日本薬理学雑誌
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75 巻, 4 号
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  • 鶴見 介登, 早野 さつき, 長谷川 順一, 藤村 一
    1979 年 75 巻 4 号 p. 309-314
    発行日: 1979年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    マウス,ラットおよびモルモットに各種spasmogensを皮下投与し,腸管運動の亢進作用を瀉下効果を指標として検討した.Spasmogensによる瀉下作用はマウスが最も鋭敏で,次いでラットが僅かに弱く,モルモットでは瀉下作用が現われにくかった.これは薬物の作用持続時間,代謝速度ならびに腸管の長さなどによるが,一部は種属差による感受性の違いもあるように思われた.Cholinesterase inhibitorsを含めてcholinergic drugsは基本的にはいずれも腸管運動を亢進して瀉下作用を呈することが認められたが,従来からいわれているようにこれらの薬物には臓器に対する作用選択性があり,また代謝の問題などから瀉下効果は薬物個々によって異なっていた.すなわちAGhおよびphysostigmineは致死量でも瀉下効果は弱かったが,bethanechol,pilocarpineならびにneostigmineは顕著な瀉下効果を示し,腸管麻痺治療薬としての臨床的有用性が実験的に認められた.平滑筋に直接作用して腸管を収縮させるautacoidsでは,histamineおよびbradykininに瀉下作用はほとんど認められなかった.他方5-hydroxytryptamineおよびprostaglandin E2には顕著な瀉下効果が認められた.5-HTには直接作用の他にserotonergicな神経機構を介して,cholinergicな効果を呈するし,PG-E2は直接作用の他にcyclic AMPを増大させる作用があり,これらの総合作用から著明な瀉下効果を呈したものと思われる.特にPG-E2は各種spasmogensによる瀉下効果と比較して何ら遜色なく,腸管麻痺の治療薬としての有用性が示唆された.BaCl2も明らかな瀉下効果を呈し,腸管運動亢進作用のあることが認められた.5-HTの前駆物質である5-HTPは,マウスで5-HTと有意差のない瀉下効果を呈し,生体内で容易に5-HTに変換されるものと思われたが,ラットでは5-HTPの作用が弱く,5-HTに代謝されにくいように思われた.
  • 福田 英臣, 工藤 佳久, 竹内 エリ子
    1979 年 75 巻 4 号 p. 315-319
    発行日: 1979年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    麻酔ラットのγ-運動系に対する4種のbenzodiazepine誘導体の作用様式を比較検討した.Diazepamおよび5-(o-chlorophenyl)-1-methyl-7-nitro-1,3-dihydro-2H-1,4-benzodiazepin 2-one(ID-690)は2.5mg/kg(i.p.)以上でγ-活動を抑制し5.0mg/kg(i.p.)ではその抑制効果は60分以上持続した.Nitrazepamの作用はやや弱かったが,5.0mg/kg(i.p.)以上の投与で明らかなγ-活動の抑制が見られ,10mg/kg(i.p.)投与時には90~120分間抑制が持続した.一方,clonazepamの作用は弱く,γ-活動抑制が発現するには20mg/kg(i.p.)を要し,しかも作用発現までに約20分を要した.耳介刺激により亢進したγ-活動に対しても,ID-690は5mg/kg(i.p.)で明らかな抑制作用を示した.Diazepamはやや弱かったが,同用量で抑制した.これらに比して,nitrazepamとclonazepamの作用は弱く,抑制作用が発現するにはさらに高用量を必要とした.以上のように,benzodiazepine誘導体のγ-運動系抑制の性質には明らかな差が見られ,この差異がこれら薬物の薬理学的性質を特徴づける要因となっている可能性が大きいものと思われる.
  • 福田 尚久, 佐治 美昭, 名川 雄児
    1979 年 75 巻 4 号 p. 321-331
    発行日: 1979年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    慢性ネコにおける脳幹圧迫による行動および脳波変化ならびにそれに対するthyrotropin-releasing hormone(TRH)の効果について検討した.脳幹圧迫は大槽を経て第4脳室内に挿入し,脳幹背面上に埋め込んだballoonを1~6分間膨脹させることにより行なった.脳幹圧迫開始10~36秒内にネコは横転し,四肢の痙性伸展位で不動状態となり,その後一部の例では軽度の前肢運動または頭部挙上などが途中において見られたが,全例45~120分後にようやく正常位に復した.大脳皮質脳波は圧迫開始初期の短時間の低振巾速波(脳波覚醒)につづき平坦波および棘波パターンとなり,その後直接あるいは脳波覚醒を経て高振巾徐波に移行した.これら脳幹圧迫による行動および脳波変化はTRHの静注により次の如く著明に改善された.すなわち,1mg/kg投与の12例中8例および0.5mg/kg投与の4例中1例は直ちに腹臥位または静踞位に復し,その後再度横転することはなかった.また,1mg/kg投与の3例および0.5mg/kg投与の2例において横転位のまま前肢の運動,struggling,頭部挙上あるいはrolling,軽度の位置移動の如き部分的回復が投与数分内に見られた.脳波は全例において用量依存的に持続的な覚醒波を惹起した.これらの結果は脳幹圧迫による意識障害様の行動および脳波の悪化状態に対してTRHが改善効果を有することを示す.
  • 第二報末梢作用について
    橋本 虎六, 新谷 成之, 山下 修司, 鄭 正聰, 高井 正明, 筒井 正博, 河村 公太郎, 大川 直士, 桧山 隆司, 薮内 洋一
    1979 年 75 巻 4 号 p. 333-364
    発行日: 1979年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    選択性の高い新β2アドレナリン作働薬procaterol(PRO)の末梢臓器に対する一般薬理作用をsalbutamol(SAL)およびisoproterenol(ISP)と比較検討した.脊髄反射,上頸神経節伝達およびreserpine眼瞼下垂に影響を及ぼさないが,前脛骨筋では神経筋伝達をわずかながら亢進させた.Tolazoline投与によって収縮させた瞬膜を用量依存的に弛緩した(PROはISOの7倍,SALの25倍の強さであった).摘出腸管,摘出非妊娠および妊娠子宮筋,生体内胃,腸,子宮に対して運動抑制であり,その抑制は子宮についてはPROはISOおよびSALより強いが,腸ではISOより弱く,SALよりわずかに強い.腸管炭末輸送能は抑制であり,皮下投与でPROはISOよりはるかに弱かった.胃液(胃酸),胆汁および膵液分泌に対して,前者に対して有意の抑制を示すが後者には有意の作用を認めなかった.総頸,大腿,腎動脈の血管抵抗はいずれも減少するが,PROの作用はISOとSALの中間にあったが腎動脈についてはPROおよびSALの作用はISOのそれよりはるかに弱かった.心拍数,呼吸に対して促進的であったが,PRO 1mg/kg i.v. でも不整脈を起こさなかった.頸動脈閉塞による昇圧反応を抑制し,PROの作用はISOとSALの中聞であった.無麻酔動物での心拍数増加はイヌで経口投与のPROはISOの190倍,SALの3倍,ラットでPROおよびSALの皮下投与はISOの1/9,経口投与で1/2であった.作用持続はISOより著明に長かった.尿量,GFR,RPF,自由水ならびに浸透圧クリアランス,電解質排泄等の腎機能は血圧下降に伴って低下したがPROの作用はISOとSALの中間であった.血液凝固(第II,第V,第VIII因子,凝固時間,血小板数,活性化部分thromboplastin時間,prothrombin時間測定)および溶血に影響を与えず,局所麻酔作用なく,carrageenin浮腫および酢酸による血管透過性亢進に対して抑制的であった.抗ノルアドレナリン,抗アドレナリン(輸精管あるいは精嚢収縮),抗アセチルコリン(回腸収縮)作用を認めなかった.
  • ―Thiamine欠乏ラットの肝における生化学的および形態学的変化―
    小口 江美子, 岡崎 雅子, 安原 一, 坂本 浩二
    1979 年 75 巻 4 号 p. 365-381
    発行日: 1979年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    Thiamine(T)欠乏状態の病態薬理学的研究の一環として,T拮抗物質であるOxythiamine(OT),Pyrithiamine(PT)を用いて実験した.OTあるいはPTによって比較的短期間内に発現するT欠乏状態と,T-deficient diet(TDD)によるT欠乏状態のラットを作成し,その肝機能および形態への影響を比較検討した.1)一般症状観察では,TDD飼育時OT投与群(OTD群)での体重減少が著しく,一部は正向反射消失,死に至った.他のT欠乏群でも軽度の体重減少がみられたが神経症状を認めるには至らなかった.2)肝機能検査では,各T欠乏群に共通した所見として,血清総蛋白量の減少,A/Gの軽度の減少,血清総cholesterol量の増加,血清transaminase活性の上昇,肝臓諸種脂質量の減少等がみられた.これらの傾向は,OTD群に特に著明であり,次いでTDD飼育時PT投与群(PTD群),TDD群,OT群であったが,血清総蛋白量の減少とalkaline phosphatase活性の増加はPT群,OT群に著明であった.3)光顕的所見では,OT.PT処理群に細胞萎縮傾向を認め,しばしば肝細胞索の解離を伴った.一部には,二核細胞の増加,細胞浸潤がみられ,壊死に至るものもあった.4)微細構造では,Kupffer cellやmicrovilliの発達,粗面小胞体(rER)の減少,ribosomeの脱落,滑面小胞体(sER)の増加が,T欠乏群全般にみられ,しばしばGolgi apparatusの発達,lysosomeや脂肪滴の増加を伴った.特に,細胞障害の著明なOTD群では,核内heterochromatin増加,核小体の減少やmitochondriaの膨化,減少等が認められた.以上から,TDD飼育時T拮抗物質投与によるT欠乏群では,短期間内で比較的強度のT欠乏状態を示し,OTD群の肝機能障害は,生化学および形態両面から最も著明であることを認めた.しかし体重滅少等の一般症状から,OTによる栄養障害が肝に及ぼす影響も無視できず,OTとPTの薬物としての作用の差異が示唆された.
  • 秋葉 一美, 宮本 篤, 鈴木 智晴, 姉崎 健, 只野 武, 桜田 忍, 木皿 憲佐
    1979 年 75 巻 4 号 p. 383-390
    発行日: 1979年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    気管支平滑筋,呼吸抵抗量および血圧に対するd-pscudoephedrine(d-pseudo)の作用を1-ephedrine(1-eph)のそれと比較検討した.1)モルモット摘出気管平滑筋のhistamine(His)あるいはacetylcholine(ACh)収縮に対するd-pseudoの弛緩作用はdl-isoproterenolより弱かったが,1-ephと同程度であった.2)AChあるいはHis収縮に対するd-pseudoの弛緩作用はpropranolol前処理により抑制された.3)Hisによって上昇した呼吸抵抗量はd-pseudo静脈内投与によって抑制され,その効力は1-ephとほぼ同程度であった.また,舌下投与時にも静脈内投与時と同程度の効力が認められた.4)d-pseudoおよび1-ephはイヌにおいて血圧上昇作用を示すが,その強度は1-ephの方が強かった.5)d-pseudoおよび1-ephはイヌにおける血圧反応に対してタキフィラキシーを示した.以上マオウ中の主アルカロイドであるd-pseudoは1-ephとほぼ同程度の気管支拡張作用を有する有効成分と考えられる.
  • 姉崎 健, 安藤 隆一郎, 桜田 司, 只野 武, 桜田 忍, 木皿 憲佐
    1979 年 75 巻 4 号 p. 391-397
    発行日: 1979年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    Lateral hypothalamus(LH)刺激によって誘発された行動,basal medial amygdaloid nucleus(Abm)およびLH単一ニューロン活動におよぼすdiazepamの影響を検討し次の成績が得られた.1)LH刺激によりネコにwhine反応が認められ,diazepamはこの反応を起こす反応閾値を上昇させた.2)Abmより6個のニューロンを単離したが,ニューロンの自発発射頻度は5~30spikes/secで単離したニューロンすべてが,非侵害刺激およびclapによって発火頻度の増加をみた.3)単離したすべてのAbmニューロンの自発発火頻度はdiazepamによって減少し,同時に非侵害刺激およびclapによる発射頻度の増加はすべて抑制された.4)LHより6個のニューロンを単離したがニューロンの自発発射頻度は1~5spikes/secで,単離したすべてのニューロンが非侵害刺激によって発火頻度は増加した.しかしclapによっては6例中1例に発火頻度の増加をみた.5)単離したすべてのLHニューロンの自発発射頻度はdazepamによって抑制された.単離したニューロン6例中3例において非侵害刺激による反応がdiazepamによって抑制されたが,他の3例においては全く変化は認められなかった.
  • 金田 秀夫, 鯨 健市, 重永 敏明, 板谷 公和
    1979 年 75 巻 4 号 p. 399-403
    発行日: 1979年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    γ-oryzanolのラット脳および胃norepinephrine(NE)含量,ならびに脳内NEの代謝回転におよぼす影響について検討した.γ-oryzanol 100mg/kg,1日1回5日間,または10日間連日皮下投与により,脳内NE含量は軽度ながら有意に増加したが,胃NE含量には影響が認められなかった.10mg/kg,10日間投与も同様の脳NE増量を来した.また,脳内NEの代謝回転は,γ-oryzanol投与により軽度に抑制された.これらの結果より,γ-oryzanolの連日投与は脳内NEの分解,または放出を抑制することによりNE量を増加させるものと考えられる.
  • 中村 秀雄, 石井 勝美, 元吉 悟, 今津 千恵子, 横山 雄一, 清水 当尚
    1979 年 75 巻 4 号 p. 405-417
    発行日: 1979年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    Tolmetin sodiumの鎮痛作用の特徴を明らかにする目的で諸種の侵害刺激により誘発される疼痛様反応に対する影響を検討した.酢酸誘発writhing法によるtolmetin sodiumのED50値は,マウスおよびラットで,それぞれ23.4と3.01mg/kg,p.o.であり,その効力は,ibuprofenおよびAspirinの約2.4~10.3倍であり,indomethacinの約0.36倍であった.イヌにおけるbradykinin脾動脈内注入法によるtolmetin sodiumのED50値は,80mg/kg,i.v.であり,その効力はsulpyrineとほぼ同等であった.ラットkaolin-carrageenin惹起炎症足およびadjuvant惹起炎症足の圧刺激により誘発される疼痛様反応に対して,tolmetin sodiumはそれぞれ,30~100および20~40mg/kg,p.o.で有意な抑制作用を示し,その効力は,Aspirinより優れ,ibuprofenおよびphenylbutazoneとほぼ同等,indomethacinの約0.1~0.03倍であった.イヌ歯髄電気刺激法において,tolmetin sodiumは,100mg/kg,i.v.で有意な閾値上昇作用を示したが,マウスにおける圧刺激法および熱刺激法では,他の非ステロイド性鎮痛・抗炎症剤と同様に無効であった.Tolmetin sodiumは,sulpyrineと同様に,bradykininのイヌ脾動脈内注入により誘発される血圧上昇反応を部分的に抑制したが,bradykininとPGE1との同時注入による昇圧反応に対しては殆ど抑制作用を示さなかった.Pentazocineは両反応をほぼ同程度に抑制した.マウスphenylquinone writhing法によるtolmetin sodiumの抗writhing作用は,大量のnaloxoneにより拮抗されなかった.以上の結果から,tolmetin sodiumは,化学的侵害刺激により誘発される疼痛様反応および炎症組織に加えられた圧刺激により誘発される疼痛様反応に対して強い抑制作用を示し,特にその抗writhing作用が優れると考えられ,その鎮痛作用は主として末梢性であると推察された.さらに,その鎮痛作用は,抗炎症および解熱作用に比べて相対的に強いことから,tolmetin sodiumは,優れた鎮痛作用に特徴を有する鎮痛・抗炎症剤であると考えられる.
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