抄録
SL-573(1-cyclopropylmethy1-4-phenyl-6-methoxy-2(1H)-quinazolinone)の解熱作用に関する新たな知見を紹介した.本剤の解熱作用は発熱動物の生後週令,性差に関係なく発揮され,それらの条件のいずれかで効力が弱いということはなかった.本剤の臨床使用時に併用の可能性のある化合物を中心として,それら他剤併用時のSL-573の解熱効果の検討を行なった.単独でも解熱効果のみられたdiazepam(minor tranquilizer)併用時に相加的な解熱効力の増強がみられた以外には,抗生物質,鎮咳剤,利尿剤,major tranqunizerの併用は本剤の解熱効力に有意な影響を与えなかった.本剤はyeast発熱マウスでも明確な解熱作用を示した.また,本剤はbacterial endotoxinおよびleucocytic pyrogenの発熱を抑制し,DNPの発熱は抑制しなかった.SL-573は末梢血自血球のendotoxinによる活性化の過程ならびにその後の生理食塩水中でのleucocytic pyrogenの遊離の過程に作用を示さず末梢白血球からのleucocytic pyrogenの放出には影響を及ぼさないものと考えられた.SL-573はprostaglandin E2(PGE2)脳室内投与時の発熱には抑制効果を示さず,その前駆物質であるarachidonic acid投与時の発熱を有意に抑制した.本剤はaracidnic acidからのPG生合成を抑制する性質を有することが知られており,このPG生合成阻害作用がSL-573の解熱作用の作用機序の1つとなり得る可能性が強く示唆された.