日本薬理学雑誌
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妊娠中Phenytoin投与親の第一世代ラット中枢神経系機能に関する薬理学的研究
池田 久基
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1982 年 79 巻 1 号 p. 65-76

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抄録

妊娠中のphenytoin(PHT)投与が,胎仔の中枢神経系機能発達にどのような影響をおよぼすか,特に出生後の機能変化有無を検索する目的で本実験を行なった.妊娠ラットを,妊娠1~10日,妊娠14~21日,妊娠1~21日と妊娠15日目のみ投与の群に分け10,50,100あるいは200mg/kgのPHTを,対照には生理食塩水を皮下注射し,出生した第1世代仔(PHT-Fl,N-F1)についてpentobarbita1睡眠時間,diazepamによるアタキシア,haloperidolによるカタレプシー,pentetrazolによるけいれん発現につき比較検討した.その結果,pentobarbital,Pentetrazolに対する反応には全く変化をみとめず,diazepamによるアタキシアもPHT lOOmg/kg1~21日投与F1雌においてのみ持続時間の延長を認めた.しかし,9~13週において各週1回ずつテストしたhaloperidol(1mg/kg i.p.)によるカタレプシー持続時間に著明な変化を認めた.haloperidol週1回投与をくり返すとN-F1ラットにおいてもカタレプシー持続時間が次第に延長を示すようになったが,PHT50または100mg/kgを妊娠全期間あるいは前期に投与したF1群,特に雌においてはN-F1の2~3倍までも延長した.一方,妊娠後期および200mg/kgを妊娠15日目に1回投与したF1群では逆にhaloperidol-カタレプシー持続時間の延長が小あるいは全く認められなかった.PHTを妊娠全期間に投与したF1群でも10mg/kgの少量の場合,カタレプシー持続時間は短縮する傾向にあった.PHT-F1群において成長発育の異常は認められなかったが,開眼時期が有意に早まる成績を得た.以上胎仔期のPHT投与は出生後のhaloperidolに対する反応の変化をひき起こすこと,さらにPHT投与時期,投与量によってF1のhaloperidolに対する感受性が異なることが明らかとなった.これらの結果からラット胎仔期に投与されたPHTは比較的特異的にカタレプシー発現に関係あるdopaminergic neuronおよび関連neuronの発生,発達に影響をおよぼすことが示唆され,また,その変化が成熟後も残ることが明らかとなった.

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