Proxyphylline,Melilotus extractおよびrutinを配伍するTheo-Esberivenおよびその配合成分の冠状循環動態および心筋代謝におよぼす作用をイヌ摘出および生体位心臓標本を用いて検討し,次の結果を得た.1)摘出心臓標本において,Theo-Esbcriven(0.1ml)は冠状動脈血流量(CBF)を著明に増加し,この時心拍数(HR)および心収縮力(MCF)の増大を伴ったが,心筋酸素消費量(QO
2)および心筋酸化還元電位(ΔEh)には有意の変化を与えなかった.Proxyphylline(12mg)によるCBF増加作用は,Theo-Esberivenの約60%であり,このときHR,MCFおよびQO
2は増大し,ΔEhは低下した.Esbcriven(0.1ml)はCBFを増加させたが,代謝系には抑制的に作用した.2)生体位心臓標本において,Theo-Esbcriven(0.0001~0.01ml/kg)およびproxyphylline(0.01~1.2mg/kg)の冠状動脈内投与は左冠状動脈回旋枝流量(LCCF)を用量に応じて増加させ,Esberivenは0.01ml/kgでのみLCCFを増加させた.Theo-Esbcriven(0.1ml/kg)の静脈内投与は灌流圧を下降し,同時にLCCFを増加させた.3)Theo-Esberiven(0.1m1/kg)およびproxyphylline(12mg/kg)の静脈内投与は血圧を著明に下降きせたが,脈圧には影響しなかった.また上行大動脈血流量および下大静脈血流量への影響はわずかであった.Esberiven(0.1ml/kg i.v.)は血圧および脈圧を著明に減少きせ,さらにHRおよびdP/dt
maxを減少させた.Rutin(2.5mg/kg i.v.)の作用は降圧と下大静脈血流量増大作用に限定され,Melilotus extract(5mg/kg i.v.)はこれらに影響を与えなかった.以上の点から,Theo-Esberivenは心筋酸素消費量を有意に増大させることなく,陽性変時変力作用を伴った著明な冠血流量増加作用を示すことが明白となり,虚血性心疾患への適用の有効性が裏付けられた.またTheo-Esberivcnのこれらの作用はEsberivenの配伍によって,proxyphyllineの冠血流量増加作用が増強され,心筋代謝元進作用が緩和された結果と思われる.
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