抄録
モルモット回腸条片を用い, K, acetylcholine (ACh), histamine (His), Baの各収縮機序およびisoproterenol (Iso), papaverine (Pap) の各鎮痙機序を, Caとの関連において,検討した.上記4収縮薬による収縮の形は, phasic contraction (PC) とこれに続くtonic contractlon (TC) よりなる. K, ACh, HisのPCはCa遊離とpassiveのCa influxによって起り, BaのPCはCa遊離によって起る.一方, K, ACh, HisのTCはactiveのCa influxによって維持され, BaのTCはCa遊離とactiveのCa influxによって維持される.筋細胞膜のCa influxには, Caが, (1)最も離れやすいstore, (2)次いで離れやすいstore, (3)離れにくいstoreの区分があり, Kは(1)から, AChとHisは(1)と(2)から, Baは(1), (2), (3)から,それぞれ,収縮に利用されるCaを遊離させる. IsoおよびPapの弛緩作用におよぼす高K脱分極の影響ならびにK, ACh, Baおよび外来Caによる収縮の形に対するIsoおよびPapの作用を総合して,次の推定を得た. Isoの鎮痙機序は膜の抑制(Ca遊離およびCa influxの阻害)によって発現し, Papの鎮痙機序は,濃度上昇に伴い,膜の抑制(Ca遊離およびCa influxの阻害)に次いで,筋収縮系の反応を抑制するのによる.濃度作用曲線を用いて, IsoおよびPapの収縮抑制型式を解析し,この結果 (Table 2) について考察した. IsoおよびPapがK, ACh, BaのPCおよびTCの対数濃度作用曲線を右に平行移動させるのは, PCおよびTCの発現に際して起るCa動員に対する機能的拮抗によることが示唆された.