日本薬理学雑誌
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72 巻, 4 号
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  • 桜田 忍, 只野 武, 木皿 憲佐
    1976 年 72 巻 4 号 p. 371-379
    発行日: 1976年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    Tyramine脳内投与によるマウス脳内monoamineの変動について検討を加え次の成績が得られた.1)p-cellulosecolumnを用いてtyramine(Ty),octopamine,dopamine(DA),noradrenaline(NA)および5HTの分離を行なったところ,columnの長さ32cm(1×32cm;26ml)の場合に分離が可能であった,2)Tyi.c.投与後,脳内Tyのnative fluorescenceを検討した結果,投与30分後にpeakが認められ,120分後には蛍光はほとんど認められなかった.3)Ty160μgi.c.投与30分後脳内DA上昇のpeakが認められ,60分後にもsaline投与群との間の有意の上昇は認められたが,投与120分後にはsaline群との問の有意な差は認められなかった.4)一方,Ty160μgi.c.投与30~60分後脳内NA.5HTはsaline群に比較して有意に減少することが認められ,投与120分後には有意な差が認められなかった.5)Ty投与30分後,脳内DA濃度を検討したところ,Tyの投与用量に平行したDAの上昇が認められた.反対にNA,5-HTは投与用量に比例した減少が認められた.6)Isocarboxazide前処理下でTy投与30分後の脳内NA,DAおよび5-Hr濃度を測定したところ,Tyの投与用量(40μg,80μg,160μg)に比例してNA濃度は減少し,DAの上昇が認められた.一方,脳内5-HT濃度は上昇傾向が認められ,Tyl60μg脳内投与ではisocarboxazide前処理後saline投与群と比較して有意なまでに5HTの上昇が認められた.
  • 松田 弘幸, 加藤 珠子, 山本 幸生, 見市 博明, 小川 俊太郎
    1976 年 72 巻 4 号 p. 381-395
    発行日: 1976年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    2-tolyl 1-phenyl-3-(2-methylpiperidino)propyl ether methyl bromidc(R111)および2-chlorophenyl 1-phenyl-3-(2-methyl-piperidino)propyl ether methyl iodide(R97)の一般薬理作用について検討し以下の結果を得た.1)酢酸writhing抑制作用に対し腹腔内および皮下投与で強力な効果を示したが,熱刺激に対する鎮痛作用は認められなかった.また自発運動量,抗けいれん作用,正常体温に対しては影響を与えなかった.しかしR111の角膜表面麻酔作用はほぼprocaineに匹敵するものであった.2)摘出モルモット回腸標本においてacetylcholineによる収縮に対しatropineの30~50%の効力を示し,また特にBaCl2による収縮に対してはpapaverineの20~30倍の効力を示した.Nicotine,serotoninによる収縮に対してもatropineとほぼ同程度の効力であったが,histamine,bradykininによる収縮に対しては殆んど影響はみられなかった.また摘出モルモット輸精管,摘出ラヅト子宮においてもacetyl-choline収縮に対する拮抗作用が認められた.3)マウスにおける散瞳作用は殆んどみられなかった.4)Pilocarpineによる唾液分泌に対しatropincに匹敵する抑制作用を示した.5)マウスおよびラットの小腸輸送運動を抑制した.6)幽門結紮4時間後におけるラヅトの胃液・胃酸分泌に対し抑制作用を有したがその作用はatropineに比して弱いものであった.7)Shayratによる急性胃潰瘍に対しては著明な抑制作用が認められたが,酢酸Yom.よる慢性胃潰瘍に対する作用は弱かった.8)ウサギ血圧において静脈内投与により投与時のわずかな上昇に続く一過性の降圧作用がみられたが,この低下は5分以内には回復した.血流量においてはR111の静脈内投与により一過性の減少を示したが,3分以内には回復した.呼吸運動,心拍数,心電図に対しては何ら特異な影響を与えなかった.9)ラットにおけるcarrageenin足浮腫は腹腔内投与により抑制されたが,経口投与ではその作用は殆んど認められなかった.以上の結果よりR111およびR97はatropine類似の作用を有する一方,摘出腸管における抗BaCl2作用,散瞳作用,胃液・胃酸分泌抑制作用,局所麻酔作用等においてatropineとは著しく異なった作用を示した.
  • 古賀 利枝
    1976 年 72 巻 4 号 p. 397-402
    発行日: 1976年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    ラットの脳を大脳皮質,間脳,中脳以下の脳幹部の3部分に分け,serotonin(5-HT)およびその代謝物5-hydroxyindoleacetic acid(5-HIAA)を定量した.1)meclofenoxate(MF)の応用によって,脳内各部の5-HIAAは用量比例的に増加し,ことに,脳幹部において著明であった.一方脳内5-HTは,脳幹部ではMFの量とともに増加したが,大脳皮質では不変,間脳では減少の傾向を示した.2)モノアミン酸化酵素抑制薬pargyline応用後,時間とともに5-HTは増加し5-HIAAは減少するが,それに対してMFはprobenecidと全く同じ影響を示し,5-HIAAの減少を抑制し,5-HTの増加を助長した.従ってMFはprobenecidと同様に主として5-HIAAの脳外輸送を抑制するものと考}xられる.3)MFの加水分解産物p-chlorophenoxyacetic acidも,MFと同程度の脳幹部5-HTおよび5-HIAA増加作用を示した.
  • 丸山 裕, 角部 行信, 今村 博
    1976 年 72 巻 4 号 p. 403-416
    発行日: 1976年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    Y-8004はマウスにおいて100mg/kgの高用量で,弱い闘争性抑制作用と電撃痙:れん抑制作用を示したほかは中枢抑制作用を示さなかった.体性機能に対してもマウスを用いた回転棒法で弱い障害作用を示したが,回転籠法およびラット横隔膜神経筋標本では筋弛緩作用は認められなかった.麻酔犬において,Y-8004は30mg/kg i・v.で一過性の血圧下降に続く軽度の血圧上昇,心拍数の軽度増加および弱い冠状血管拡張作用を示したが,自律神経系に何ら作用を示さなかった.心電図に対しても心拍数の増加に伴なうR-R間隔の変動を示したほかは何ら変化は認められなかった.腎に対して,Y-8004は10mg/kg p.o.で尿量およびNa排泄量を減少させたが,indomethacin(IM)やphenylbutazone(PB)と類似した性質であった.平滑筋に対して,Y-8004は100mg/kg p.o,でマウスの腸管輸送能を,また10-6M以上の濃度で妊娠ラット子宮の自動運動を抑制した。しかし,ラット輸精管,モルモット回腸および心房標本に対し何ら作用を示さなかった.Y-8004はchemicalmediatorに対する拮抗作用を示さなかったが,Konzett-Riissler法でbradykininによる気管支収縮を0.1mg/kg i.v.で特異的に抑制した.この作用は非ステロイド性抗炎症薬に共通する性質であるが,単なる受容体での競合作用によるとは考えられない.また,Y-8004は0.1mg/kg p.o.でIMと同様にマウスの出血時間を延長させたが,血液のカルシウム再加凝固時間の延長および線溶系の活性化などは認められなかった.しかし,Y-8004は0.25mg/kg p.o.以上でモルモット血小板の凝集能を低下させた.以上の結果から,Y-8004には間接的に抗炎症作用を示す薬理作用はなく,その薬理学的性質から浮腫を呈することが危惧されるが,IMやPBなどの非ステロイド性抗炎症薬に類似した活性物質であろうことが示唆された.
  • 明石 章, 橋爪 武司, 田中 真, 中 信一, 鈴木 育夫, 笠原 明
    1976 年 72 巻 4 号 p. 417-431
    発行日: 1976年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    三環系抗うつ薬であるlopramine(LOP)の一般薬理作用をimipramine(IMP)のそれと比較検討し,次の成績を得た.マウスの行動および外観的生理状態に対するLOPの作用はIMPと比べて軽微であり,ネコ皮質脳波の高振巾徐波化および海馬律動波の消失化作用も弱い.LOPはラットの条件回避反応,炎症性(ラット)および圧刺激性(マウス)落痛,ウサギ体温,電撃あるいは薬物によるマウスの痙攣に対して,ほとんど作用なく,マウスの自発運動を軽度に抑制する.一方,IMPでは鎮痛,体温上昇傾向(高用量)および電撃による強直性伸展痙攣の抑制などの諸作用がみられ,自発運動の抑制も強い.Oxotremorineによるマウスのtremorおよび体温下降に対して,LOPは後者のみを抑制するが,IMPは両老に対して拮抗する.麻酔イヌにおいて,LOPは呼吸数の増加,血圧下降,左心室内圧および左心室内圧上昇速度(dp/dt max.syst.)の低下(高用量)などの作用を示し,IMPでは降圧作用が強く,dp/dtの低下(高用量)が著明である.LOPは低用量:で麻酔イヌにおけるnorepinephrineの昇圧作用およびacetylcholine(ACh)の降圧作用を増強し,tyramine(Tyr)の昇圧作用を著明に抑制するが,高用量ではAChの作用を減弱する.IMPの作用もこれと同様であるが,TyrおよびAChに対する拮抗はLOPよりも強い.LOPは麻酔イヌの胃運動に対してほとんど無作用であるが,空腸運動を抑制する.IMPは胃運動を軽度に尤進し,空腸に対しては一過性の強い充進ののち抑制を示す.モルモット摘出回腸におけるLOPの抗spasmogen作用(非特異的)はIMPよりも弱く,ラット摘出子宮の自動運動およびcatecholamineによるモルモッと摘出輸精管の収縮に対しては無作用である,一方,IMPは子宮運動を抑制し,高濃度では抗catecholamine作用を示す.ラットの排尿量および尿中電解質排泄量はLOPによって減少(傾向)し,IMPによって増加(傾向)がみられる.
  • 小澤 光, 野津 隆司, 相原 弘和, 秋山 二三雄, 笹島 道忠
    1976 年 72 巻 4 号 p. 433-443
    発行日: 1976年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    Lithium carbonate(Li2CO3)またはlithium chloride(LiCl)をラットおよびイヌに経口投与し,吸収,分布および排泄を調べた,ラットの場合,Li2CO3投与4時間後に血中濃度の最高値を認め,投与量の71%が24時間尿に排泄された.Liの血中濃度と尿中排泄量は,Li2CO3とLiClでほぼ近似していた.イヌの場合,ラットに比較して血中最高濃度に到達する時間が速く,尿中排泄が遅い傾向にあり,吸収排泄速度に種差を認めた.一方,臓器への分布では,甲状腺と下垂体にLi親和性を認めた.また脳と骨には反復投与時に蓄積性を認めたが,投与中止後速やかに尿中に排泄され残溜性は認められなかった.脳への分布は1回投与では血中濃度より低いが,反復投与で血中濃度を上回り以後ほぼ一定レベルを保持した.さらに反復投与時における薬理作用についても行動薬理学的に検討を加えた,マウスの自発運動量に対し,LiClに比較してLi2CO3でより強い抑制作用を認めた.またLi2CO3は高用量でmethamphetamineおよびcocaineによる興奮作用を抑制し,reserpineによる眼険下垂,体温下降作用にも拮抗作用を示した.以上の結果,Li塩の反復投与により脳内のLi濃度が高まり,この時中枢抑制作用が認められることが明らかとなった.
  • 野津 隆司, 古川 達雄
    1976 年 72 巻 4 号 p. 445-451
    発行日: 1976年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    ラットの側脳室内に14C-norepinephrine(14G-NE)または14C-dopamine(14C-DA)を投与し,未変化体およびその代謝物を薄層クロマトグラフィーを用いて分離定量する方法に検討を加え,従来の方法に比較してさらに簡易迅速な実験方法とした.この方法を用いて14C-NEと14C-DAの脳内代謝を検討し,14C-NEに比較して14G-DAの消失が速やかなことを確認した.14C-NEの場合は,総放射能中に占める未変化体の割合が多く,経時的に増大したのに対し,14C-DAの場合は,未変化体の割合は少なく,急速に代謝を受けて脱アミノ体が初期に大量に出現し,次いでO-メチル脱アミノ体の一時的増加が見られた.さらに脳内catecholamine代謝に影響を与える薬物の作用について検討した.Methamphetamineは,NE代謝に対し,未変化体,脱アミノ体およびO-メチル脱アミノ体を減少させ,normetanephrineを著明に増大させた.DA代謝に対しては,3-methoxytyramineとhomovanillic acidの増加ならびに脱アミノ体の減少を認めたが,未変化体とNEには変化がなかった.またreserpine類似薬(Ro4-1284)はNE代謝に対し,未変化体を減少させ,脱アミノ体とO-メチル脱アミノ体を増加させた.DA代謝に対しては,未変化体とNEを著明に減少させ,homovanillic acidを増加させた.以上の結果から,両薬物のNEとDA代謝に対する作用を比較すると,methamphetamineはNE代謝に,一方,Ro4-1284はDA代謝により強く影響をおよぼした.
  • 木村 喜代史
    1976 年 72 巻 4 号 p. 453-473
    発行日: 1976年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    睡眠―覚醒周期,特に逆説睡眠(PS)発現機構に対する脳内モノアミンの役割について検討した.実験にはウサギを用い,脳内モノアミン量の変動ないしその活性に影響を与える薬物として,reserpine,parachlorophenylalanine(PCPA),α-methyl-p-tyrosine(α-MT)およびα-methyl-m-tyrosine(α-MMT)を用いた.reserpine(0.5mg/kg,i.v.)は投与後2~3時間持続する覚醒相と,それに次ぐ徐波睡眠優位な時期とからなる二相性の変化を来たし,PS発現を少なくとも8~9時間抑制した.しかしreserpine投与40~60分頃より台形体内側核からネコのPGO(ponto-geniculo-occipital)波に類似のスパイク波が出現し,8~12時間にわたって意識水準にほとんど関係なく持続的に出現した.このスパイク波(xeserpineスパイク)は同部位よりPS時に出現するスパイク波(TRスパイク)と波形その他の電気生理学的諸性質が酷似しており,両者が互いに共通の発現機序に基いて出現している可能性が示唆された.reserpineスパイクの振幅,発射頻度および群発性が著しく増大する場合のポリグラフィーは,動物が行動的に覚醒している点を除けば,PS時のものとほとんど区別出来なかった.PCPA(250mg/kg,1日2回,3日間連続腹腔内)投与例では徐波睡眠相に移行するとTRスパイクが持続的に出現するようになり,その振幅ならびに発射頻度が次第に増大する場合にはPSへ移行するケースが多くみられた.PCPA前処置ウサギではreserpineスパイクの出現潜時が著しく短縮され,しかも覚醒時においても出現するようになった.α-MT(200mg/kg,i.p.)は単独ではPS時以外の時期にTRスパイクを出現せしめることはなかった.α-MMTは,徐波睡眠に著変を来たさない用量(100mg/kg,i.v.)でPS発現を著明に抑制した.これらの事実は,程度の差はあるが,NAも5HTと同様,下位脳幹部におけるPS発現の“triggering mechanism”に対して抑制的な作用を有していることを示唆している.
  • 板谷 公和, 清永 城右
    1976 年 72 巻 4 号 p. 475-481
    発行日: 1976年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    自律神経調整剤といわれるγ-oryzanolの作用機序を拘束水浸ストレス法による潰瘍を指標として検討した.その結果,γ-oryzanolは5日間連続皮下投与すると,緩和な条件下に発生するストレス潰瘍を用量に応じて抑制すること,ストレスに対する血清11-OHCS上昇率は軽度となること,しかし副腎摘出後にも同様の作用の発現することが明らかとなり,γ-oryzanolのストレス潰瘍抑制効果は,下垂体-副腎系よりもむしろ自律神経系を介するものと推論した.
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