日本薬理学雑誌
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マウスのMethamphetanline群居毒性に対する中枢作用薬の効果
本間 健資
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1978 年 74 巻 1 号 p. 27-36

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抄録

マウスにmethamphetamine(MA)を40mg/kg i.p.投与して群居させると,1匹ずつ,隔離した時に比べて死亡率が大幅に上昇した.この死亡率は,同居する他のマウスがMAを投与されているか否かにより変化しなかった.マウスを1匹ずつ透明ケージに入れて並べても完全隔離マウスに比べて死亡率は高かった.群居マウスを収容するケ一ジの面積を大きくしても,死亡率はほとんど下がらなかった.Neurolepticsはいずれも少量でMA群居毒性に拮抗したが,clozapineは作用が弱く,sulpirideは無効であった.αおよびβ遮断薬のうちでphentolamineとpropranololが高い投与量で群居毒性に拮抗した.Reserpineとtetrabenazineの前処置は明らかに群居毒性に拮抗した.Tyrosine hydroxylase阻害薬であるH44/68は強力な拮抗作用を示したが,dopamine-β-hydroxylase阻害薬であるDDC,U-14,624,FLA63の拮抗作用はやや弱かった,MAを5mg/kg i.p.投与して群居させたマウスの死亡率は約3%であった.Reserpineの同時投与,clonidine,L-DOPA,MAO阻害薬であるtranylcypromine,atropine sulfate,methysergide,cyproheptadine,benzodiazepine系抗不安薬などは,MA5mg/kg i.p.投与時の群居毒性を増強した.Apomorphincは増強しなかった.MAを120mg/kg i.p.投与すると隔離マウスの死亡率は約90%であった.これに対しpropranololがわずかに抑制作用を示した他は,phentolaminc,chlorpromazine,haloperidolは大量投与でも全く抑制しなかった.以上の結果から,マウスはMAを投与された状態では他のマウスの存在を認識することが死亡率の上昇をもたらし,この現象には,catecholamine特にnorepinephrineの役割りが重要であるように思われる.Neurolepticsは,主に中枢におけるα遮断作用により群居毒性に拮抗する事が示唆された.

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