日本薬理学雑誌
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Dihydroergotamine mesylateの循環器系および神経系に対する作用
府川 和永本多 秀雄久保田 英雄畑中 佳一澤辺 隆司
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1982 年 79 巻 3 号 p. 225-236

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抄録

dihydroergotamine mesylate(DEM)の呼吸および循環器系,自律神経系および中枢神経系に対する作用をイヌ,ラット,ウサギを用いて検討した.その結果DEMは中枢神経系に対する作用は弱いが,norepinephrine,serotonin(5-HT),頸動脈閉塞による昇圧反応を用量依存的に抑制し,呼吸数および心拍数を減少させ,また血圧も用量依存的に上昇させた.DEMの昇圧作用はmethysergideならびにindomethacinにより抑制され,5-HT様作用およびprostaglandins(PGs)の関与が推定された.DEMによる大腿動脈条片の収縮反応はmethysergideで抑制され5-HTとの関連性が示されたが,indomethacinでは軽度ではあるが逆に増強を示した.DEMの動脈からのPGE遊離作用がindomethacinで抑制されていることより,DEMの動脈に対する作用は動脈拡張性PGsの生合成促進が推察され,またDEMの昇圧作用がindomethacinにより抑制されることから血中における昇圧性PGsの生合成促進作用が考えられる.一方DEMによる大腿静脈条片収縮反応はindomethacinで抑制されPGsの関連性が示されたが,methysergideでは軽度にしか抑制されず収縮時の静脈片からのPGE遊離はDEMにより著しく促進され,その促進作用はindomethacinにより抑制された.したがってDEMの血管平滑筋に対する収縮作用は動脈と静脈とでは異なっており,動脈に対しては主として5-HT受容体を介し,静脈に対しては主としてPGEを介することが示唆された.

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