかった.
  • 田村 俊吉, 水上 玲子, 田中 いずみ
    1974 年 70 巻 6 号 p. 843-847
    発行日: 1974年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    ヒ素を飼料に添加すると,粉乳を主成分とする飼料は雑穀を主成分とする飼料と異なり,臓器のヒ素貯留量は減少した.この作用は以前の実験でcaseinにあることがわかった.この研究は乳汁内の主要蛋白質であるlactoalbuminまた同じalbuminであるeggalbuminもこの作用があるかを調べた.実験動物はWistar系albinoratのclosedcolony(田村,1950)の100g内外の雄ラットを用いた.実験群には雑穀飼料にlactoalbumin,eggalbuminをそれぞれ20%加え,対照群は雑穀群とし,As2O3を650ppm添加して,35日間飼養した.体重増加はいずれの群の間にも統計的に有意差はなかった.尿中ヒ素量は対照群と実験群との間に差異がなかった.糞便ヒ素量は対照群と実験群との間には差異がなかった,脳,腎,脾のヒ素量は対照群と実験群との間に差異がなかった.肝では対照群に比べてlactoalbumin添加群では臓器当りのヒ素含有量は増加したが,臓器1g当りのヒ素量は対照群と同じであった.肺は実験群では臓器当りではヒ素含有量は対照群と同じであったが,臓器1g当りでは少なかった.しかし統計的有意差はなかった.
  • 永沼 真理子, 福島 紘司, 豊島 滋
    1974 年 70 巻 6 号 p. 849-861
    発行日: 1974年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    一次および二次抗腫瘍効果スクリーニングで選択された4種の抗腫瘍性アミノ酸関連化合物を14Cで標識し,正常雄,雌および担癌マウスに静脈内投与し,凍結全身オートラジオグラフィ法を用いて体内分布を検索した.*A-91は胆汁への著しい排泄と,高い血中残留性によって特色づけられ,その分布は,肝,肺,腎,膀胱,皮膚,子宮,卵巣,腫瘍組織において高濃度に見られた.*A-145は血中から速やかに各組織へ移行し,膵,唾液腺,消化管,腫瘍組織,ハーダー氏線,骨髄,膀胱に最も高濃度に分布する一方,高い組織残留性が観察された.雌マウスでは,子宮,卵巣にも比較的高濃度に分布した.*A-192は胆汁中に著しい活性が認められ,血中濃度も長時間保たれた.肝,肺,腎,子宮,卵巣,腫瘍組織に高濃度に見られた.*A-195は泌尿器系からの速やかな排泄が特徴的で,体内に残ったわずかのRI活性は,腸管,肝,骨質,その他の組織全般に分布した.標識アミノ酸関連化合物の基本骨格の*DL-tryptophan,*L-isoleucine,*-valineはほとんど同様の分布を示し,膵,唾液腺,消化管,腫瘍組織,骨髄など,増殖組織や分泌組織に高濃度に観察された,標準抗腫瘍剤として用いた*cyclophosphamideは尿および胆汁中に速やかに排泄され,体内に残留したわずかのRI活性は,中枢神経系を除くほとんどすべての臓器組織に分布していた.
  • 石井 靖男, 藤井 祐一
    1974 年 70 巻 6 号 p. 863-869
    発行日: 1974年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    Shay rat(法幽門結紮潰蕩)を用いて粘膜保護剤などの緩和な抗潰瘍薬の検定法について長検討した.1)結紮時間を18時間に固定して,絶食時間を24,48,72時間と変えると時間がくなるにつれて胃液量,酸度の低下,胃液内漏出蛋白量の増加が認められた。24時間絶食では潰瘍係数が低いが穿孔率は高かった.このことから薬効判定に用いる絶食時間は48時間とした.2)薬物はmethyl methionine sulfonium chloride(MMSCl),glutamine,chlorophyll,glucose,甘草成分FM100を用いいずれも絶食期間中1日2回経口投与と結紮時十二指腸内投与の合計5回の投与を行なった結果,MMSCI 1および2g/kg,chlorophyll 1g/kgで有意の潰瘍発生抑制が認められた.3)MMSClは1g/kg5回腹腔内投与でも有効であったが,結紮時1回投与ではMMSCl,chlorophyllとも無効であった.4)MMSCl,chlorophyllともに潰瘍抑制時に著明な胃液分泌抑制,ペプシン活性阻害を示さなかった.5)MMSCl 1g/kg5回投与と単独では潰瘍の抑制を示さない用量のatropine,制酸剤,APS,FM100等と併用するといずれも抑制の相乗作用が認められた.これらの結果からShay rat法は酸分泌抑制剤,抗コリン剤のみでなく条件の設定によっては緩和な抗潰瘍薬の検定にも有効と考える.
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