日本薬理学雑誌
Online ISSN : 1347-8397
Print ISSN : 0015-5691
ISSN-L : 0015-5691
Lopramineの脳波学的研究
渡辺 繁紀川崎 博已植木 昭和
著者情報
ジャーナル フリー

1976 年 72 巻 1-2 号 p. 153-168

詳細
抄録

慢性電極植込みウサギを用いて, lopramineの脳波作用をimipramine, amitriptylineと比較検討した. Lopramineは自発脳波に対して,皮質および扁桃核では高電圧徐波,海馬ではθ波の脱同期化をひきおこし,いわゆるdrowsy patternを惹起した. Imipramine, amitriptylineも同様に自発脳波をdrowsy pattern化するが,その作用はlopramineよりもはるかに強い.またimipramineやamitriptylineでは動物に行動上鎮静を示し,軽度の筋弛緩,歩行失調をおこすのに対して, lopramineではごく軽度の鎮静を示すのみであった. Lopramineは音刺激および中脳網様体,視床内側中心核,後部視床下部の電気刺激による脳波覚醒反応に対してほとんど作用を示さないが, imipramine, amitriptylineはこれらの反応を著明に抑制し,覚醒閾値を上昇させた. Physostigmineによって誘発される脳波覚醒反応はlopramineによってほとんど影響されなかったが, imipramine, amitriptylineはこの覚醒反応を抑制し,持続時間は短縮した.視床内側中心核刺激による漸増反応はlopramineによって全く変化せず, imipramine, amitriptylineによっては増強される傾向を示した.海馬,扁桃核の電気刺激による大脳辺縁系後発射はlopramiaeによってほとんど影響を受けなかったが, imipramine, amitriptylineでは投与初期に著明に抑制,その後増強という2相性の作用が認められた.以上, lopramineは自発脳波のdrowsy pattern化をおこす点で, imipramine, amitriptylineと類似しているが,その作用ははるかに弱く,脳幹網様体賦活系など覚醒系に対する抑制作用がほとんど認められず,また大脳辺縁系後発射に対する作用もほとんどないなど,その脳波作用はimipramineやamitriptylineとかなり異った新しい型の抗うつ剤である.

著者関連情報
© 社団法人 日本薬理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top