日本薬理学雑誌
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71 巻, 5 号
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  • 柳浦 才三, 坂本 満夫
    1975 年 71 巻 5 号 p. 387-393
    発行日: 1975/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    市販ウサギ用固形餌料中に含まれているalfalfa mealの1%コレステロール負荷時に認められるウサギの高脂血症に対する影響を, 血清総コレステロール (TC), トリグリセライド (TG), 遊離脂肪酸 (NEFA) の変動から検討した.alfalfa meal含有コレステロール負荷ウサギ (R-1) とalfalfa meal除去コレステロール負荷ウサギ (R-2) の両群とも血清脂質は上昇を示した.R-1のTCはR-2のそれよりも低い値を全実驗期間中示した.TG, NEFAに対するalfalfa mealの影響は, TCに認められた上昇抑制効果より, さらに強い効果が認められた.これらの事より, alfalfa mealはコレステロール負荷ウサギにみられる血清脂質上昇に影響をおよぼしており, ウサギを用いて, 長期の脂質負荷実験を行なう場合には, alfalfa mealの血清脂質に対する効果という点を考慮すべきである.
  • NaiveラットとMorphine経験ラットのMorphine嗜好性について
    柳浦 才三, 田頭 栄治郎
    1975 年 71 巻 5 号 p. 395-403
    発行日: 1975/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    著者らは先の実験でnaiveラットにmorphine混入飼料を2つの容器に入れて0.5 mg/g vs. 1mg/gの割合で与えると, 2週間以上の強制適用期間以降からmorphineの高濃度 (1mg/g) 側の摂取率が漸次増加していく現象はmorphineのpositive reinforcement にもとずくと報告した.今回, 個別ケージにmorphine vs. quinineあるいはmorphine vs. quinine vs.普通飼料の条件下でmorphineの選択的摂取率の経日変化を検討した.実験動物はSD系ラット, 5~7週令, 1群6~9匹としてnaiveラットとmorphine経験ラットを用いた.Naiveラットにmorphine (0.5mg/g) vs. quinine (0.5mg/g) 条件下24時間自由摂取させると, morphineの自発的摂取率 (M-SIR) は初日17% (10mg/kg/day) から漸次増加し, 3週間後には77% (30mg/kg/day) に達した.またmorphine (1mg/g) vs. quinine (1mg/g) の場合, 低用量群同様に漸次M-SIRは増加するが, 2週間目までのMSIRの増加が急速であった.したがって1日のmorphine摂取量が10mg/kg/dayから50~60mg/kg/dayの用量範囲内においてはmorphineのpositive reinforcerとしての効果がdose-dependentにみられた.注射によるmorphine経験ラットおよびmorphine混入1司料による依存あるいは経験ラットの場合, naiveラット同様にM-SIRは漸次増加するが, 特異的に初期4日間著明に高いM-SIRを示した.また強制適用後休薬しないでただちに選択摂取させると, 3~4日目にnaiveラットあるいは経験ラットが3週間目に達した70~80%の摂取率を示し, 以後そのレベルを維持した.さらにその時点での1日のmorphine摂取量は強制適用期間中の平均摂取量とほぼ等しかったことからラットはmorphineの実質的必要量を自発的に維持することを示唆する.本実験からmorphineの精神依存能の一面をラットでのmorphineの選択的摂取行動から推察し, morphine嗜好は休薬後もsecondary abstinence syndromeとして長く持続することを認めた.
  • 堂崎 猛, 今井 清, 水上 聡
    1975 年 71 巻 5 号 p. 405-414
    発行日: 1975/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    ラットにおけるadrenalineの胃潰瘍形成に関する作用について検討し, 以下の結果を得た.1) Adrenalineの大量投与により胃潰瘍が形成された.2) Adrenalineの潰瘍形成はα-blockerで抑制されたが, β-blocker (propranolol) で1よ抑制されなかった。また, vagotomy, atropineの前処置によっても抑制されなかった。3) Adrenaline 1.5mg/kgの7日間連続投与では潰瘍形成は認められなかった.4) Adrenalineの少量 (0.1mg/kg) 前処置によって, adrenaline大量投与 (1.5mg/kg) による潰瘍形成は抑制された.5) Adrenaline潰瘍はreserpineの20時間前処置で抑制された.また, iproniazidおよびpyrogallolの5時間前処置によっても抑制が見られた.以上の成績により, adrenalineには潰瘍形成作用とその抑制作用の二面性があり, 前者はadrenalineのα-作用によるものであり, 後者はそのtachyphylaxisによるものと考えられる.
  • 小柴 英男
    1975 年 71 巻 5 号 p. 415-426
    発行日: 1975/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    同一容器内に懸垂したラット摘出十二指腸, 大腸を用いMagnus氏法により, 諸種薬物の作用を比較検討し, 次の成績を得た.1) 大腸はadrenaline及びisoproterenolの少量によって最大弛緩状態となったが, 十二指腸はこれら薬物の添加量の増加に伴いトーヌスは漸次下降し最大弛緩状態になるのには可成りの量を必要とした.なお, これらの薬物は大腸においてのみacetylcholine, serotoninの作用を強く抑制した.即ち, 大腸においては十二指腸に比してadrenaline, isoproterenolの作用が強く現われた.また, propranololは十二指腸, 大腸ともにisoproterenolの作用を抑制したが, dibenamineは大腸においてはadrenalineの作用を抑制し, 十二指腸においては却ってこれを増強した.2) atropineによるトーヌス下降は十二指腸ではみられることがあるが, 大腸ではこの現象はみられなかった.atropine処置後のacetylcholine, serotoninの作用には, 十二指腸, 大腸間に差はみられなかった.3) 2-bromo-lysergic acid diethylamideは大腸においてはserotonin, acetylcholineの作用をほとんど抑制しないが, 十二指腸においては共に70%以上の著しい抑制作用を示した.また, methysergideも十二指腸においては, 大腸におけるよりもacetylcholine, serotoninの抑制傾向が大であった.4) 十二指腸, 大腸を正常栄養液から脱Ca栄養液に交換すると, 大腸ではトーヌス上昇, 十二指腸ではトーヌス下降がおこる.この脱Ca栄養液中において, acetylcholine, prostaglandin E1は大腸では収縮をおこしたが, 十二指腸ではその作用がみられなかった.即ち栄養液中の脱Ca状態において大腸は十二指腸より反応性を維持し得ると言える.5) 大腸ではprostaglandin E1前処置によりacetylcholine, serotoninの作用が増強されたが, 十二指腸ではこれが認められなかった.
  • 坂川 利家, 渕本 英明, 児玉 純一
    1975 年 71 巻 5 号 p. 427-436
    発行日: 1975/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    われわれは先の報告で, ラットにtheophylline (Th) の慢性投与をおこない, 情動攻撃の出現することを明らかにした.そこで, 今回の実験では嗅球摘除 (OB) ラットと隔離飼育 (Is) ラットを用い, Th処理ラットにみられる攻撃行動をそれらと対比し, その特性を明確にすることを目的とした.攻撃行動の測定にはrefiexive fighting test, killing test, aggressiveness rating testなどを用い, また情動性を調べる目的でopen field testを併用した.その結果次のことが明らかになった.Reflexive fighting testにおいて, Th処理ラットだけが電気刺激期はもちろん, 適応期や音刺激期にも闘争姿勢をとり, 他処理ラットではそれが認められなかった.また, Th処理ラットでは闘争が他処理ラットに比べて, より迅速にしかも頻回に起こった.マウスの喰い殺しは3分間観察では, Th群が62.5%と他群より多く, OB群は25%, Is群12.5%, 対照群0%であった.しかし, 一晩通しの観察ではOB群87.5%, Is群62.5%と増加したのに対し, Th群では62.5%のままにとどまった.Th処理ラットはマウスに対するのと同様, ラットの仔や窒息死マウスに対しても同程度に喰い殺しをおこなった.Open field testでは, 対照群と比べてrearingとambulationがOB群で増え, Is群では減ったが, Th群では変化しなかった.攻撃行動と逆相関関係にある脱糞はTh群だけが減少し, 他群では変らなかった.処理前のambulationとrearingの相関は, r=0.535 (p<0.01) で正の相関を示した.
  • 田中 礼子, 中井 健五
    1975 年 71 巻 5 号 p. 437-444
    発行日: 1975/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    Carbon tetrachloride (CCl4) による肝障害時には, 3, 4-benzpyreneの胆汁内排泄と胆汁流量が正常時のそれに比べてどのように変化するかをラットについて検討し, 次の結果を得た.1) 14C-3, 4-benzpyrene (14C-BP) を静注した場合, 1時間内に胆汁に排泄された14Cは, 無処置ラットで投与量の35.5%, CCl4投与 (0.5ml/kg, p.o.) 24時間後のラットでは9.7%であった.2) 胆汁に排泄された14C-BP代謝物のパターンは, 無処置ラットでも, CCl4前処置ラットでも変らず, 未変化の14C-BPは検出されなかった.3) Bile fiowはCCl4投与24時間後において最も減少したが, 14C-BP代謝物の排泄の減少は, bile fiowの減少よりむしろ肝臓における14C-BPの代謝障害によるものと考えられた.4) 14C-BPの胆汁内排泄に対するCCl4の影響は, 絶食またはSKF-525 Aの前処置 (CCl4投与50分前, 50mg/kg, i.p.) によって減少した.
  • 坂登 光夫
    1975 年 71 巻 5 号 p. 445-455
    発行日: 1975/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    モルモット盲腸のperivascular nerve-taenia標本を用い, ここに存在する二種類の抑制神経, すなわちアドレナリン作働性および非アドレナリン作働性抑制神経のそれぞれの衝撃伝達に対するprostaglandin (PG) E1, PGE2, PGFの作用, およびこれらの生合成を阻害するindomethacinのこれにおよぼす影響を検討した.アドレナリン作働性神経の刺激により生ずるtaeniaの弛緩は, PGE1およびPGE2の適用により著明に減少した.PGE1およびPGE2はtaeniaに対して収縮作用を示したが, 次の二つの観察結果からこの収縮作用はアドレナリン作働性神経刺激効果に対するPGE1およびPGE2の抑制作用には関与しないと考えられる.1) Histamineによってtaeniaを収縮の状態においても, アドレナリン作働性神経刺激によるtaeniaの弛緩はほとんど減弱しなかった.2) Polyphloretin phosphateによってtaeniaのPGEの収縮作用が拮抗されたときでも, PGE1およびPGE2はアドレナリン作働性神経刺激効果を抑制した.PGFにはPGE1およびPGE2のもつアドレナリン作働性神経刺激効果に対する抑制作用が認められなかった.Indomethacinはアドレナリン作働性神経刺激によって生ずるtaeniaの弛緩を著明に増大した.一方, 非アドレナリン作働性抑制神経刺激により生ずるtaeniaの弛緩は, PGE1, PGE2, PGFおよびindomethacinのいずれによっても影響を受けなかった.以上の実験成績から, モルモットtaeniaにおいてアドレナリン作働性神経の衝撃伝達は, PGEの関与する抑制機構により調節されていることが想定される.しかし, 非アドレナリン作働性抑制神経の衝撃伝達についてはPGEはその調節機構に関与しないものと考えられる.
  • 犬血清中のBenzylamine oxidaseの特性について
    福島 直
    1975 年 71 巻 5 号 p. 457-462
    発行日: 1975/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    ひと血清中のMAO活性の測定法として開発したMcEwenの方法を改良し, 犬血清中のMAOの性格を検討した.酵素液として犬血清を硫安で分画し, その33~66%飽和区分での沈殿を水に溶かし16時間透析したものを使用した.MAO活性の測定には, 1.5mlの反応液中に上記血清酵素液0.6ml, 基質として0.01M benzylamine0.15mlおよび緩衝液として0.2M phosphate buffer 0.75mlを含め, これを38℃, 3時間incubationした後60%過塩素酸で反応を停止させ, 生じたbenzaldehydeをcyclohexaneで抽出しその吸光度を242mμで測定した.犬血清を硫安で分画し, 各区分のタンパク量とMAO活性を比較検討したところ, 犬血清MAOの分画と, タンパクの多く集まる分画とは一致しなかった.すなわちタンパク量は, 25~33%と67~80%の2つの分画に極大があり, MAO活性は40~50%の分画に最大活性が認められた.犬血清MAO活性は酵素量に比例して増加した.種々のpHのphosphate btlfferを使用した場合の犬血清MAOの最大活性はpH 7.0付近に認められた.これはひと血清MAOの至適pHと一致したが, 兎血清MAOの至適pH 8.0とは相違した.また, Tris-HCl bufferは犬血清MAO活性を強く阻害した.Benzylamineを基質とした場合のpS極大は0.01M付近に認められ, その活性曲線はベル型を示した.犬血清MAOはbenzylamineを基質としたときの活性を100とした場合, butylamine, β-phenylethylamineまたはtyramineは約30%の活性を, tryptamineまたはserotoninは3~10%の活性を示した.犬血清MAOに対するcatronのpI50は3×10-6Mで, harmalineでは3×10-5Mであったが, pargylineは1×10-4Mの濃度でも全く阻害を示さなかった.すなわち, 犬血清中にはtyrarnineを主として酸化するMAOとbenzylamineを酸化するMAOとが存在し, 後者はpargylineが全く影響をおよぼさない酵素である.この酵素はMAOのisozymeの一つであるbenzylamineoxidaseとして他とは区別すべき酵素であることを示唆した.
  • Guanethidineとの作用様式の比較
    小澤 光, 弘中 豊
    1975 年 71 巻 5 号 p. 463-479
    発行日: 1975/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    dl-Mandelamidine (MA) の持続性降圧作用の機序についてguanethidineと比較検討した.麻酔した動物の血圧に対してMA (10~30mg/kg, i.v.) により一過性の血圧下降とそれに続く緩徐で持続的な降圧作用の二相性の変化が認められた.無麻酔ネコ瞬膜においてMA (100mg/kg, s. c.) によりguanethidine (10mg/kg, s. c.) と同程度の弛緩が認められ, 麻酔ネコの上頸部交感神経節前線維に種々の頻度の電気刺激を与えて生ずる瞬膜の収縮にご対してMA (5~10mg/kg, i. v.) はguanethidineの約10倍量の用量でほぼ同程度の抑制を示した.MAの神経遮断作用はラットinferior eyelidにおける上頸部交感神経節前線維の電気刺激, イヌ血圧における総頸動の閉塞, 摘出ウサギ空腸・腸間膜神経標本, 摘出モルモット輸精管の経壁刺激などの実験においても同様に認められた.さらに脊髄ネコの血圧に対してもMA (30mg/kg, i. v.) は持続性降圧作用を示したことはMAの降圧機序がguanethidineと同様に, 主として末梢における交感神経遮断によるものと思われ, ネコ瞬膜においてMAの作用がmethamphetamineにより拮抗されたことは, その作用様式もguanethidineと類似することを示唆する.しかしMAの神経遮断作用の型がguanethidineとは異なるのではないかと推測される結果も得た.Guanethidineの有するcatecholamine遊離作用に関してもMAは脊髄ネコにおいても昇圧作用が認められず, 他の実験結果からも否定したくなるが, ネコ瞬膜においては収縮が認められ, この収縮はreserpine処理, phentolamineで抑制されることから, MAは一部catecholamineを遊離する可能性も考えられる.さらにcatechOlamineuptake阻害作用についても, ラット, イヌの血圧, ネコの血圧.瞬膜, ウサギ肺動脈標本などにおけるNE, E, Tyrに対するMAの作用から, MAのcatecholamine uptake阻害作用はguanethidineに比較して極めて弱いものと思われる.MAの副交感神経系に対する影響は認められなかった.
  • クマ笹水可溶分画 (Folin) の急性毒性ならびに抗炎症, 抗潰瘍作用
    柴田 丸, 山竹 美和, 坂本 満夫, 金森 政人, 高木 敬次郎, 岡部 進
    1975 年 71 巻 5 号 p. 481-490
    発行日: 1975/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    クマ笹Sasa albomarginata MAKINO etSHIBATAの乾燥葉の熱水可溶分画 (Folin) の急性毒性ならびに抗炎症, 抗潰瘍作用を検討し次の結果を得た.Folinのマウス経口投与によるLD50 (72時間) は109/kg以上であり, また0.2%Folin溶液の連続25日間自由摂取実験より, 症状, 体重変化ともに著変なく本分画の毒性はきわめて弱かった.圧刺激法によりFolin投与後2時間して有意の疼痛閾値の上昇がみられたが, 酢酸法では軽度の抑制がみられたにすぎなかった.また著明な正常体温下降, dextran足蹠浮腫抑制作用, carrageenin足蹠浮腫抑制作用を示し, とくにdextran足蹠浮腫実験において, Folinは局所適用によっても明らかな抑制を示した.しかし綿球法においてはなんらの乾燥肉芽重量の減少もみられなかった.Folinの十二指腸内投与で著明な胃液分泌量の抑制とpHの上昇がみられるとともに, Ulcer indexの減少傾向がみとめられた.幽門結紮-aspirin潰瘍および幽門結紮-caffeine潰瘍に対し, Folinの経口投与はそれらのUlcer indexの減少傾向を示した.FolinはBaSO4の腸管内移動に対しては著しい影響を与えなかった.
  • 栗原 久, 奥泉 清子, 代田 美智子, 田所 作太郎
    1975 年 71 巻 5 号 p. 491-503
    発行日: 1975/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    定率食餌強化 (FR 30) およびFR 30を背景とする条件抑制 (FR 30-CER), 低頻度差別水強化 (DRL 20sec), シドマン型および弁別条件回避, 合計5種の条件づけスケジュールの下で十分訓練を重ねた結果確立した成熱雄ラットのオペラント行動に対するpenfluridol単独投与の影響について検討し, 本薬物の行動薬理学的特性を追及した.Penfluridol 2-8mg/kgの経口投与により, すべてのオペラント行動は一方的に抑制され, たとえ低頻度の反応 (DRL) であっても促進されることはなかった.また正強化行動 (FRとDRL) に対するより, 負強化行動 (両条件回避) に対する効果の方が著明で, かつ用量-効果相関が明瞭であった.また条件抑制 (FR 30-CER) に対する軽減効果は全く認められなかった.このような性質はpenfluridolがchlorpromazineやhaloperidolに類似しており, neuroleptic drugとしての特徴を有することを暗示しており, その中枢作用はbarbituratesやbenzodiazepine誘導体とは異なるものと考えられた.弁別条件回避反応の抑制からみるとpenfluridol経口投与時の最大効果は投与後16時間で発現し, その後漸減しながら2-3日間持続した.また諸オペラント行動に対する効果の強さは, haloperidol経口投与時の1/8-1/10以下と推測された.
  • マウス1, 2, 3匹の情動探索行動における向精神薬作用の特異性
    秦 多恵子, 尾陰 多津子, 喜多 富太郎, 米田 良三
    1975 年 71 巻 5 号 p. 505-515
    発行日: 1975/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    われわれはすでに2匹のマウスの闘争反応におよぼす第三者マウスの影響について, またEl-マウスの痙攣発症における2匹間および3匹間の相互関係について報告した.しかしこれらは, いずれも刺激により誘発された反応における相互関係であった.そこで今回は動物の自然行動に比較的近い情動行動が見られると考えられるところの東京教育大式小動物探索行動記録装置を用いて, 15分間におけるdd系マウス1, 2, 3匹の相互関係を求め, これにおよぼす向精神薬の作用について検討した.まず向精神薬を与えた際の1匹の行動量と2匹のそれを比較したところ, 2匹の行動量は薬物の作用傾向と必ずしも一致せず, しかも薬物による値の変動率は僅微であった.しかし2匹の行動量に比し3匹のそれは薬物投与によりかなり大きく増加または減少した.そこで2匹の行動量から1匹のそれを差し引いた値すなわち第2匹目のマウスによってもたらされた行動の増加量に対する第3匹目によるそれの比率 (R) が向精神薬の投与によってどのように変動するかを調べた.この際, 薬物投与量は1匹の行動量に著変を認めない量, すなわちsedationやataxiaを認めない量を原則とした.1) Caffeine 1.0, 2.0, 5.0, pentetrazol 5.0, ephedrine 5.0またはDL-amphetamine 0.5 各mg/kg i.P. 投与の場合RはcontrolのRに比べ著しく小さくなった.Dimorpholamineでは大差がなかった.2) Chlordiazepoxide 2.0, 3.0, diazepam 0.5, 5.0, imipramine 2.5, chlorpromazine 0.2, mescaline 0.5 および2.0各mg/kgではRはcontrolより著しく大きくなった.またGABOB 15mg/kgでは幾分大きく, hexobarbital-Na 10, 15mg/kg ではcon-trolと大差なく, diphenhydramineでは小となった.以上の実験成績より2匹の行動量に対し3匹の行動量が, 中枢興奮性の向精神薬により大きく減少し, 抑制性の向精神薬により大きく増加した.このことから中枢興奮剤は3者関係における抑制機能すなわち精神的な相互牽制作用を増強し, 中枢抑制剤は脱抑制作用を示すのではないかと考えられる.またこの行動が3者関係を反映した情動行動の一つのモデルになる可能性がある.
  • 小澤 光, 陳 清松, 植松 利男, 菅原 和信
    1975 年 71 巻 5 号 p. 517-526
    発行日: 1975/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    Isoxsuprineと構造式がよく類似している血管拡張薬ifenprodilの循環系およびいくつかの薬理作用について検討し, 以下の成績を得た.1) イヌ血圧, 椎骨動脈および大腿動脈の定流量潅流圧の測定において, ifenprodil (0.3~1 mg/kg, i.v.) は一過性の潅流圧低下の後に緩和な持続的低下作用を示し, 両側頸動脈閉塞norepinephrineおよびepinephrineによる昇圧作用を抑制した.しかしifenprodilの一過性および持続的血圧下降作用は脊髄ラットおよびネコにおいては認められなかった.Ifenprodil動注による椎骨動脈潅流圧の低下作用はisoxuprineの1/2であった.またifenprodilにより心拍数の増加および脈圧の増大を示すいくつかの例が認められた.2) ネコ血圧において, ifenprodil 0.5 mg/kg, i.v.) によりイヌと同様に, 一過性の降圧に続く持続的降圧作用が見られた.またnorepinephrine, epinephrine, tyramineによる昇圧作用と瞬膜の収縮作用および頸部交感神経節前線維への電気刺激による瞬膜の収縮はifenprodilにより抑制された.3) 摘出モルモット心房標房において, ifenprodilの高濃度 (10-5 g/ml) は心収縮力をわずかに抑制し, isoproterenolによる収縮力および心拍数の増加作用を著明に抑制した.4) 摘出ウサギ大動脈切片標本において, norepinephrineによる大動脈切片の収縮はifenprodilおよびphentolamineにより抑制された.5) 摘出モルモット下腹神経-輸精管標本においてifenprodilは下腹神経節前線維の電気刺激およびnoredinephrineによる輸精管の収縮を抑制した.以上の結果より, ifenprodilは定流量椎骨動脈潅流圧および定流量大腿動脈潅流圧に対し2つの要因からなる低下作用を有すること, そのうちの一つは初期に見られる持続の短い作用であり, その作用機序は不明であるが, 神経性の作用と考えられること, また遅れてあらわれる持続性のもう一つの作用は交感神経α遮断による効果が考えられることなどが示唆された.さらにin vivoにおいて, ifenProdilは脈圧の増大と心拍数の増加など心臓に対する直接効果と考えられる弱いβ-sympathomimetic作用, あるいは類似の効果を示す場合も見られ, 必ずしもisoxsuprineと相異するとは言えない.
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