日本薬理学雑誌
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Morphineの依存と嗜好性 (I)
NaiveラットとMorphine経験ラットのMorphine嗜好性について
柳浦 才三田頭 栄治郎
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1975 年 71 巻 5 号 p. 395-403

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抄録

著者らは先の実験でnaiveラットにmorphine混入飼料を2つの容器に入れて0.5 mg/g vs. 1mg/gの割合で与えると, 2週間以上の強制適用期間以降からmorphineの高濃度 (1mg/g) 側の摂取率が漸次増加していく現象はmorphineのpositive reinforcement にもとずくと報告した.今回, 個別ケージにmorphine vs. quinineあるいはmorphine vs. quinine vs.普通飼料の条件下でmorphineの選択的摂取率の経日変化を検討した.実験動物はSD系ラット, 5~7週令, 1群6~9匹としてnaiveラットとmorphine経験ラットを用いた.Naiveラットにmorphine (0.5mg/g) vs. quinine (0.5mg/g) 条件下24時間自由摂取させると, morphineの自発的摂取率 (M-SIR) は初日17% (10mg/kg/day) から漸次増加し, 3週間後には77% (30mg/kg/day) に達した.またmorphine (1mg/g) vs. quinine (1mg/g) の場合, 低用量群同様に漸次M-SIRは増加するが, 2週間目までのMSIRの増加が急速であった.したがって1日のmorphine摂取量が10mg/kg/dayから50~60mg/kg/dayの用量範囲内においてはmorphineのpositive reinforcerとしての効果がdose-dependentにみられた.注射によるmorphine経験ラットおよびmorphine混入1司料による依存あるいは経験ラットの場合, naiveラット同様にM-SIRは漸次増加するが, 特異的に初期4日間著明に高いM-SIRを示した.また強制適用後休薬しないでただちに選択摂取させると, 3~4日目にnaiveラットあるいは経験ラットが3週間目に達した70~80%の摂取率を示し, 以後そのレベルを維持した.さらにその時点での1日のmorphine摂取量は強制適用期間中の平均摂取量とほぼ等しかったことからラットはmorphineの実質的必要量を自発的に維持することを示唆する.本実験からmorphineの精神依存能の一面をラットでのmorphineの選択的摂取行動から推察し, morphine嗜好は休薬後もsecondary abstinence syndromeとして長く持続することを認めた.

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