犬の左心室筋の内層と外層のミトコンドリアの呼吸機能を,ガルパニ電極を使用して反応液中の酸素消費量を測ることによって調べた.1)正常犬においてstate3とstate4の酸素消費速度(QO
2,mμ atoms O/mg protein/min),呼吸調節率(RCR)およびADP!0比は基質としてsuccinateを用いたときでも,またglutamateを用いたときでも,内層と外層のミトコンドリアの間に有意の差が見られなかった.2)左冠動脈前下行枝中の一本の小さな枝を完全に結紮して30分おいた犬のミトコンドリアのstate3とstate4のQO
2,RCRおよびADP/O比は,基質としてsuccinateを用いても,またglutamateを用いても,内層と外層との間に有意の差が見られなかった.しかし,正常犬と比較した場合,succinateを基質にした実験では,外層においてADP/O比,およびstate3とstate4のQO
2が有意に低く,また内層ではstate4のQO
2が低かった.3)左冠動脈前下行枝の起始部附近を血流量が約半分になるように結紮して30分おいた犬のミトコンドリアをsuccinateを基質にして反応させた時,state3とstate4のQO
2,RCRおよびADP/O比は,内層と外層との間に有意の差が見られなかった.正常犬と比較してみた場合,外層のADP/O比が低かった.4)Nitroglycerinは
in vitro(succinateを基質にした)でも,また
in vovo(glutamateを基質にした)でもミトコンドリアの呼吸機能に影響をおよぼさなかった.5)Dipyridamoleは,
in vitro(succinateを基質にした)では外層のADP/O比を低下させたが,
in vivo(glutamateを基質にした)ではミトコンドリアの呼吸機能に影響をおよぼさなかった.
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