日本薬理学雑誌
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ラットにmethamphetamineを投与した時のstereotyped behaviorの発現と脳内dopamine量変動との関係 —α-methyl-para-tyrosineの併用効果—
小林 雅文若松 佳子篠原 正弘寺岡 康利越川 憲明野村 文男古内 武人高原 茂北原 郁夫芦刈 茂
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1977 年 73 巻 6 号 p. 695-701

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抄録

ラットのmethamphetamine-stereotypy(lickingとbiting)における脳dopamineの役割を追求する目的で,α-MPT前処置ラットについて実験を行ない,次の結果を得た.1)α-MPT(50mg/kg i.p.)投与3時間後にmethamphetamine(10mg/kg i.p.)を注射した場合には,lickingもbitingも全く出現しなかった.このときの脳dopamine量は,はじめから極めて低い値を示し,その後60分ではさらに低下した,2)α-MPTを7日間連用し,最終投与3時間後にmethamphetamineを注射した場合には,その60分後にlickingが見られたが,bitingは全く出現しなかった.そのときの脳dopamine量は,はじめから低い値を示し,その後急激に低下して60分に最も低くなった.3)α-MPTを7日間連用し,最終投与24時間後にmethamphetamineを注射した場合には,その30分後からlickingが出現し,60分,120分では全例に認められた.これは対照ラット(生理食塩液投与後methamphetamineを注射したもの)とほぼ同様であった.一方bitingは60分にわずかに認められたのみであった.このときの脳dopamine量は,5分でやや高まるが以後低下し,60分では最も低い値を示した.しかしこの度合は1),2)のα-MPT処置ラットほど著明ではなく,むしろ対照ラットの値に近かった.以上の結果,stereotyped behaviorが最もよく出現する時期(60分)では,それが認められた各群に共通して,同様の時期に脳dopamine levelの著しい低下が認められた.但しこれらの群はmethamphetamine投与時には一様にnormal levelであった.このことは,stereotyped behaviorの出現,持続と脳dopamineの充分な消費が密接に関連していることを示唆している.

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