日本薬理学雑誌
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4'-Ethy1-2-methy1-3-piperidinopropiophenone の実験的固縮および脊髄に対する作用
田中 和夫金子 武稔山津 清実
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1981 年 77 巻 5 号 p. 511-520

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抄録
新規抗痙縮剤 4'-ethyl-2-methyl-3-piperidinopropiophenone hydrochloride(EMPP)の実験的固縮および脊髄に対する影響を検討した.EMPP はラットの Sherrington 型除脳固縮を 1.25mg/kg i.v. で約50%抑制し,投与量を増量するとともに抑制作用は顕著となり,その効力は tolperisone の約2倍であった.また,ラットの虚血性除脳固縮を EMPP は2.5~10mg/kg i.v. で抑制した.麻酔ネコにおいて,EMPP は 2.5mg/kg i.v. 以上で膝蓋腱反射にはほとんど影響を与えず,屈曲反射を用量に依存して抑制した.また,EMPP は10mg/kg i.v. で屈曲反射を約80%抑制し,その作用は約2時間持続した,脊髄ネコにおいても,EMPP 2.5~10mg/kg i.v. は屈曲反射を抑制したが,その抑制効力は麻酔ネコの場合に比し減弱した.EMPP の経口投与では,100~200mg/kg で選択的に屈曲反射を抑制し,この効力は tolperisone や chlormezanone に比し用量的に約2倍強力であった.一方,脊髄ネコにおける脊髄反射電位に対しては,EMP Pは 2.5~10mg/kg i.v. の用量で単シナプス反射,多シナプス反射ならびに後根反射電位をそれぞれ同程度に抑制した.また,この投与用量の範囲で EMPP は脊髄ネコの運動ニューロン自発性発射を抑制したが,筋紡錘からの GIa 発射に対してはほとんど影響を与えなかった.以上のように,EMPP は強力な脊髄反射活動抑制作用を有し,その主作用部位は脊髄であるが,上位中枢も考慮する必要がある.
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