1975 年 71 巻 5 号 p. 427-436
われわれは先の報告で, ラットにtheophylline (Th) の慢性投与をおこない, 情動攻撃の出現することを明らかにした.そこで, 今回の実験では嗅球摘除 (OB) ラットと隔離飼育 (Is) ラットを用い, Th処理ラットにみられる攻撃行動をそれらと対比し, その特性を明確にすることを目的とした.攻撃行動の測定にはrefiexive fighting test, killing test, aggressiveness rating testなどを用い, また情動性を調べる目的でopen field testを併用した.その結果次のことが明らかになった.Reflexive fighting testにおいて, Th処理ラットだけが電気刺激期はもちろん, 適応期や音刺激期にも闘争姿勢をとり, 他処理ラットではそれが認められなかった.また, Th処理ラットでは闘争が他処理ラットに比べて, より迅速にしかも頻回に起こった.マウスの喰い殺しは3分間観察では, Th群が62.5%と他群より多く, OB群は25%, Is群12.5%, 対照群0%であった.しかし, 一晩通しの観察ではOB群87.5%, Is群62.5%と増加したのに対し, Th群では62.5%のままにとどまった.Th処理ラットはマウスに対するのと同様, ラットの仔や窒息死マウスに対しても同程度に喰い殺しをおこなった.Open field testでは, 対照群と比べてrearingとambulationがOB群で増え, Is群では減ったが, Th群では変化しなかった.攻撃行動と逆相関関係にある脱糞はTh群だけが減少し, 他群では変らなかった.処理前のambulationとrearingの相関は, r=0.535 (p<0.01) で正の相関を示した.