日本薬理学雑誌
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Guanfacineの心臓・冠循環・心筋エネルギー代謝に対する作用について
片野 由美大鳥居 健仲川 義人嶋本 典夫酒井 賢今井 昭一
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1980 年 76 巻 5 号 p. 281-292

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抄録

新しく開発されたguanfacine(G)の心臓,冠循環,心筋エネルギー代謝に対する作用をclonidine(C)の作用と比較検討した.モルモット左心房標本では両薬物とも10-8~3×10-5g/mlで収縮張力を増大せしめ,これらの作用は,tripelennamine(T),metiamide(M)およびPropranolol(Prop)によって抑制された.一方10-8~10-6g/mlによる収縮張力増加作用はphentolamine(Phentol)によっても抑制された.右心房標本の拍動数に対しては両薬物とも10-8~3×10-6g/mlまで殆んど作用がなかったが,それ以上の濃度でGでは拍動数減少,Cでは増加が認められた.Gによる減少はいずれのblockerによっても殆んど影響されなかったが,Cによる増加はMによって著明に抑制された.右心房の収縮張力に対しては両薬物ともこれを増大せしめたが,Gの場合3×10-5g/ml以上の濃度では減少を起した.Gによる陽性変力作用はpropおよびTによって抑制され,Mによってもかなり抑制された.一方CのそれはTでもかなり抑制されたが,Mによって著明に抑制された.イヌ心肺標本ではG(100μg,1mg)およびC(30,100μg)で冠血流量の減少(Gの作用はCの約1/2~1/3)と右心房圧の上昇が認められ,それらの作用はPhentolにより抑制された.心拍数および心筋収縮力に対しGは殆んど影響を及ぼさなかったが,Cはそれらを僅かに抑制した.心筋酸素消費は何れの場合も僅かに減少し,心筋酸化還元電位は陽性化の傾向を示した.これを要約するとモルモット摘出心房標本に於てやや高濃度のGでみとめられる陽性変力作用にはヒスタミン受容体(右心房では,H1,左心房ではH1およびH2)とアドレナリン作働性β受容体が関与(左心房で10-6g/mlまでの作用にはα受容体も関与)すること,さらに高濃度(10-5g/ml以上)では心筋直接作用による陰性変時作用が現われる事になる.一方イヌ心肺標本では主としてα受容体を介する冠血管と肺動脈の収縮,心筋酸化還元電位の陽性化が認められ,心筋酸素消費量も僅かに減少した.

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