抄録
三環系抗うつ薬であるlopramine(LOP)の一般薬理作用をimipramine(IMP)のそれと比較検討し,次の成績を得た.マウスの行動および外観的生理状態に対するLOPの作用はIMPと比べて軽微であり,ネコ皮質脳波の高振巾徐波化および海馬律動波の消失化作用も弱い.LOPはラットの条件回避反応,炎症性(ラット)および圧刺激性(マウス)落痛,ウサギ体温,電撃あるいは薬物によるマウスの痙攣に対して,ほとんど作用なく,マウスの自発運動を軽度に抑制する.一方,IMPでは鎮痛,体温上昇傾向(高用量)および電撃による強直性伸展痙攣の抑制などの諸作用がみられ,自発運動の抑制も強い.Oxotremorineによるマウスのtremorおよび体温下降に対して,LOPは後者のみを抑制するが,IMPは両老に対して拮抗する.麻酔イヌにおいて,LOPは呼吸数の増加,血圧下降,左心室内圧および左心室内圧上昇速度(dp/dt max.syst.)の低下(高用量)などの作用を示し,IMPでは降圧作用が強く,dp/dtの低下(高用量)が著明である.LOPは低用量:で麻酔イヌにおけるnorepinephrineの昇圧作用およびacetylcholine(ACh)の降圧作用を増強し,tyramine(Tyr)の昇圧作用を著明に抑制するが,高用量ではAChの作用を減弱する.IMPの作用もこれと同様であるが,TyrおよびAChに対する拮抗はLOPよりも強い.LOPは麻酔イヌの胃運動に対してほとんど無作用であるが,空腸運動を抑制する.IMPは胃運動を軽度に尤進し,空腸に対しては一過性の強い充進ののち抑制を示す.モルモット摘出回腸におけるLOPの抗spasmogen作用(非特異的)はIMPよりも弱く,ラット摘出子宮の自動運動およびcatecholamineによるモルモッと摘出輸精管の収縮に対しては無作用である,一方,IMPは子宮運動を抑制し,高濃度では抗catecholamine作用を示す.ラットの排尿量および尿中電解質排泄量はLOPによって減少(傾向)し,IMPによって増加(傾向)がみられる.