日本薬理学雑誌
Online ISSN : 1347-8397
Print ISSN : 0015-5691
ISSN-L : 0015-5691
α-Mercaptopropionylglycine(α-MPG)およびSodium dipropylacetate(DPA)の抗体産生におよぼす影響(第4報)
―腫瘍免疫におよぼす影響―
森 裕志済木 育夫江田 昭英
著者情報
ジャーナル フリー

1978 年 74 巻 8 号 p. 907-923

詳細
抄録

α-Mercaptopropionylglycine(α-MPG)およびsodium dipropylacetate(DPA)の腫瘍に及ぼす影響を検討した.1)C57BL/6マウスにsyngeneicな腫瘍であるE.L4lymphosarcoma(E.L.4)を皮下移植すると,4週令マウスの雄性は雌性に比して腫瘍の増殖が速やかであった.これに対してα-MPGまたはDPAは雄性の腫瘍増殖を明らかに抑制し,生存期間を延長したが,雌性では逆に促進と短縮を示した.7および10週令となるにしたがい腫瘍増殖の性差はみられなくなり,両薬物の影響も減弱した.2)E.L.4をα-MPGまたはDPAの共存下で24時間incubationした場合,残存細胞率および生細胞率にはほとんど影響がみられなかった.また,これらの処理をしたE.L.4をマウスに移植した場合,α-MPG処理E.L.4ではα-MPGの用量に依存して腫瘍増殖の促進がみられ,高濃度のDPA処理E.L.4では抑制の傾向がみられた.3)20-methylcolanthreneをマウスに皮下注射し,両薬物の5~20mg/kgを隔日に連続投与した場合,低用量のα-MPGは雄性における腫瘍発生を抑制する傾向を示し,低用量のDPAは雌雄ともに抑制傾向を示した.4)E.L.4を移植した4週令雄性マウスの脾およびリンパ節細胞のphytohemagglutinin-P(PHA)による幼若化能は12および16日後に減弱し,その減弱は両薬物の投与により回復の傾向を示した.また,リンパ節細胞のlipopolysaccharide(LPS)による幼若化能は両薬物により増強した.血清中にもE.L.4に対する補体依存性の細胞障害性がみられ,9日後に最大値を示した.この細胞障害性はα-MPGによってさらに増強した.また,脾細胞のE.L.4に対する細胞障害性の減弱は両薬物によって回復し,リンパ節細胞のそれは12および16日後に回復した.

著者関連情報
© 社団法人 日本薬理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top