日本重症心身障害学会誌
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Print ISSN : 1343-1439
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O-1-A-11 子どもに在宅人工呼吸療法が必要だと言われたときの家族の思いと背景から見えてくるもの
和山 加奈子高舘 美穂子
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2013 年 38 巻 2 号 p. 253

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抄録
目的 在宅人工呼吸療法(以下、NPPV)が必要と言われたときの家族の思いとその背景を明らかにし、家族の思いに配慮した支援とは何かの示唆を得る。 対象 A病院でNPPVの指導を受けた家族3例で子どもの年齢・性別に限定はしない。 期間 2012.10〜2012.11 方法 半構造的インタビューを行い、録音したインタビュー内容を文字化、コード化し、類似項目からカテゴリーを抽出し内容を分析した。 本研究はA病院の倫理審査委員会の承認を得て実施した。 結果 【生きていてほしい】【人工呼吸器をつけるまでの葛藤】【人工呼吸器が必要であると認める】【支えが欲しいという家族の要望】の4つのカテゴリーと9つのサブカテゴリーが生成された。対象3例に共通して、気管切開を勧められたが拒否していたという事実がわかった。 考察 子どもの身体的変化が起こったときに家族は≪体調が悪化することによって子どもが死んでしまうのではないかという不安≫が強かった。同時に気管切開を勧められていたが、「声を失いたくない」「体に傷はつけない」という家族の意向に沿った≪気管切開をしなくてもいい人工呼吸器があったことの喜び≫があった。一方で≪人工呼吸器を導入することで介護負担が増えることへの不安≫もあり、気持ちの整理がつかない状態であったと考えられる。家族は、「子どもが死んでしまうのでは」という恐怖を感じながら子どもに代わって意思決定する状況になるたびに≪子どもの考えを理解してあげることができていないという自信の無さと判断に迷う苦しさ≫が強くなっていったと考えられる。 これまで、NPPV導入のために必要な介護方法に重きが置かれた支援を行ってきた。しかし、家族にとってはそれと同等以上に不安や苦しみの理解を医療者に求めていたことがわかった。家族が抱えている不安や苦しみの背景に目を向け、家族が相談しやすい環境を整えていく取り組みが、より必要であると考える。
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© 2013 日本重症心身障害学会
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