日本薬理学雑誌
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7-Chloro-1-[2-(diethylamino)ethyl]-5-(o-fluorophenyl)-1, 3-dihydro-2H-1, 4-benzodiazepin-2-one hydrochloride (Flurazepam)の脳波学的研究
大森 健守渡辺 繁紀植木 昭和
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1977 年 73 巻 8 号 p. 939-954

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抄録

慢性電極植え込みウサギを用い,行動観察と同時に脳波を測定し,Hurazepamの脳波作用をdiazepamのそれと比較検討した.HurazepamO.5~5mg/kgの静脈内投与でウサギは鎮静状態を示し,これにともなって,脳波は全般的にdrowsy patternとなり,皮質,扁桃核では高電圧徐波,海馬ではθ波の脱同期化がおこった.この場合,とくに皮質において高電圧徐波の上に速波成分が重畳するのが特徴であった.音刺激および中脳網様体,後部視床下部,視床内側中心核電気刺激による脳波覚醒反応はflurazepamによって抑制された.これらの作用はdiazepamでも全く同様であった.Physostigmine投与によって惹起する脳波覚醒反応はflurazepamによって抑制されたが,diazcpamではほとんど変化しなかった.視床内側中心核刺激による漸増反応はflurazepamおよびdiazepamにより増強される傾向を示した.閃光刺激によって後頭葉皮質に誘発される電位(photic driving rcsponse)および視床後外腹側核刺激による増強反応はflurazepamによってごく軽度に抑制されたが,diazcpamではかかる変化は見られなかった.海馬,扁桃核の電気刺激による大脳辺縁系後発射はflurazepam,diazepamのいずれによっても抑制されたが,flurazcpamは扁桃核後発射を比較的小量で抑制した.後部視床下部あるいは中脳網様体刺激による昇圧反応はflurazepamおよびdiazepamによって抑制されたが,両薬物とも中脳網様体刺激による昇圧反応に比べ後部視床下部刺激による昇圧反応をより強く抑制した.以上,flurazepamの中枢作用は全般的には,質的にも,量的にもdiazepamの作用に類似しているが,2,3の点において異なる作用も有することが示唆された.

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