マウス,ラットおよびモルモットに各種spasmogensを皮下投与し,腸管運動の亢進作用を瀉下効果を指標として検討した.Spasmogensによる瀉下作用はマウスが最も鋭敏で,次いでラットが僅かに弱く,モルモットでは瀉下作用が現われにくかった.これは薬物の作用持続時間,代謝速度ならびに腸管の長さなどによるが,一部は種属差による感受性の違いもあるように思われた.Cholinesterase inhibitorsを含めてcholinergic drugsは基本的にはいずれも腸管運動を亢進して瀉下作用を呈することが認められたが,従来からいわれているようにこれらの薬物には臓器に対する作用選択性があり,また代謝の問題などから瀉下効果は薬物個々によって異なっていた.すなわちAGhおよびphysostigmineは致死量でも瀉下効果は弱かったが,bethanechol,pilocarpineならびにneostigmineは顕著な瀉下効果を示し,腸管麻痺治療薬としての臨床的有用性が実験的に認められた.平滑筋に直接作用して腸管を収縮させるautacoidsでは,histamineおよびbradykininに瀉下作用はほとんど認められなかった.他方5-hydroxytryptamineおよびprostaglandin E
2には顕著な瀉下効果が認められた.5-HTには直接作用の他にserotonergicな神経機構を介して,cholinergicな効果を呈するし,PG-E
2は直接作用の他にcyclic AMPを増大させる作用があり,これらの総合作用から著明な瀉下効果を呈したものと思われる.特にPG-E
2は各種spasmogensによる瀉下効果と比較して何ら遜色なく,腸管麻痺の治療薬としての有用性が示唆された.BaCl
2も明らかな瀉下効果を呈し,腸管運動亢進作用のあることが認められた.5-HTの前駆物質である5-HTPは,マウスで5-HTと有意差のない瀉下効果を呈し,生体内で容易に5-HTに変換されるものと思われたが,ラットでは5-HTPの作用が弱く,5-HTに代謝されにくいように思われた.
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