日本薬理学雑誌
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2-(2-Fluoro-4biphenylyl)propionic acid(Flurbiprofen)の抗炎症作用機序の検討
舛本 省三増田 千春
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1976 年 72 巻 6 号 p. 753-762

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抄録
強力な抗炎症剤2-(2-fluoro-4-biphenylyl)propionic acid(Flurbiprofen,FP-70)の抗炎症作用機序を既存の薬剤と比較検討した.各種起炎物質によるラット後肢足脈浮腫実験で,histamine,serotoninおよびkininと関連が深い浮腫に対する抑制作用は,soy bean trypsin inhibitorの作用に類似し,diphenhydramineおよびdibenamineのそれとは異った.しかしkinin生成およびkininase活性に対して影響を示さなかった.モルモット肺ホモジネートにおけるarachidonic acidからのprostaglandin(PG)合成を0.64μMで50%阻害し,ibu-profen(IP)の96.5倍,indomethacin(IM)の10.1倍,acetylsalicylic acid(AS)の2,280.6倍強い作用を示した.しかしPGE2によるラット皮内毛細血管透過性尤進に対しては抑制作用を示さなかった.ラット肝ライソゾーム酵素のacidphosphataseおよびβ-glucuronidaseの活性をIMと同等に阻害し,ライソゾームからの酵素遊離をIMおよびphenylbutazone(PB)と同等に抑制した.また犬の赤血球の加熱溶血をIMと同等に,IPおよびPBの10倍強く抑制し,強い生体膜安定化作用を示した.ラット肝ミトコンドリアのATPase活性を,10μMで74.7%促進した.この促進作用は,FP-70>IM>IP>PB=ASの順に強かった.またこのミトコンドリアの酸化的リン酸化を50μMで28.5%uncoupleしたが,IMより弱かった.以上の結果から,FP-70はAS様作用を有する酸性非ステロイド性抗炎症剤の典型的な薬剤であるが,その抗炎症作用は最も強力で,PG合成阻害作用,生体膜安定化作用およびATPase活性化作用が重要と思われる.
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