日本薬理学雑誌
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Mequitazine(LM-209)の薬理学的研究(第3報) ―中枢神経系に対する作用―
藤村 一鶴見 介登柳原 雅良平松 保造田村 洋平清水 世安北条 雅一吉田 洋一芹沢 功
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1981 年 78 巻 4 号 p. 249-260

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抄録

Mequitazine(LM-209)の中枢神経系に対する薬理作用を検討し,以下の結果を得た.1)LM-209 5~100mg/kg p.o. 投与はマウス自発運動,マウス協調運動,マウス筋弛緩作用,ラット正常体温,マウスにおける pentylenetetrazol または strychnine 痙攣に対する抑制作用およびマウスの酢酸 stretching 法ならびに Haffner 変法による鎮痛作用に対して明らかな作用は認められなかったが,電気ショック痙攣に対してのみ高用量で抗痙攣作用が認められた.一方,clemastine fumarate(C.L.)は抗痙攣作用(電気ショック)および鎮痛作用(Haffner 変法)において LM-209 よりやや強い効果を示し,chlorpheniramine maleate(C.P.M.)は協調運動,筋弛緩作用,体温および鎮痛作用(Haffner 変法)において LM-209 および C.L. より強い作用が認められ promethazine は協調運動ならびに筋弛緩作用において LM-209,C.L. および C.P.M. より強い作用を示した.2)LM-209 1~25mg/kg p.o. 投与は抗-Parkinson 薬の screening 法としてよく使用される oxotremorine 振顫に対し,抗-histamine 薬の promethazine と同等,抗-Parkinson 薬のdicthazlne および orphenadrine よりも強い抑制作用を示したが,C.L. のそれは LM-209 より遥かに弱いものであった.また,抗アレルギー作用で最大の効果が認められる用量(5mg/kg)における効果持続作用は orphenadrine 20mg/kg とほぼ同等であり, diethazine 25mg/kg より若干強かった.3)LM-209 5~50mg/kg p.o. 投与は hexobarbital 睡眠に対し50mg/kg 投与群のみ対照群に比べて睡眠時間を約50%延長したが,C.L. は 25mg/kg 投与群ですでに睡眠時間を約50%延長し,50mg/kg投与群では約100%延長した.4)LM-209(0.3~5mg/kg i.v.)の投与はウサギにおける自発脳波の徐波化,脳波覚醒反応(音および中脳網様体刺激)および脳波漸増反応の抑制を示した.LM-209 のこれらの作用は promethazine より弱く,C.L. とほぼ同程度であった,5)LM-209 は抗-oxotremorine 作用を除いて中枢作用が弱いといわれている C.L. とほぼ同等の作用であったことから,比較的中枢神経系に対する副作用が少ない抗-His 剤であることが期待された.

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