日本薬理学雑誌
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3-(3, 4, 5-Trimethoxybenzamido) piperidine (KU-54)の胃粘膜血流量におよぼす影響
阿部 泰夫入倉 勉百々 研次郎都留 清志
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1980 年 76 巻 5 号 p. 355-361

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抄録

urethane麻酔ウサギおよびpentobarbital麻酔犬の胃粘膜血流量に対する3-(3,4,5-trimethoxybenzamido)piperidine(KU-54)の影響を交叉熱電対を用いて検討した.ウサギでは胃体部血流量がKU-545mg/kg(i.v.)投与1分後で増加のピーク(11.9%)に達し,消退まで約8分間持続したが,血圧は一過性に約20%の低下を示した.KU-54によって胃粘膜血流量増加と血圧低下が同時に起ったことからβ作用が疑われたが,これらの変化はβ-blocker(propranolol)で抑制されなかった.gefarnateの作用はKU-54より弱いものであり,sulpirideは粘膜血流量を増加そして正常値以下の減少,再増加という2峰性のパターンを示し,KU-54の胃粘膜血流量増加パターンとは明らかに相異した.ウサギの胃幽門境界部ではKU-54 5mg/kg(i.v.)による粘膜血流量増加のピークが投与4.5分後にみられ,胃体部より持続性(3.5分)がみられた.gefarnate 1.25mg/kg(i.v.)でも持続性がみられ,KU-54の場合と類似したがsulpiride 1.25mg/kg(i.v.)では胃体部よりむしろ,血流量減少期間が持続し,KU-54と反対の反応を示した.絶食ウサギではKU-54による胃粘膜血流量増加の主区間が非絶食ウサギの場合より持続した.イヌではKU-54 5mg/kg(i.v.)投与7分後に粘膜血流量増加のピーク(16%)が認められ,6分間持続したが,粘膜血流量増加の発現時間はウサギの場合より約6分おくれた.sulpirideはウサギの場合と異り粘膜血流量増加のピーク時間が投与1分後にみられ,血流量増加は4分間持続した.sulpirideとKU-54のピーク時間との間に約6分間の差が認められ,KU-54はsulpirideの作用様式と異ることを示唆した.

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