hemoglobin が種々の薬物と相互作用することが吸収スペクトルの変化から認められた.methemoglobin(metHb)の薬物差スペクトルについては,methanol と ethanol との添加は 403nm に peak,420nmに trough を示したが,他の多くの薬物は 402~403nm に trough,420~430nm に peak を持つ差スペクトルを誘導した.oxyhemoglobin(HbO
2)の薬物差スペクトルは,400~403nm に peak,420nm に trough を持つ場合が多かった.steroid hormones,amino acids などは,metHb および HbO
2 の両者についてそれぞれ独特の差スペクトルを示した.つづいて薬物の内服が hemoglobin の P
50 におよぼす影響を検討した.朝食直後に採血し薬剤を服用,1時間後に再度採血して,全血を用いて測定した.P
50 の前後差は,対照群(健康成人20名,薬剤服用なし)では -0.5~+0.5mmHg であり,外来患者(13名)も1例を除いてその範囲内にあったが,入院患者の場合は33例中9例がその範囲以上,5例が以下であった.薬剤服用の前後で metHb,赤血球内2,3-DPG,ΔpH(全血と赤血球内の pH 差)の変動はほとんど認められなかったため,薬剤服用後の P
50 変動は,薬物と hemoglobin の相互作用が原因の一つであると考えられた.そこで P
50 に変動を示した入院患者の服用薬物のいくつかについて精製 hemoglobin を用いて,その P
50 に与える影響を in vitro で検討した結果,mcclofenoxate hydrochloride,PAS-Na,IHMSに P
50 増加作用が認められた.以上より,P
50 の測定は不適当な薬物投与を見いだすためのスクリーニングとしての意味を持つと考えられる.
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