日本薬理学雑誌
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73 巻, 6 号
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  • 根田 公一, 山本 かづみ, 佐藤 春夫, 沢井 正治, 石村 勝正
    1977 年 73 巻 6 号 p. 651-656
    発行日: 1977年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    MS-4101の染色体異常誘発能を調べるためJCL-SD系ラットを用いて細胞遣伝学的研究を行なった.200mg/kg,500mg/kg,2,000mg/kgを経口的に単一投与および連続投与し,骨髄細胞の染色体を観察して,染色体異常を検索した.その結果MS-4101に起因すると思われる染色体異常は認められなかった.また,類似薬物であるdiazepam,nitrazepamにおいても染色体異常誘発能は認められなかった.しかし,陽性対照薬物のcyclophosphamideでは20mg/kg,50mg/kgの経口投与において骨髄細胞の染色体に,構造異常の増加が認められた.
  • 林 栄一, 山田 静雄, 加藤 正秀
    1977 年 73 巻 6 号 p. 657-663
    発行日: 1977年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    麻酔ネコの大腿動脈圧および肝,脾血流量を測定することによって,腹腔神経節に対するSGTXの作用を検討し,以下の結果を得た.1)SGTX(50nmol/kg i.v.)は大腿動脈圧を持続的に下降させ,肝,脾血流量を10~20%減少させた.2)SGTX(30~50nmol/kg i.v.)は大内臓神経(節前)を電気刺激することによって生ずる昇圧反応,および肝,脾血流量の変動を顕著に抑制した.一方,脾動脈周囲の節後神経を電気刺激することによる脾血流量の変動にはほとんど影響を与えなかった,3)SGTX(30~50nmol/kg i.v.)は,DMPP(94.2nmol/kg i.v.)によって生じた昇圧反応および肝,脾血流量の変動を著明に抑制したが,McN-A-343(94.8nmol/kg i.v.)による血圧反応ならびに両臓器の血流量の変動を抑制せず,逆にMcN-A-343による昇圧反応を増強した.以上の結果より,SGTXは腹腔神経節を遮断し,これは神経節におけるニコチン性受容体の遮断に基づくものと考えられる.
  • 砂野 哲, 森谷 恵, 望月 洋一
    1977 年 73 巻 6 号 p. 665-674
    発行日: 1977年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    Dantrolene sodium, 1-[5-(P-nitropheny1)furfurylideneamino]hydantoin sodium hydrate(以下dantrolene)は骨格筋において興奮収縮連関の場に作用する筋弛緩剤である.本実験ではモルモットの内臓筋のいくつかについてその作用を検討した.食道の外層筋のtwitch contraction,high-K Tyrode液によるK拘縮は2.5~5×10-6g/mlのdantroleneで80~90%抑制された.この抑制のtime courseはゆるやかで最大抑制には10~20分を要した.また,薬物洗滌後の回復も遅く完全な回復には40分を要した.挙睾筋のK拘縮も同濃度のdantroleneで同様に抑制された.これらの筋では5~10mMのcaffeineで拘縮がみられた.25×10-6g/mlのdantroleneはこの拘縮をほぼ完全に抑制した.精管標本では電気刺激に応じてtwitch contractionがみられるが,dantroleneはこの収縮を抑制しなかった.この標本はhigh-K Tyrode液で脱分極するとphasicとtonicの要素からなる拘縮を示すが,dantrolencはこのいずれをも抑制しなかった.結腸紐標本には強い自発性収縮があったが,dantroleneはこの収縮に影響を与えなかった.この標本でもhigh-K Tyrode液でphasicとtonicの収縮がみられたが,dantroleneはこの何れにも影響しなかった.電子顕微鏡像で前二者は横紋筋で,筋小胞体,transverse tubulus(T-tubulus),triad等がみられた.後の二つの筋は平滑筋で,caveole,筋小胞体等がみられたが,その形態は前二者とは異なっていた.また,triad構造はみられなかった.骨格筋におけるdantroleneの作用点がT-tubulusあるいはtriadという報告があるので,構造上の差が前二者と後二者におけるdantroleneの作用の差になると考えられる.以上,dantroleneは内臓筋でも横紋を有するものには作用し,平滑筋には作用しなかった.
  • 加藤 有三, 小椋 秀亮, 瀧本 庄一郎
    1977 年 73 巻 6 号 p. 675-682
    発行日: 1977年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    Lead acetate(Pb-Ac)の静脈内注射(静注)に続いて起こる血清Ca,P濃度の増加機構を解明する目的で実験を行なった.ラットを3群に分け,第1群はPb-Ac 30mg/kg(0.51%水溶液)を静注,第2群はPb-Acとほぼ当量の酢酸基を含むsodium acetate(Na-Ac)16.5mg/kg(0.28%水溶液)を静注して対照群とし,経時的に採血(第1群:30秒~12時間,第2群:30秒~2時間)した.第3群については,Pb-Ac静注後の硬組織に対するPb沈着の組織化学的観察を行なった.その結果,Pb-Ac静注に続いて,血清Ca濃度は60分後に最高値(17mg%),P濃度は30分後に最高値(13.5mg%)を示し,60分以後はともに減少し始め,12時間後には正常値に回復した.一方,Na-Ac静注後には血清Ca,P濃度の有意の減少が起こり,両者ともに30分後には正常値に回復した.この現象は,Pb-Ac静注後の血清Ca,P濃度の変動とはまったく異なるものであり,理論的に,注射液の注入による一時的な血液の希釈に由来するものではないかと推定された.そこで,Pb-Ac群とNa-Ac群のそれぞれ対応した時間における血清Ca,P濃度をもとにして,Pb-Ac静注後の各時間帯における血清Ca,P濃度の実際の増加率を算出し,時間経過に伴うその変動を検した.その結果,血清Ca,P濃度の増加率は,Pb-Ac静注直後(0~30秒)に最高値となり,その後,時間経過とともに減少して行くことが示された.すなわち,この反応にはほとんど潜伏期を必要としないことから,副甲状腺や腎の機能を介した二次的反応ではないことが示唆された.また,Pb-Ac静注直後に,すでに骨表面に対するPb沈着を認めたが,この結果は,Pb-Ac静注に続く血中Ca,P濃度の増加現象が,Pbの骨に対するなんらかの直接作用の結果であることを示唆するものと考えられる.
  • 伊丹 孝文, 加納 晴三郎
    1977 年 73 巻 6 号 p. 683-690
    発行日: 1977年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    Aspirin(acetylsalicylic acid, ASA)およびsalicylic acid(SA)の解熱機構をより明らかにする目的で両薬物の可溶化を試み,それらのsodium塩(Na-ASA,Na-AS)を各種pyrogenで発熱せしめた家兎に静注あるいは大槽内投与して,その効果を比較検討し以下の成績を得た.1)0.35mmole/kgのNa-ASA(70mg/kg)またはNa-SA(56mg/kg)を1ipopolysac-charide(LPS,0.2μg/kg,i.v.)で発熱せしめた家兎に静注し,血漿中濃度を測定したところ,ASAの半減期は約7分であり,SAの初期の半減期は約0.7時間であった.2)0.69mmole/kgのNa-ASA(140mg/kg)またはNa-SA(111mg/kg)を正常家兎に静注しても体温に影響を与えなかった.3)Na-ASA(140mg/kg)を発熱家兎(LPS,0.2μg/kg,i.v.)に種々の時間で静注した時,解熱効果の最も著しい場合はLPS投与と同時および2時間後であり,他の場合(1,3時間目)ではその効果は弱かった.4)Na-SA(111mg/kg)を発熱家兎(LPS,0.2μg/kg,i.v.)に種々の時間で静注した時,解熱効果はNa-ASAに比べて弱く,わずかに1,2および3時間後投与に認められた.5)Na-ASAはleucocytic pyrogen(LP,1ml/kg,i.v.)による発熱に対して解熱効果が認められたがNa-SAには認められなかった.6)Na-ASAおよびNa-SAは2,4-dinitrophenol(DNP,20mg/kg,i.m.)による発熱に対しては抑制よりはむしろ増強効果が認められた.7)Na-ASAまたはNa-SAを大槽内に0.0035mmole/kg投与したとき,LPS(0.2μg/kg,i.v.)による発熱に対してNa-ASAのみ著しい効果が認められた.以上の結果からASAおよびSAの解熱機構は前者では主としてLPSの中枢での作用を阻害するものであり,後者では主としてLPの遊離または合成を阻害することに基因すると考えられた.
  • 山田 健二, 相澤 義雄
    1977 年 73 巻 6 号 p. 691-694
    発行日: 1977年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    ラットの腹部皮膚に火傷および2,4-dinitrochlorobenzene(DNCB)塗布により炎症を起させprostaglandin Fの動態を放射性同位元素希釈分析法を用いて測定した.またindo-methacinの効果および3H-arachidonic acidを用いた炎症部位におけるprostaglandin生合成能についても実験を行なった.火傷およびDNCB炎症とも起炎3時間以後12時間を最高にprostaglandin Fが増加していた.炎症部位に増加していたprostaglandinはindomethacinの投与によって正常値以下にまで減少した.前駆体であるarachidonic acidのprostaglandinへの取り込みは,炎症部位では増加せず逆に減少していた.このように炎症部位に増加するprostaglandinについては他からの経路が考えられる.
  • 小林 雅文, 若松 佳子, 篠原 正弘, 寺岡 康利, 越川 憲明, 野村 文男, 古内 武人, 高原 茂, 北原 郁夫, 芦刈 茂
    1977 年 73 巻 6 号 p. 695-701
    発行日: 1977年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    ラットのmethamphetamine-stereotypy(lickingとbiting)における脳dopamineの役割を追求する目的で,α-MPT前処置ラットについて実験を行ない,次の結果を得た.1)α-MPT(50mg/kg i.p.)投与3時間後にmethamphetamine(10mg/kg i.p.)を注射した場合には,lickingもbitingも全く出現しなかった.このときの脳dopamine量は,はじめから極めて低い値を示し,その後60分ではさらに低下した,2)α-MPTを7日間連用し,最終投与3時間後にmethamphetamineを注射した場合には,その60分後にlickingが見られたが,bitingは全く出現しなかった.そのときの脳dopamine量は,はじめから低い値を示し,その後急激に低下して60分に最も低くなった.3)α-MPTを7日間連用し,最終投与24時間後にmethamphetamineを注射した場合には,その30分後からlickingが出現し,60分,120分では全例に認められた.これは対照ラット(生理食塩液投与後methamphetamineを注射したもの)とほぼ同様であった.一方bitingは60分にわずかに認められたのみであった.このときの脳dopamine量は,5分でやや高まるが以後低下し,60分では最も低い値を示した.しかしこの度合は1),2)のα-MPT処置ラットほど著明ではなく,むしろ対照ラットの値に近かった.以上の結果,stereotyped behaviorが最もよく出現する時期(60分)では,それが認められた各群に共通して,同様の時期に脳dopamine levelの著しい低下が認められた.但しこれらの群はmethamphetamine投与時には一様にnormal levelであった.このことは,stereotyped behaviorの出現,持続と脳dopamineの充分な消費が密接に関連していることを示唆している.
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