日本薬理学雑誌
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Timepidium bromideの胃粘膜直接作用とPepsin分泌の抑制
成川 秀隆大山 礼子針谷 祥一
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1981 年 78 巻 2 号 p. 71-78

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抄録

抗コリン薬timepidium bromide (TB) は強塩基性の四級アンモニウム塩であり,胃粘膜から吸収されないと考えられる.そこで, TBの胃粘膜への作用と血行を介した作用を調べる目的で,幽門結紮ラットまたは胃内灌流ラットを用い, TB胃内投与および皮下,十二指腸内投与実験を行い, pepsinおよび胃酸分泌に対する作用を検討した. 1) 幽門結紮ラットにおいて, TB 100mg/kg胃内投与で,弱い胃液分泌量の減少および顕著な遊離塩酸濃度, pepsin濃度の減少が認められた. 2) 同用量のTB十二指腸内投与では,胃液分泌量,胃酸分泌は強く抑制されたが, pepsin濃度に対する影響は認められなかった. 3) TB 10mg/kg皮下投与では,胃液分泌量,遊離塩酸濃度は強く抑えられたが, pepsin濃度は対照に比し増大する傾向にあった. 4) atropine, hyoscine-N-butylbromide, oxethazaine (Ox) 胃内投与では, Oxにのみpepsin濃度の低下が認められた. 5) 胃内灌流ラットを用いた場含, bethanechol刺激による胃酸およびpepsin分泌亢進は, TB 3ないし10mg/kgの胃内投与で抑制された.しかし, TB 10mg/kgを十二指腸内投与した際には,影響は認められなかった. 6) TB 250μg/ml含有溶液により曽内灌流を行うと, bethanechol刺激による胃酸およびpepsin分泌亢進は抑制された. 7) in vitroにおいて, TBはpepsin活性に対し阻害作用を示さなかった.以上の結果から,TBは胃粘膜に直接作用して,胃酸およびpepsin分泌を抑制する作用を有するものと考えられる.

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