日本薬理学雑誌
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77 巻, 5 号
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  • 和田 文雄, 小野 彪, 池田 千恵子
    1981 年 77 巻 5 号 p. 447-458
    発行日: 1981年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
    hemoglobin が種々の薬物と相互作用することが吸収スペクトルの変化から認められた.methemoglobin(metHb)の薬物差スペクトルについては,methanol と ethanol との添加は 403nm に peak,420nmに trough を示したが,他の多くの薬物は 402~403nm に trough,420~430nm に peak を持つ差スペクトルを誘導した.oxyhemoglobin(HbO2)の薬物差スペクトルは,400~403nm に peak,420nm に trough を持つ場合が多かった.steroid hormones,amino acids などは,metHb および HbO2 の両者についてそれぞれ独特の差スペクトルを示した.つづいて薬物の内服が hemoglobin の P50 におよぼす影響を検討した.朝食直後に採血し薬剤を服用,1時間後に再度採血して,全血を用いて測定した.P50 の前後差は,対照群(健康成人20名,薬剤服用なし)では -0.5~+0.5mmHg であり,外来患者(13名)も1例を除いてその範囲内にあったが,入院患者の場合は33例中9例がその範囲以上,5例が以下であった.薬剤服用の前後で metHb,赤血球内2,3-DPG,ΔpH(全血と赤血球内の pH 差)の変動はほとんど認められなかったため,薬剤服用後の P50 変動は,薬物と hemoglobin の相互作用が原因の一つであると考えられた.そこで P50 に変動を示した入院患者の服用薬物のいくつかについて精製 hemoglobin を用いて,その P50 に与える影響を in vitro で検討した結果,mcclofenoxate hydrochloride,PAS-Na,IHMSに P50 増加作用が認められた.以上より,P50 の測定は不適当な薬物投与を見いだすためのスクリーニングとしての意味を持つと考えられる.
  • 後藤 一洋, 久留 正生, 寺澤 道夫, 角部 行信, 安倍 千之, 塩川 優一
    1981 年 77 巻 5 号 p. 459-467
    発行日: 1981年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
    ヒツジ赤血球(SRBC)を dd 系マウスへ i.v. 投与し,脾 hemolytic plaque forming cell,脾および胸腺 rosette forming cell(RFC)および血清凝集素価を測定した.1×108 SRBCで免疫したマウスの免疫応答は Y-12,141 30~100mg/kg の p.o. 投与で影響されないが,cyclophosphamide 10~30mg/kg および D-penicillamine 100mg/kg の p.o. 投与で抑制された.Ievamisole は 1~30mg/kg p.o. 投与で脾 RFC 数を増加させた.levamisole の脾 RFC 数増加作用は 5×106~1×108SRBC で免疫したマウスで認められた.一方,Y-12,141 10~30mg/kg p.o. は5~10×106 SRBC で免疫したマウスの脾 RFC 数を増加させた.Y-12,141 はSRBC 免疫日の1または2日後に p.o. 投与すると脾 RFC 数を増加させた.D-penicillamine は免疫日の2日前から免疫日までのp.o. 投与で脾 RFC 数を増加させた.cyclophosphamide 20mg/kg p.o. 投与による脾および胸腺 RFC 数の減少は,Y-12,141 3~30mg/kg および levamisole 1~30mg/kg の p.o. 投与で回復した.また,cyclophosphamide と Y-12,141 または levamisole の併用で 19S 抗体の減少と 7S 抗体の増加が認められた.さらに,prednisolone 30mg/kg p.o. による脾 RFC 数の減少は,Y-12,141 30~100mg/kg および levamisole 10~30mg/kg の p.o. 投与で回復した,したがって,Y-12,141 は少量の SRBC による免疫応答を増強し,薬物による免疫応答の低下を回復させ得ることから,免疫系へ関与することが推定される.
  • 山田 重男, 蜂須 貢, 大幡 久之, 上村 哲也, 丸山 郁夫
    1981 年 77 巻 5 号 p. 469-476
    発行日: 1981年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
    2級アミンおよび3級アミン化合物である mecamylamine および pempidine は自律神経節の競合的遮断薬として知られている薬物である.これら両薬物のネコ脊髄反射 monosynaptic reflex(MSR),polysynaptic reflex(PSR),dorsal root reflex(DRR)に対する作用を4級アンモニウム化合物である tetraethylammonium(TEA),脱分極性遮断薬である decamethonium(C10)および3級アミンである nicotine の作用と比較検討した.mecamylamine(5.0mg/kg i.v.)および pempidine(1.0mg/kg i.v.)は PSR,MSR および DRR に対し,いずれも持続性の抑制を示した.その抑制は40分後に maximum に達した.mecamylamine の場合は最大抑制に達した後に徐々に回復がみられたが,pempidine の抑制効果は持続的であり,60分以後でも回復は認められなかった.C10(10.0mg/kg i.v.)および nicotine(0.025mg/kg i.v.)は MSR および PSR を一過性に抑制したが DRR に対しては有意差は認められなかった.TEA(10.0mg/kg i.v.)は MSR および PSR を抑制し,DRR を一過性に増大した.以上の結果から,2級および3級アミンおよび4級アンモニウム化合物は脊髄反射のうち DRR に対する作用が異なっていると結論される.
  • 折笠 修三, 木皿 憲佐
    1981 年 77 巻 5 号 p. 477-482
    発行日: 1981年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
    tyramine の脳室内(i.c.v.)投与により,モノアミン酸化酵素阻害薬である safrazine を前処理したマウスに惹き起こされる head-twitch 反応(HTR)に対するコリン作動性神経系作用薬の影響を検討した.neostigmine,methacholine,carbamylcholine,methylatropine または hexamethonium を腹腔内投与しても,tyramine による HTR に対し,ほとんど影響を与えなかった.acetylcholine,physostigmine,nicotine,carbamylcholine またはatropine を i.c.v. 投与したところ,tyramine による HTR は減少傾向を示した.また,pilocarpine,methacholine,mechamylamine,hexamethonium または tetraethylammonium を i.c.v. 投与したところ,tyramine による HTR は増加傾向を示した.これらの結果は,tyramine により誘発される HTR に対し,中枢のムスカリン受容体機構は促進的に,ニコチン受容体機構は抑制的に関与していることを示唆している。
  • 植木 昭和, 渡辺 繁紀, 山本 経之, 片岡 泰文, 田添 直衛, 柴川 重信, 柴田 和彦, 太田 尚, 川原 公規, 中西 博, 高野 ...
    1981 年 77 巻 5 号 p. 483-509
    発行日: 1981年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
    マウス,ラット,ウサギを用いて alprazolam の行動薬理ならびに脳波作用を diazepam,lorazepam および nitrazepam のそれと比較した.1)open-field におけるマウスの自発運動は alprazolam の低,中等量で増加した.nitrazepam も類似の作用を示したが,diazepam,lorazepam にはかかる作用はなかった。alprazolam,nitrazepam のこの作用は1週間の連続投与によって消失した.2)methamphetamine の自発運動増加作用は alprazolam,diazepam,lorazepam によって増強されたが,alprazolam の作用が最も強力であった.3)ラットにおける抗 conflict 作用は alprazolam が最も強く,ついで diazepam,lorazepam の順であった.4)嗅球摘出ラットの情動過多および muricide に対する alprazolam の抑制作用は lorazepam とほぼ同程度で,diazepam より強かった.5)raphe 破壊ラットの muricide に対しては alprazolam がとくに強い抑制作用を示した.6)alprazolam,diazepam は単独投与ではマウスで head-twitch を誘発しなかったが,nitrazepam はこれを誘発した.mescaline による head-twitch は3薬物いずれによっても増強され,この作用は alprazolam が最も強力であった.5-HTPによる head-twitch 発現は alprazolam,nitrazepam によって影響されなかったが,diazepam により抑制された.7)alprazolam は diazepam や lorazepam と同様にマウスの最大電撃および pentetrazol けいれんを抑制したが,後者に対する作用がより強かった.8)マウスにおける alprazolam の thiopental,etherおよび ethanol 麻酔増強作用は diazepam よりはるかに強く,lorazepam よりやや強かった.9)rotarod 法による alprazolam の協調運動障害作用はマウスでは diazepam,lorazepam より強かったが,ラットでは lorazepam よりはるかに弱く,diazepam より少し強かった.10)マウスの inclined screen 法における alprazolam の筋弛緩作用は diazepam や lorazepam より少し強い程度であった.11)alprazolam は慢性電極植込みウサギの脳波を徐波化させ,音刺激や中脳網様体刺激による脳波覚醒反応を抑制し,また大脳辺縁系後発射も抑制した.これらの作用は diazepam の約2倍強力であった.光誘起反応は alprazolam,diazepam によって全く影響されなかった。12)alprazolam の主代謝産物のうち,α-hydroxyalprazolam 体は alprazolam の1/2~1/3の薬理活性を示したが,5-chloro-2-(3-hydromethyl-5-methyl-4H-1,2,4-triazolo4-yl)benzophenone 体はほとんど作用がなかった.以上,alprazolam は質的には diazepam や lorazepam に類似した行動薬理学的,脳波学的作用を有するが,その作用は全般的に diazepam よりも強力であり,lorazepam と同程度である.また特に脳内セロトニン系に対して特異な作用を有する薬物のように考えられる.
  • 田中 和夫, 金子 武稔, 山津 清実
    1981 年 77 巻 5 号 p. 511-520
    発行日: 1981年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
    新規抗痙縮剤 4'-ethyl-2-methyl-3-piperidinopropiophenone hydrochloride(EMPP)の実験的固縮および脊髄に対する影響を検討した.EMPP はラットの Sherrington 型除脳固縮を 1.25mg/kg i.v. で約50%抑制し,投与量を増量するとともに抑制作用は顕著となり,その効力は tolperisone の約2倍であった.また,ラットの虚血性除脳固縮を EMPP は2.5~10mg/kg i.v. で抑制した.麻酔ネコにおいて,EMPP は 2.5mg/kg i.v. 以上で膝蓋腱反射にはほとんど影響を与えず,屈曲反射を用量に依存して抑制した.また,EMPP は10mg/kg i.v. で屈曲反射を約80%抑制し,その作用は約2時間持続した,脊髄ネコにおいても,EMPP 2.5~10mg/kg i.v. は屈曲反射を抑制したが,その抑制効力は麻酔ネコの場合に比し減弱した.EMPP の経口投与では,100~200mg/kg で選択的に屈曲反射を抑制し,この効力は tolperisone や chlormezanone に比し用量的に約2倍強力であった.一方,脊髄ネコにおける脊髄反射電位に対しては,EMP Pは 2.5~10mg/kg i.v. の用量で単シナプス反射,多シナプス反射ならびに後根反射電位をそれぞれ同程度に抑制した.また,この投与用量の範囲で EMPP は脊髄ネコの運動ニューロン自発性発射を抑制したが,筋紡錘からの GIa 発射に対してはほとんど影響を与えなかった.以上のように,EMPP は強力な脊髄反射活動抑制作用を有し,その主作用部位は脊髄であるが,上位中枢も考慮する必要がある.
  • 栗原 久, 田所 作太郎
    1981 年 77 巻 5 号 p. 521-530
    発行日: 1981年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
    新合成化合物 cis-N-(1-benzyl-2-methylpyrrolidin-3-yl)-5-chloro-2-methoxy-4-methylaminobenzamide(YM-09151-2)投与時に観察されたラットのシドマン型および弁別型条件回避反応の抑制について検討し,類似の化学構造を有する benzamide 系化合物である YM-08050,YM-08051 および sulpiride,さらに代表的な抗精神病薬である chlorpromazine および haloperidol の効果と比較した.YM-09151-2 の 0.0025~0.01mg/kg 皮下投与あるいは 0.2~1.6mg/kg 経口投与により,投与2~3時間後を最大とする用量依存的な回避反応抑制が観察され,高用量投与時には24時間後においても効果が残存していた.しかし回避反応が著明に抑制されていた時であっても,ラットは強い鎮静を示すわけではなく,飼育ケージ内では通常と変らない摂餌,飲水を行なった.投与直後から2時間における平均被ショック率あるいは平均回避率の変化からみて,皮下投与によってシドマン型および弁別型回避反応は,いずれも YM-09151-2,YM-08050,haloperidol,YM-08051,chlorpromazine および sulpiride の順に強く抑制された.またシドマン型回避反応を介した d-amphetamine 1mg/kg s.c. との拮抗効果も全く同一の順序で強かった,YM-09151-2 皮下投与時の回避反応抑制効果は,chlorpromazine の94~137倍,haloperidol の4~37倍と推定された.一方,経口投与時の回避反応抑制効果はそれぞれの10~20倍および約1倍と概算された.本実験結果から,YM-09151-2 は同じ benzamide 系化合物である sulpiride とは異なり,皮下投与時には現在われわれが知り得る neuroleptic agents のうち最も強力な回避反応抑制効果を示し,その効果出現は速く持続時間も比較的長いと考えられる.
  • 田中 雄四郎, 前川 昌樹, 中村 圭二
    1981 年 77 巻 5 号 p. 531-552
    発行日: 1981年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
    新規な非ステロイド性抗炎症薬 Ro12-0068 について9種の実験炎症モデルに対する活性スペクトラム,消化器系および prostaglandin 生合成に対する影響について検討した。本薬物は adjuvant 関節炎,熱湯性浮腫および肉芽増殖反応(granuloma pouch 法,cotton pellet 法)に対し,diclofnac sodium より強い抑制効果を示し,indomethacin,piroxicam とほぼ同程度の抑制作用を示した.またほぼすべての実験系で本薬物は naproxen,flufenamic acid,mefenamic acid,phenylbutazone,acetylsalicylic acid より著しく強い抗炎症効果を示した.以上のことから本薬物は indomethacin,diclofenac sodium,piroxicam 等と同様な強力なる抗炎症薬群に分類される.本薬物のラット消化器系に対する潰瘍惹起作用,イヌにおける便潜血反応の陽性化は indomethacin,piroxicam より弱く diclofenac sodium と同程度であった.なおpiroxicam 同様に便潜血反応の陽性化は持続的であった.しかしラットでの治療係数(絶食性潰瘍惹起作用/抗炎症効果)はいずれの実験系においてもpiroxicam より高く,indomethacin と比較しても高い傾向を示した.またラットに本薬物を連続投与すれば炎症巣および消化器系組織中の prostaglandin 含量は共に低下するがその活性は piroxicam と同等であり,炎症組織,消化管中の prostaglandin 合成抑制能の分離は他の抗炎症薬と同様に認められなかった.しかしながら Ro12-0068 は著るしい抗炎症効果を示すにもかかわらず消化器系の潰瘍惹起作用は弱いのが特徴的である。
  • 長尾 拓, 岩沢 義郎, 池沢 一郎, 村田 栄, 佐藤 匡徳
    1981 年 77 巻 5 号 p. 553-558
    発行日: 1981年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
    Ca2+ 拮抗薬 diltiazem hydrochloride の気管支拡張作用を,モルモット摘出気管筋標本および麻酔ネコを用いて検討し,併せて,isoproterenol(iso)の気管支拡張作用に及ぼすdiltiazem の影響を摘出気管筋および麻酔犬で検討した.histamine 10-5g/ml で収縮させたモルモット摘出気管筋に対し,diltiazem は10-4g/ml で約70%の抑制作用を示した.この作用は,propranolol 3×10-8g/ml で影響されなかった.また,麻酔ネコに 5-HT のエアゾールを吸入させて上昇させた気管内圧に対し,diltiazem(400μg/kg i.v. )は約20%の抑制作用を示し,その作用は約20分持続した.一方,モルモット摘出気管筋標本において diltiazem(10-5g/ml)は,iso による弛緩作用に影響を及ぼさなかった.また,麻酔犬において, histamine を spasmogen として検討した iso の気管支拡張作用に対しても,diltiazem(20μg/kg/min,i.v. )はほとんど影響を及ぼさなかったが,心拍数増加作用に対しては有意な抑制作用を示した.他方,propranolol(30μg/kg,i.v. )は histamine による気管支収縮を増強し,また,iso による気管支拡張作用,心拍数増加作用をともに抑制した.以上のように,diltiazem の気管支拡張作用は in vitroin vivo いずれにおいても認められたが,その作用は,心臓血管系に対する作用よりかなり弱かった.また,iso の心拍数増加作用を抑制する用量で,iso による気管支拡張作用には影響を及ぼさなかった.
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