日本薬理学雑誌
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脳幹圧迫によるネコの行動および脳波変化ならびにそれに及ぼすThyrotropin-releasing hormone(TRH)の影響
福田 尚久佐治 美昭名川 雄児
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1979 年 75 巻 4 号 p. 321-331

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抄録

慢性ネコにおける脳幹圧迫による行動および脳波変化ならびにそれに対するthyrotropin-releasing hormone(TRH)の効果について検討した.脳幹圧迫は大槽を経て第4脳室内に挿入し,脳幹背面上に埋め込んだballoonを1~6分間膨脹させることにより行なった.脳幹圧迫開始10~36秒内にネコは横転し,四肢の痙性伸展位で不動状態となり,その後一部の例では軽度の前肢運動または頭部挙上などが途中において見られたが,全例45~120分後にようやく正常位に復した.大脳皮質脳波は圧迫開始初期の短時間の低振巾速波(脳波覚醒)につづき平坦波および棘波パターンとなり,その後直接あるいは脳波覚醒を経て高振巾徐波に移行した.これら脳幹圧迫による行動および脳波変化はTRHの静注により次の如く著明に改善された.すなわち,1mg/kg投与の12例中8例および0.5mg/kg投与の4例中1例は直ちに腹臥位または静踞位に復し,その後再度横転することはなかった.また,1mg/kg投与の3例および0.5mg/kg投与の2例において横転位のまま前肢の運動,struggling,頭部挙上あるいはrolling,軽度の位置移動の如き部分的回復が投与数分内に見られた.脳波は全例において用量依存的に持続的な覚醒波を惹起した.これらの結果は脳幹圧迫による意識障害様の行動および脳波の悪化状態に対してTRHが改善効果を有することを示す.

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