抄録
新β受容体遮断薬dl-1-(tert.butylamino)-3-〔(2-propinyloxy)phenoxy〕-2-propanol hydrochloride(dl Kö1400-Cl)の抗不整脈作用をouabain誘発不整脈,aconitine誘発不整脈,Harrisの冠動脈二段結紮法による不整脈およびhalothane-adrenaline不整脈の4つの実験的不整脈をモデルにpropranolol,oxprenolol,ajmaline,procainamideのそれと比較検討した.その結果,aconitine不整脈の心室性期外収縮に対してはajmaline,procainamideのいわゆる古典的抗不整脈薬の方が著明な防護効果を示すが,心室細動に対してはoxprenolol,次いでpropranololが強い防護効果を示すことがわかった.ただし,この作用はβ-blocking作用の強さと平行しなかった.Ouabain不整脈に対してはajmalineやprocainamideのみならずKö1400-Clをはじめとするβ遮断薬にも著明な防護効果が認められ,aconitine不整脈でみられたような不整脈の型による効果のちがい(β遮断薬と古典的抗不整脈薬との間の)はみられなかった.また,halothane-adrenaline不整脈に対してはβ遮断薬はきわめて低用量で効果を示し,しかもKö1400-Clの活性はpropranololの活性の3倍でβ遮断作用の強さと平行性がみられた.一方,イヌの冠動脈二段結紮による不整脈に対してはprocainamideの不整脈抑止効果が著明であり,術後1日目にも2日目にも(2日目は1日目に比し低用量で有効)明確な効果が認められた.これに対しKö1400-Cl,propranololは術後1日目ではほとんど抑止効果はなく,2日目になってKS1400-Clで4例中2例,propranololで3例中2例に完全抑止が認められたにすぎない.なお,β遮断薬を術後1日目に高用量投与した場合には死亡する例が1例ずつみられた.したがってこの種の不整脈に対して結紮後間もない時期にこれらのβ遮断薬を投与する場合は慎重を要するものと考えられる.