日本薬理学雑誌
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ラットにおける Guanfacine の降圧作用について
仲川 義人武田 敬介橋本 豊三桜井 浩三富 明夫今井 昭一浜村 みつ子熊田 衛
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1981 年 77 巻 3 号 p. 295-312

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抄録

降圧薬として新しく開発された guanfacine の降圧作用について正常血圧ラットおよび3種の高血圧モデルラット(高血圧自然発症ラット(SHR),DOCA 高血圧ラット,腎性高血圧ラット(RHR))を用い無麻酔下での降圧作用および心拍数に対する作用について検討した.また,正常血圧ラットを用い麻酔下に降圧作用,心拍数,呼吸数に対する作用および腎交感神経活動に対する作用につき検討を加えた.最後に pithed rat における作用についても検討した,何れの場合も中枢性の降圧薬である clonidine の作用と比較検討した.無麻酔下では薬物は全て経口投与し,用量は殆んどの標本で guanfacine 5mg/kg,clonidine 0.5mg/kg を用いた.両薬物とも投与後の作用発現は早く,SHR 以外では血圧は明確な二相性の反応を示して上昇(30分でピークに達する)後徐々に下降し,持続性の降圧に移行した.正常血圧ラットでは guanfacine(5mg/kg),clonidine(0.5mg/kg)はほぼ同程度の降圧効果を示したが,DOCA 高血圧ラットおよび腎性高血圧ラットでは guanfacine の方が clonidine に比し降圧作用が強く,持続的であった.一方 SHR では昇圧作用は殆んど認められず,降圧作用は,clonidine(0.5mg/kg)の方が guanfacine(5mg/kg)よりも強い傾向を示した.心拍数はいずれの薬物でも減少した.心拍数減少は血圧上昇に対する反射によると考えられるが,血圧下降時にも心拍数は減少していた.麻酔下での実験では guanfacine 100μg/kg,clonidine 10μg/kg の静注により,いずれも血圧は上昇ののち下降(持続性)という二相性の反応を示した。この血圧上昇は phentolamine により抑制され,レセルピン前処置により増強きれたことから,末梢のα受容体に対する直接作用によるものと考えられる.降圧作用および心拍数抑制作用は guanfacine では用量依存的に認められたが,clonidine の場合 10μg/kg 以上では降圧作用,心拍数減少作用ともに減弱傾向を示した.降圧作用は pithed ラットでは認められないこと,降圧時腎交感神経活動の低下がみとめられること,大槽内投与による降圧作用は静脈内投与によるそれよりも低用量で認められることなどから,中枢のα受容体に対する作用によるものと考えられる.なお guanfacine の作用は clonidine の約1/10の強さであった.

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