日本薬理学雑誌
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ラット摘出回腸における5-Hydroxytryptamineによる収縮および弛緩反応の機序について
古川 恭子
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1978 年 74 巻 4 号 p. 525-537

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抄録

ラット回腸平滑筋における5-hydroxytryptamine (5-HT) による収縮および弛緩反応の機序について研究し次の結果をえた. 1) 5-HTの濃度により1相性または2相性の収縮を示す. 6.25×10-7M以下の1相性の反応はmethysergide (MTG) により阻害され, 筋性受容体を介する事が示唆された. 1.25~25×10-6M以上の濃度ではphasic contraction (PC) とtonic contraction (TC) の2相性の反応となり, TCはMTGにより殆んど完全に阻害され筋性受容体を介する反応であり, 一方MTGで阻害されないPCはmorphine (MOR) で阻止され, physostigmine (PHYS) により増強される事から神経性受容体を介してのacetylcholine (ACh) による反応であると推定された.また後者の反応はmecamylamine (MC) により阻害されることから神経節に作用している事が明らかとなった. 2) MTGとhyoscine (HYO) の併用により筋性受容体およびムスカリン受容体を共に阻止した場合には, 5-HT 2.5×10-6または1×10-5Mにより弛緩反応が現われた.この弛緩はMCにより影響されず, tetrodotoxin (TTX) により阻害されることから神経末端への作用である事が示唆された. 6-hydroxydopamine (6-OHDA) 注射により内因性noradrenaline (NOR) の検出されなくなった回腸標本においても同様に弛緩反応のみられることから, 上記の濃度の5-HTによる弛緩はnon-adrenergic inhibitory neuronの神経末端に作用していることが明らかである. 3) MTG投与後, 低濃度の5-HT (6.25×10-7M以下) によつても弛緩反応がみられるが, この弛緩はTTXによる阻害が不完全なことから, 神経を介さない部分のあることが推察される.以上のことからラット回腸平滑筋における5-HTによる反応は, 筋性受容体を介する収縮が主体を占めるが, その他に, cholinergic neuronの神経節を介する収縮と, non-adrenergic inhibitory neuronの神経末端, および神経を介さない弛緩をその反応の中に含んでいることが明らかとなった.

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