日本薬理学雑誌
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Benzodiazepine系薬物,Clonazepamのラット中枢dopamine代謝におよぼす影響について
中村 和雄下川 好子及川 由紀子中村 圭二
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1978 年 74 巻 2 号 p. 251-265

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抄録

Clonazepamの中枢作用機作検索のため,脳内dopaminc(DA)代謝を中心に検討し以下の成績を得た.1)中枢DA含有神経の多いラットの尾状核ならびに大脳皮質においてDAの主要代謝物である3,4-dihydroxyphenylacetic acid(DOPAC),homovanillic acid(HVA)量の著るしい減少と尾状核でのDA代謝率の抑制が認められた.2)norepinephrine代謝率の抑制が尾状核でのみ認められた.3)これらの変化とともにserotoninならびに5-hydroxyindle acetic acid量の減少が脳幹部でみられた.4)apomorphineによる常同行動(stereotyped behavior)ならびに自発運動量の充進を用量依存的に,またd-methamphetamineによる常同行動(stereotyped behavior)の充進をそれぞれ増強した.さらにreserp血e前処置時においてもapomorphine効果を充進した.5)このときapomorphine単独投与で認められた尾状核のHVA量ならびに大脳皮質のDOPAC,HVA量の減少はさらに低下し,d-methamphetamine単独投与による大脳皮質のDOPAC量の減少も増強された.6)in vitroでphosphodiesterase活性を阻害しない濃度では,尾状核ホモジネート中のDA-sensitive adenylate cyclase活性に影響を示さず,同時にin vivoにおいてもcyclic AMP量に変化を与えない.7)尾状核,大脳皮質ホモジネートでphosphodiesterase活性を抑制したが,in vivoにおける抑制は認められなかった.8)脳各部位のcholine acetyltransferase,acetylcholinesterase活性に対する作用は認められなかった.以上よりclonazepamには尾状核,大脳皮質DA作働性神経の受容器の活性元進が推定されるが,この機序にはadenylate cyclase,phosphodiesteraseの直接関与は少なく,おそらく線状体―黒質γ-amino butyric acid(GABA)作働性神経の活性上昇に起因するものと思われる.これらの結果は本薬物の中枢神経作用を解明する一助になると考えられる.

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