日本薬理学雑誌
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72 巻, 5 号
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  • 林 敦子, 安孫子 保
    1976 年 72 巻 5 号 p. 483-492
    発行日: 1976年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    犬の左心室筋の内層と外層のミトコンドリアの呼吸機能を,ガルパニ電極を使用して反応液中の酸素消費量を測ることによって調べた.1)正常犬においてstate3とstate4の酸素消費速度(QO2,mμ atoms O/mg protein/min),呼吸調節率(RCR)およびADP!0比は基質としてsuccinateを用いたときでも,またglutamateを用いたときでも,内層と外層のミトコンドリアの間に有意の差が見られなかった.2)左冠動脈前下行枝中の一本の小さな枝を完全に結紮して30分おいた犬のミトコンドリアのstate3とstate4のQO2,RCRおよびADP/O比は,基質としてsuccinateを用いても,またglutamateを用いても,内層と外層との間に有意の差が見られなかった.しかし,正常犬と比較した場合,succinateを基質にした実験では,外層においてADP/O比,およびstate3とstate4のQO2が有意に低く,また内層ではstate4のQO2が低かった.3)左冠動脈前下行枝の起始部附近を血流量が約半分になるように結紮して30分おいた犬のミトコンドリアをsuccinateを基質にして反応させた時,state3とstate4のQO2,RCRおよびADP/O比は,内層と外層との間に有意の差が見られなかった.正常犬と比較してみた場合,外層のADP/O比が低かった.4)Nitroglycerinはin vitro(succinateを基質にした)でも,またin vovo(glutamateを基質にした)でもミトコンドリアの呼吸機能に影響をおよぼさなかった.5)Dipyridamoleは,in vitro(succinateを基質にした)では外層のADP/O比を低下させたが,in vivo(glutamateを基質にした)ではミトコンドリアの呼吸機能に影響をおよぼさなかった.
  • 谷澤 久之, 寺田 護, 渡辺 芳則
    1976 年 72 巻 5 号 p. 493-499
    発行日: 1976年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    豚回虫筋の糖質代謝に対する4-Iodothymol(IT)の作用を,hexylresorcinol(Hex),santonin(S)およびpiperazine(Pip)との比較のもとに検討し,以下の結果を得た.1)Hex(200~400μg/y)は回虫筋ホモジネートでのsuccinate生成,細胞質におけるphosphofructokinase(PFK)活性およびミトコンドリアにおける電子伝達活性を,強力にかつ非特異的に阻害した.2)S(100~400μg/ml)およびPip(100~400μg/ml)はこれらの活性に対しほとんど影響を与えなかった.3)IT(100~400μg/ml)はホモジネートでのsuccinate生成を著しく阻害した.4)IT(400μg/ml)によるPFKに対する阻害作用はHex(400μg/yl)の場合に比べ約1/3であった.5)ITはミトコンドリアにおけるsuccinate oxidasc系の電子伝達を阻害した.ITの低濃度(25~100μg/y)ではsuccinate dehydrogenase(SDH,FP2)-cytochrome(cyt.)b間,また高濃度(200~400μg/ml)ではSDHに対する阻害が推定された.これらの結果から,ITは回虫筋ミトコンドリアにおけるエネルギー代謝を阻害することにより回虫を死に導くものと考えられる.
  • 伊藤 敬三, 塗本 精一, 落合 喬, 堀内 幹夫, 鈴木 省吾, 工藤 幸司, 石田 柳一, 甲和 良夫
    1976 年 72 巻 5 号 p. 501-517
    発行日: 1976年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    持続型抗精神病薬penfluridol(TLP-607)の一般薬理作用を検討し,以下の成績を得た.1)TLP-607(i.v.)はネコ呼吸,血圧,心電図において,呼吸への影響は少なく,血圧降下,心拍数減少を起こし,ウサギ生体心臓において心運動抑制作用を示した.イヌ動脈血流量および適出ウサギ耳介血管標本に対して著明な作用を示さなかった.2)TLP-607はネコにおけるadrenaline,noradrenalineおよびdopamine昇圧反応を軽度に抑制したが,acetylcholineおよびhistamine降圧反応には影響をおよぼさなかった.摘出モルモット回腸においてTLP-607は抗acetylcholine作用,抗histamine作用および抗BaCl2作用を示した.また上頸交感神経節前線維刺激による瞬膜収縮に対してわずかに抑制する傾向を示した.3)ウサギ摘出回腸自動運動,ラット胃酸分泌および胆汁分泌に対してTLP-607はほとんど影響をおよぼさなかった.ラットのストレス潰瘍およびShayラヅト潰瘍形成ならびにネコ生体胃腸管運動に対しては軽度の抑制作用を示し,マウス腸管内炭末輸送に対しては軽度に促進する傾向を示した.4)TLP-607はラットの生体および摘出子宮運動に対して軽度の抑制作用を示した.坐骨神経末端刺激による腓腹筋の収縮および尿量ならびに尿中電解質排泄に対しては影響を与えなかった.
  • 猪木 令三, 工藤 照夫, 林 毅
    1976 年 72 巻 5 号 p. 519-530
    発行日: 1976年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    Aspirin,aminopyrine,およびmorphineの鎮痛作用をacetic acid writhing法,hot plate法,D'Amour and Smith法,およびRandall and Selitto法で検討し,kallikreinならびにkininaseのinhibitors併用時の鎮痛作用の増減,および脳内kininase活性の状態から,kininの落痛に対する役割と鎮痛薬の機序について考察した.本実験成績から,aspirinは末梢性に,aminopyrineおよびmorphineにも比較的強い末梢効果があることが示唆され,また末梢部位と脳内でのkininの作用に差があることが示唆された.
  • 柴田 丸, 久保 恭子, 小野田 真
    1976 年 72 巻 5 号 p. 531-541
    発行日: 1976年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    クマ笹Sasa albomargixiata MAKINO et SHIBATAの乾燥葉の熱水可溶分画(Folin)の中枢作用および毒物解毒作用を検討し,次の結果を得た.鎮静作用の検索から,Folinの経口投与でcaffeineに対する拮抗作用およびhexobarbital催眠延長傾向がみられたが,reserpine眼険下垂試験,Grip strength testおよび遊泳試験においては効果を示さなかった.Folinの経口投与はなんらの抗痙攣作用を示さなかったが,Folin 1g/kgの大量腹腔内投与では鎮咳作用がみとめられた。HgCl2,NaAsO2あるいはCdSO4・8H2OとFolinの混合液の経口投与で明らかな死亡率の減少が,またtetrodotoxin(TTD)とFolinの混合液の経口投与で急性症状の改善と延命効果がみとめられた.しかし上記無機毒物に対するFolinの予防効果,および無機毒物とFolinの交互投与試験においてはなんらの解毒作用もみられなかった.Folinを経口投与後TTDを腹腔内投与しても,同様に解毒作用はみられなかった.さらにFolinの消化器系に対する作用として,ストレス潰瘍の抑制および幽門結紮-aspirin潰瘍作成時のacid outputの増加がみとめられたが,生体胃運動,潟下または肛門潰瘍試験においては著変を示さなかった.またFolinの経口投与は熱傷浮腫抑制作用および利尿傾向を示した.
  • 亀山 勉, 鍋島 俊隆
    1976 年 72 巻 5 号 p. 543-556
    発行日: 1976年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    Difenamizoleの鎮痛作用に生体アミンがどのような影響をおよぼすかmorphincおよびaminopyrineの鎮痛作用と比較検討した.鎮痛作用は,マウスについては熱板法を,ラットにおいては熱湯刺激法を使用し測定した.5-hydroxytryptophan(5-HTP)とL-dopaは熱板法においてmorphineの鎮痛作用を増強し,difenamizoleの作用とは拮抗した.p-chlorophenylalanine(pCPA),α-methyl-p-tyrosine(α-MT)およびreserpineはmorphineの鎮痛作用に拮抗した.α-MTはdifenamizoleの作用を増強した.熱板法でのaminopyrineの鎮痛作用は,5-HTP,pCPA,L-dopaおよびα-MTを前処置してもほとんど影響を受けなかった.ラットでは,5-HTPは熱湯刺激法におけるmorphineの鎮痛作用に拮抗し,pCPA,L-dopaおよびα-MTはmorphineの作用に影響をおよぼさなかった.これら生体アミン関連薬物を前処置しても熱湯刺激法でのdifenamizoleの鎮痛作用には変化が認められなかった.他方,どちらの鎮痛測定法においても5-HTPを前処置すると脳内5-hydroxytryptamine含量は同じ程度Y`増加した.これらの結果からマウスを使用した熱板法におけるdifenamizoleおよびmorphineの鎮痛作用にはcatecholamineや5-hydroxytryptamineが関与していることが考えられるが,ラットを使用した熱湯刺激法でのこれら鎮痛薬の鎮痛作用には別の機序が関与しているように思われる.さらYom,生体アミンが鎮痛作用に関与する機構は鎮痛薬の種類によっても異なっていることが考えられる.
  • 松原 一誠, 橋本 敬太郎, 片野 由美, 塚田 徳昌, 松田 博人, 名畑 博之, 今井 昭一
    1976 年 72 巻 5 号 p. 557-571
    発行日: 1976年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    新β受容体遮断薬dl-1-(tert.butylamino)-3-〔(2-propinyloxy)phenoxy〕-2-propanol hydrochloride(dl Kö1400-Cl)の抗不整脈作用をouabain誘発不整脈,aconitine誘発不整脈,Harrisの冠動脈二段結紮法による不整脈およびhalothane-adrenaline不整脈の4つの実験的不整脈をモデルにpropranolol,oxprenolol,ajmaline,procainamideのそれと比較検討した.その結果,aconitine不整脈の心室性期外収縮に対してはajmaline,procainamideのいわゆる古典的抗不整脈薬の方が著明な防護効果を示すが,心室細動に対してはoxprenolol,次いでpropranololが強い防護効果を示すことがわかった.ただし,この作用はβ-blocking作用の強さと平行しなかった.Ouabain不整脈に対してはajmalineやprocainamideのみならずKö1400-Clをはじめとするβ遮断薬にも著明な防護効果が認められ,aconitine不整脈でみられたような不整脈の型による効果のちがい(β遮断薬と古典的抗不整脈薬との間の)はみられなかった.また,halothane-adrenaline不整脈に対してはβ遮断薬はきわめて低用量で効果を示し,しかもKö1400-Clの活性はpropranololの活性の3倍でβ遮断作用の強さと平行性がみられた.一方,イヌの冠動脈二段結紮による不整脈に対してはprocainamideの不整脈抑止効果が著明であり,術後1日目にも2日目にも(2日目は1日目に比し低用量で有効)明確な効果が認められた.これに対しKö1400-Cl,propranololは術後1日目ではほとんど抑止効果はなく,2日目になってKS1400-Clで4例中2例,propranololで3例中2例に完全抑止が認められたにすぎない.なお,β遮断薬を術後1日目に高用量投与した場合には死亡する例が1例ずつみられた.したがってこの種の不整脈に対して結紮後間もない時期にこれらのβ遮断薬を投与する場合は慎重を要するものと考えられる.
  • 喜多 富太郎, 秦 多恵子, 米田 良三
    1976 年 72 巻 5 号 p. 573-584
    発行日: 1976年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    本論文においては,神経鎮静剤ノイロトロピン(NSPと略)の鎮痛作用を調べ,次いでSARTストレスマウスと正常マウスにおける薬物の鎮痛効果の比較検討を行なった.a)正常マウスにNSPを単独で用いると,酢酸法,フエニルキノン法およびRandall-Selitto法において弱い鎮痛作用が認められた.D'Amour-Smith法では無効であった.b)酢酸法およびフエニルキノン法で効力を調べるとNSPは下熱性鎮痛薬アミノピリンと相加的協力作用を示し,麻薬性鎮痛薬モルフィンと非平行的協力作用を示した.Randall-Selitto法によってはNSPとアミノピリンの併用効果は認められなかった.次に,すでにわれわれが報告した実験的自律神経失調症様動物であるSARTストレスマウスを用いて薬物の鎮痛作用を調べた.なお,SARTストレスマウスにおいては多少痛覚閾値低下の傾向が見られた.c)酢酸法においてモルフィン,NSP,レボメプPマジンおよびイミダゾール酢酸が,d)フエニルキノン法においてはモルフィン,NSP,レボメプロマジンおよびL-GABOBが,e)D'Amour-Smith法ではNSPのみが,また,f)Randall-Selitto法ではアミノピリン,NSP,レボメプFマジン,イミダゾール酢酸およびL-GABOBが,SARTストレスマウスにおいて正常マウスにおけるよりも著しく強い鎮痛作用を示した.9)アトロピン,セロトニン,ヒスタミン,タウリンおよび3-amino-2-hydroxypropane-1-sulfonic acidは正常およびSARTストレスマウスにおいて鎮痛効果の差異は認められなかった.以上のごとくSARTストレスマウスでは薬物の鎮痛作用が正常マウスにおけるよりも著明に認められ,特にNSPについてはこの傾向が明瞭であった.このことはNSPの臨床上の著しい鎮痛効果を裏付けるものといえよう.
  • 植木 昭和, 藤原 道弘, 井上 和秀
    1976 年 72 巻 5 号 p. 585-607
    発行日: 1976年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    新しい三環性抗うつ薬lopramine(Leo640,DB-2182):N-methyl-N-(4-chlorobenzoylmethyl-3-(10,11-dihydro-5H-dibenz(b.f)azepin-5-yl)-propylamine hydrochlorideの行動薬理学的特性を,マウス,ラットを用いて検討し,imipramine,amitriptylineのそれと比較した.lopramine(LOP)は0.5%CMCに懸濁し,imipraminc(IMP),amitriptyline(AMT)は精製水に溶解し,特記しない限りは経口投与した.LOPはIMP,AMTと同様reserpine hypothermia,tetrabenazine ptosis,halopcridol catalepsyに拮抗し,methamphetamine,DOPAおよびapomorphineによる常同行動を増強する抗うつ薬としての薬理学的特性を有する.その他,LOPは中隔野破壊や嗅球摘出ラットの情動過多をIMP,AMTと同程度に抑制した.とくにmuricideは選択的に抑制され,嗅球摘出ラットのmuricide抑制作用のED50はLOP24,0,IMP39,0,AMT27.5mg/kgであった.一方Δ9-tetrahydrocannabinolによって起こるmuricide抑制作用のED50はLOP30.0,IMP14.5,AMT20mg/kg i.P.であった.LOPはIMP,AMTとは異なり5000mg/kgの大量でも軽度の鎮静を示す程度であり,―般活動性の増加およびmethamphetamine運動興奮の増強作用はIMP,AMTよりも強かった.またphysostigmineの致死作用やoxotremorine tremorを全く抑制しないので,LOPは中枢性抗コリン作用を欠くものと思われる.その他,5000mg/kgの大量でも協調運動障害や筋弛緩はみられず,死亡することもなかった.以上,LOPはIMPAMTに比べて一般活動性の増加,methamphetamine運動興奮の増強が強く,中枢性抗コリン作用はなく,しかも毒性の極めて少ない抗うつ薬と考えられる.
  • 堤 璋二, 小澤 玲子, 井本 邦彦
    1976 年 72 巻 5 号 p. 609-618
    発行日: 1976年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    有機リン化合物pyridaphenthion(PD)は農業用殺虫剤として用いられているが,この作用は主に体内cholinesterase(ChE)活性阻害によるものである.そこでPDの各量をウサギ(白色雄性家兎,体重2.5~3.4kg)に経口投与した場合の血中ChEの変化を経時的に検索するとともYom,有機リン化合物の解毒剤である2-pyridine aldoxime methiodide(PAM)を投与すれば,PDによる血中ChEの変化がどのように影響されるかを検討した.血中ChE活性はAChを基質として,ChEにより遊離する酪酸で低下するpHを測定するMichel変法(上田法)で測定した。実験結果は次の通りである.(1)24時間成績:PDの投与量(100~750mg/kg)と血中ChE活性の間にはdose responseが存在し,各量ともこの活性を経時的に低下させたが,500mg/kg投与群の24時間値はcell中で20.5%plasma中で21.5%を示した.しかしPAMを注射すると,ChE活性は一過性に回復した後漸次低下したが,24時間後では,55.8%と41.4%で,対照群の約2倍以上の値を示した.PAMの2回(1と9時間後)投与では,61.8%と48.4%,3回(1,9,17時間後)投与では67.8%,59.1%とさらにわずかに上昇した.(2)14日間成績:投与したPD量(100~400mg/kg)の増加に伴い,ChE活性の低下および対照値への回復遅延が出現した.PAMを投与すればこれらの低下および遅延は明らかに抑制され,しかもこの効果は1回投与よりも3回投与において著明であった.また体重の増加も明らかに認められた.以上から,PAMは一般に急性毒性の低い有機リン化合物には顕著な効果を現わさないとされているが,この範疇に入るPDのウサギ血中ChE活性低下に対して,PAMは明らかな治療効果を発揮し,しかも1回よりも3回投与がより効果的であることが証明された.
  • 野津 隆司, 古川 達雄
    1976 年 72 巻 5 号 p. 619-625
    発行日: 1976年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    Lithium(Li)塩の中枢作用機作検索のため,ラットにlithium chloride(LiCl)を腹腔内に急性投与(2.4mEq/kg×1,1.2mEq/kg×2,3時間)および亜急性投与(2.5mEq/kg×2/日,4,5日)して,open field法による自発運動量測定,蛍光定量による脳内norepinephrine(NE),dopamine(DA),serotonin(5HT)の定常レベル測定を行うとともに14C-NEまたは14C-DAを側脳室内に投与して脳内NEとDAの代謝を調べた.その結果,Licl急性および亜急性投与群とも自発運動量が抑制されたが,その時脳内NE,DA,5HTの定常レベルはいずれも変化を受けなかった.一方,NE代謝において,LiCl急性投与では,対照のsodium chloride(NaCl)群に比較して総放射能および未変化体とその代謝物のいずれにも有意な変化を認めなかったが,LiCl亜急性投与により,脱アミノ体が有意に増加した.またDA代謝においては,LiCl急性投与により,NaCl群に比較して総放射能,未変化体,normetanephrineには変化がなかったが脱アミノ体が減少し,O-メチル脱アミノ体は増加傾向を示した.LiCl亜急性投与では,脱アミノ体の減少傾向とO-メチル脱アミノ体の増加を認めた。従ってLiは亜急性投与でNE代謝においてmonoamine oxidasc(MAO)代謝物を増加させ,またDA代謝こおいてもMAO代謝系に影響を与え,これら脳内catecholamine代謝に対する作用が,Liの行動抑制作用となんらかの関連を有するものと思われる.
  • 姉崎 健, 東海林 徹, 桜田 忍, 木皿 憲佐, 中浜 博
    1976 年 72 巻 5 号 p. 627-637
    発行日: 1976年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    ネコを用い,cortexのsomatic sensory area I(SI),motor cortex I(MI),midbrain reticular formation(MRF),thalamus posterior group(PO)およびlimbic systemのamygdala,hippocampusの後肢侵害刺激により誘発されるevoked potentialにおよぼすdiazepam,MS4101の影響について検討を加え, 次の成績を得た.1)MS4101 1mg/kg i.p.投与によってtibial nerve刺激によるMI,SIのevoked potentialには何らの変化も認められなかった.2)tibial nerve刺激によるMRFのevoked potentialのamplitudeをMS-4101は減少させた.3)thalamusのPOのevoked potentialに対してMS4101は何らの変化も与えなかった.4)後肢皮膚電気刺激によるamygdalaのevoked potentialのamplitudeをdiazepamおよびMS4101は減少させたが, 二薬物間の効力差を認めることはできなかった.5)後肢皮膚電気刺激によるhippocampusのevoked potentialのamplitudeをdiazepamおよびMS4101は減少させたが, 二薬物間の効力差を認めることはできなかった.6)視床下部を電気刺激することにより, 頭のびくつき, 頭をふる, 回る, 口を大きくあけフワーと威嚇する(whine)などの行動が観察された.7)視床下部電気刺激により認められたsham rage responseの閾値をdiazepamおよびMS4101は上昇させた.
  • 東 洋, 弘中 豊, 玉置 博司, 久保田 哲弘
    1976 年 72 巻 5 号 p. 639-647
    発行日: 1976年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    ラット,ウサギおよびモルモットの消化器系におけるOlmidineの作用について検討し,以下の成績を得た.(1)Olmidineは2mg/kg i.v.ではウサギの唾液分泌に対して影響しなかったが,10mg/kg i.v.では一過性の分泌充進作用を来たし,投与前値の約3倍となった,(2)Olmidine20mg/kg i.p.は,Shayラットの分泌胃液量,遊離塩酸量,総酸度ならびに胃液pHに対して何らの作用も示さなかったが,100mg/kg i.p.では分泌胃液量,遊離塩酸量を著明に抑制し,これに対応してpHも3.33と明らかに上昇したが,総酸度に対してはほとんど影響しなかった.(3)Olmidine100および500mg/kg i.p.は用量に応じてラットの胆汁排出量を減少した.(4)Olmidineは200mg/kg以下の経口投与量で,ラットの胃粘膜に対して障害作用を示さなかった.(5)Olmidineは20~500mg/kgの経口投与量において,ラット小腸での炭素末輸送を抑制した.(6)モルモットの摘出消化管標本において,Olmidineは収縮および弛緩の二様の作用を示し,収縮はatropineまたはscopolamine前処置により,完全に阻止されて弛緩となった.この弛緩は,phentolamineおよびpropranolol併用前処置によって抑制されることはなかった.(7)Olmidincは経壁刺激により生ずるモルモット摘出胆のう標本の収縮反応を著明に増強し,外来性acetylcholine作用に対しても軽度増強作用を示した.
  • 小川 義之, 加納 晴三郎
    1976 年 72 巻 5 号 p. 649-655
    発行日: 1976年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    細菌性発熱物質(lipopolysaccharide,LPS)による発熱反応において,eserine前処置およびouabainの同時投与の影響を家兎を用いて実験し次のごとき結果が得られた.1)ouabain(0.06mg/kg)とLPs(0.02μg/kgあるいは1μg/kg)を同時に静注すると著明にLPSによる発熱が抑制された.しかし,同じ投与量のouabainはLPS(10-4μg/kgあるいは10-3μg/kg)の大槽内投与による発熱は抑制しえなかった.2)Ouabain(0.06mg/kg)とLPS(25μg/kg)を同時に静注して2時間後に採取した脳脊髄液(cerebrospinal fluid,CSF)の発熱活性は,対照実験のLPS単独投与により得たCSFよりも弱かった.3)Eserine前処置(0.5mg/kg,s.c.,1時間)してLPS(1μg/kg)を静注するとLPSによる発熱が増強される傾向がみられた.またそのとき採取したcsFは対照実験のLPS単独投与(1μg/kg,i.v.)では認められなかった発熱活性が認められた.4)Eserinc前処置(0.5mg/kg,s.c.,1時間)してLPS(1μg/kg)とACh(10μg/kg)を同時に静注し2時間後に採取したCSFは強い発熱活性を示した以上の結果よりouabainによるNa,K-ATPase活性の抑制とeserineによるcholinesterase活性の抑制は,それぞれ血液-脳関門(Blood-Brain Barrier,B.B.B.)の透過性の抑制と昂進を惹起せしめるものと推定された.またLPSによる発熱反応におけるB.B.B.の重要性が示唆された.
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