日本薬理学雑誌
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79 巻, 3 号
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  • 古濱 和久, 高山 敏, 小野寺 威
    1982 年 79 巻 3 号 p. 113-121
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
    実験的に誘発した馬杉型糸球体腎炎またはcephaloridine尿細管障害ラット尿中に排泄されるalkaline phosphatase(AlP)につき,neuraminidase処理前後の電気泳動パターンおよびL-phenylalanineまたは尿素による活性阻害効果を調べるとともに腎AlPの組織化学的検索を行い,タイプの異なる腎障害を臨床生化学的に区別することを試みた.その結果,尿AlPは対照正常ラットに比較して糸球体腎炎ラットで13倍,尿細管障害ラットで同様に8倍の増加がみられた.また,尿AlPの臓器由来性には病態のちがいにより明らかな性質の差異が認められた.糸球体腎炎ラットの尿AlPはneuraminidase処理によって易動度が変化せず,L-phenylalanineおよび尿素の阻害態度とも小腸AlPの性質にほぼ一致した.従って,これらの尿AlPは循環血液を経由して糸球体毛細血管の透過性亢進により尿中に漏出したと考えられた.一方尿細管障害ラットの尿AlPはneuraminidase処理前後の電気泳動パターンおよびL-phenylalanineによる阻害態度が腎AlPに類似し,腎AlPの組織化学でも近位主部尿細管上皮刷子縁の活性低下がみられたことから,これらの尿AlPは主として腎AlPが尿細管上皮の逸脱により出現したと考えられた.以上のことから尿AlP活性の臨床生化学的解析から逆に障害部位を推定することも可能であると結論した.
  • 藤村 一, 鶴見 介登, 長谷川 順一, 柳原 雅良, 平松 保造, 前川 啓子
    1982 年 79 巻 3 号 p. 123-136
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
    TN-762はPG合成阻害作用が強く,急性炎症反応を著明に抑制するので,亜急性慢性炎症に対する影響ならびに鎮痛解熱作用を,indomethacinの他構造類似のphenylpropionicacid誘導体であるketoprofenおよびibuprofenと比較検討した.TN-762はmustardによるラット足蹠浮腫を明らかに抑制したが,その抑制効力はindomethacinより弱く,作用の持続も短かかった.cotton pellet法および肉芽嚢法で肉芽増殖に対する影響を検したところ,TN-762は有意な抑制効果を示し,その効力はibuprofenの約2倍であったが,ketoprofenより僅かに弱く,indomethacinの1/10以下であった.またadjuvant関節炎に対してもTN-762は明らかな抑制効果を示したが,indomethacinよりは弱かった,従ってTN-762は亜急性慢性炎症に対して顕著な抑制効果を呈したけれども,その効力はindomethacinに比較して相当弱く,ketoprofenと共にphenylpropionic acid誘導体のNSAIDは,急性炎症よりも増殖性炎症をより強力に抑制するindomethacinとは作用態度が異なっているように思われた.ただindomethacinでは高用量の場合体重増加を抑制し,全身毒性の関与が考えられると共に,抗炎症作用々量と毒性量とが接近していたが,TN-762やketoprofenでは体重増加に全く影響せず,安全性の高い薬物と思われた.TN-762はnystatin浮腫に対してketoprofenやindomethacinとほぽ同等の抑制効果を示し,膜安定化作用のあることが認められ,それが抗炎症作用機序の一つとも考えられた.TN-762は酢酸writhing,Haffner変法およびRandall and Selitto法にてketoprofenやindomethacinと同等の比較的強い鎮痛作用を示した.TN-762は正常体温には全く影響しなかったが,イースト発熱ラットやLPS発熱ウサギに対して著明な解熱作用を示した.しかしその効力はindomethacinに比して弱く,作用の持続も短かかったので,薬物動態の面からの比較検討が必要と思われた.
  • 森下 重義, 西村 憲一, 加藤 栄一, 白波瀬 弘明, 大隅 清明, 北尾 和彦, 赤 隆
    1982 年 79 巻 3 号 p. 137-146
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
    Indapamideの降圧作用を正常血圧,DOCA-saline高血圧,一側腎摘出DOCA-saline高血圧および自然発症高血圧ラット(SHR)を用いて検討し,さらに,本薬物の利尿作用を正常ラットおよびSHRにて検討した,また,本薬物の炭酸脱水酵素阻害作用についても実験を行なった.これらの実験には,trichlormethiazide(TCMT)を比較対照薬に用いた.正常血圧ラットにおいて,indapamideは100mg/kg 1回経口投与によっても降圧作用を示さなかった.DOCA-salineおよび一側腎摘出DOCA-salinc高血圧ラットでは,indapamideは1mg/kgより軽度の血圧下降を,3mg/kg投与では明らかな降圧作用を示した.TCMTは3mg/kg以上の投与により血圧降下を示した.一側腎摘出DOCA-saline高血圧ラットにおける2週間連日経口投与ではindapamideは1.0mg/kg/day,TCMTは3.0mg/kg/dayから降圧作用を示した.SHRにおいて,indapamideは1回経口投与で10mg/kgから降圧作用を示し,その作用はTCMTとほぼ同程度であった.2週間連日経口投与ではindapamideは3mg/kg/day,TCMTは10mg/kg/dayから降圧作用を示した.正常ラットにおける利尿作用は,経口投与でindapamideは0.1mg/kg,TCMTは0.03mg/kgよりみられ,共に増量により利尿効果は著明となった.SHRにおける利尿作用は,indapamide,TCMT共に0.3mg/kg以上の用量で明らかであり,尿量およびNa+排泄量は正常ラットの場合より増大した.indapamideは,in vitro, in vivoいずれにおいても軽度の炭酸脱水酵素阻害作用を示し,in vitroにおける作用はacetazolamideの約1/25であった.有効用量から比較すれば,降圧作用ではindapamideはTCMTの約3倍の強さを示したが,利尿作用ではindapamideがTCMTと同等もしくはやや弱かった.これらの結果は,indapamideの著明な降圧効果には利尿作用以外の機序が関与していることを示唆するものである.
  • 桧山 隆司, 新谷 成之, 筒井 正博, 保田 好信
    1982 年 79 巻 3 号 p. 147-162
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
    oripavine誘導体であるbuprenorphineの鎮痛作用,麻薬拮抗作用および耐性形成作用をマウス,ラットおよびウサギを用いて検討した.buprenorphineは化学刺激,熱刺激,圧刺激および電気刺激を侵害刺激として用いたいずれの鎮痛試験においても,対照薬として用いたmorphineおよびpentazocineに比べ低用量から鎮痛作用を示した.また,pentazocineでは鎮痛作用の認められなかった高強度輻射熱刺激によるD'Amour-Smith法およびHaffner法による試験においても鎮痛作用が認められた.高強度輻射熱刺激によるD'Amour-Smith法においてbuprenorphineは二相性の用量反応曲線を示し,非競合的自己抑制作用を有することが考えられた.buprenorphineの鎮痛作用はnaloxoneの前処置により拮抗された.しかしながらbuprenorphineの鎮痛作用が発現した後,naloxoneを投与するとbuprenorphineの作用は拮抗され難かった.buprenorphineの作用持続時間はmorphineおよびpentazocineに比べ長かった.ネコの歯槽神経を電気刺激し,大脳皮質,視床後内腹側核,視床外側中心核および中脳中心灰白質で記録される誘発電位に対してbuprenorphineはmorphineおよびpentazocineと同様に誘発電位の振幅を減少させた.buprenorphineはmorphine拮抗試験においてnaloxoneとほぼ同等あるいは1/2.6,pentazocineの126倍あるいは290倍のmorphine拮抗効力を示した.buprenorphineはmorphineおよびpentazocineと同様にラットでの鎮痛効力を指標とした耐性試験において耐性形成作用を示したが,耐性形成の程度はmorphineに比べ弱かった.これらの結果からbuprenorphineはopiate receptorに対してmorphineおよびpentazocineに比べて高い親和性を示し,pentazocineよりも高いintrinsic activityを有するagonist-antagonistであり,また作用持続時間の長い有用な鎮痛剤であることがうかがわれた.
  • 保田 好信, 塩屋 良秀, 中井 哲, 新谷 成之, 桧山 隆司
    1982 年 79 巻 3 号 p. 163-172
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
    強力な中枢性鎮痛薬であるbuprenorphineと種々の中枢神経作用薬との相互作用をマウスにおけるhalothane麻酔増強作用およびD'Amour-Smith法による鎮痛作用を指標にして検討した.また,buprenorphineの脳内アミン代謝におよぼす影響をラットを用いて検討した.diazepamおよびchlorpromazineはいずれも2,4,8および16mg/kg,s.c.で用量依存的にhalothane麻酔時間を延長させた.buprenorphine 0.01,0.1および1mg/kg s.c.はdiazepamの麻酔増強作用を用量依存的に抑制したが,chlorpromazineの麻酔増強作用には影響をおよぼさなかった.このdiazepamの麻酔増強作用に対してpentazocineおよびnaloxoneも抑制作用を示したが,morphineは影響をおよぼさなかったことから,buprenorphineの抑制作用はその麻薬拮抗作用によるものと考えられる.またdiazepamの麻酔増強作用を麻薬拮抗剤が抑制することからこのdiazepamの作用には内在性オピエートの関与が示唆される.低強度刺激による試験ではdiazepamおよびdroperidolはbuprenorphineの鎮痛作用に影響しなかった.buprenorphineの鎮痛作用は,reserpineおよびp-chlorophenylalanineで抑制され,5-hydroxytryptophanで増強されたが,α-methyl-p-tyrosineおよび3,4-dihydroxy-phenylalanineでは影響されなかった.これらのことからbuprenorphineの鎮痛作用にserotoninが関与することが示唆される.imipramineおよびnialamideは低強度刺激による試験ではbuprenorphineの鎮痛作用を抑制したが,高強度刺激による試験では増強し,刺激強度の変化によって異った結果が得られた.buprenorphine 0.1,1および10mg/kg s.c.はラットの各脳内部位でdopamineの代謝物である3,4-dihydroxyphenylacetic acidおよびhomovanillic acidを増加させ,中脳においてはserotoninの代謝物である5-hydroxyindole-acetic acidを増加させた.
  • 新谷 成之, 梅里 正七男, 鳥羽 義文, 山路 美明, 北浦 敬介, 谷 武司, 石山 広信, 菊地 哲朗, 森 豊樹, 中井 哲, 渡辺 ...
    1982 年 79 巻 3 号 p. 173-191
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
    buprenorphine(B)の一般薬理作用をmorphine(M)およびpentazocine(P)と比較検討した.Bはウサギの脳波および睡眠覚醒周期にはほとんど影響しなかったが,Mは海馬の低振幅徐波化および徐波睡眠期の増加作用を示した.漸増反応および誘発紡錘群発に対してBはMおよびPと同様に抑制傾向を示した.増強反応に対してはBは抑制傾向を示しただけであったが,MおよびPは抑制作用を示した.後部視床下部刺激による脳波覚醒反応に対してBはMおよびPと同様に抑制作用を示した.Bは高用量で少数例においてのみ催吐作用を示したが,Mは用量依存的な催吐作用を示した.apomorphineによる嘔吐に対してBはMと同様に抑制作用を示した.呼吸に対してBはほとんど影響しなかったが,MおよびPは抑制作用を示した.血圧,心拍数,動脈血流量および心電図に対してBはほとんど影響をおよぼさなかったが,MおよびPは血圧下降,動脈血流量の増加作用等の影響をおよぼした.心筋収縮力および冠血管血流量に対してBはほとんど影響しなかったが,MおよびPは収縮力増加および血流量の増加後減少作用を示した.脳脊髄圧に対してBはほとんど影響しなかったが,MおよびPは上昇作用を示した.BはMおよびPと同様,胆汁分泌に影響をおよぼさなかったが,Oddi筋の収縮作用を示した.Bは尿量,腎血漿流量,糸球体濾過量および尿中電解質排泄量にほとんど影響しなかったが,MおよびPは尿量の減少作用を示した.膀胱内圧に対してBはほとんど影響しなかったが,Pは上昇作用を示した.carrageenin浮腫に対してBはMと同様,抑制作用を示したが,Pのその作用は弱かった.血漿中histamine量に対してBは影響をおよぼさなかったが,Mは増加作用を示した.以上のことからBはMおよびPとは異なり,中枢神経系,呼吸循環器系,腎機能に対する影響は少ないと考えられる.
  • 佐直 隆一, 新井 巖, 磯部 好彦, 相原 弘和
    1982 年 79 巻 3 号 p. 193-202
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
    新規に合成された抗潰瘍薬2'-Carboxymethoxy-4,4'-bis(3-methyl-2-butenyloxy)chalcone(SU-88)の抗潰瘍作用の機序検討の一環として,胃血流量ならびに種々循環動態に対する作用を検討した.SU-88はラット交叉熱電対法により検討したところ,静脈内投与により用量依存的に胃組織血流量を増加させ,またイヌの短胃動脈内投与においても胃血流増加作用を示した.イヌの静脈内投与(1mg/kg,3mg/kgおよび10mg/kg)により,SU-88は軽度の降圧と,心拍数増加および呼吸興奮を示したが,それらの作用は速やかに消失し,心電図も心拍数増加に伴うR-R間隔の短縮を示した以外に著変は認められなかった.静脈内投与により,総頸動脈,椎骨動脈,腹腔動脈,上腸間膜動脈および大腿動脈血流量は増加を示し,特に腹腔動脈血流量の増加が著明であった.摘出実験において,SU-88はウサギ耳介灌流量を増加きせ,noradrenalineによる大動脈の収縮を緩解したが,摘出心臓の収縮力,心拍数,灌流量には影響を与えなかった.SU-88の降圧作用はatropine,diphenhydramineおよびpropranololで抑制されず,両側迷走神経切断により影響を受けず,さらに椎骨動脈内投与によっても血圧には影響を及ぼさず,頸動脈洞反射による昇圧にも影響を与えなかった.また動脈内投与による大腿動脈および短胃動脈血流量増加作用はatropine,diphenhydramineおよびpropranololでは抑制されず,aminophyllineの前処置によっても影響を受けなかった.これらのことからSU-88の降圧作用および血管拡張作用は,中枢,自律神経系,histamineおよびadenosine増強作用を介する作用でないと考えられたが,その詳細な機序に関しには今後の検討に俟たねばならない.
  • 鹿児島 正豊, 勝呂 信雄
    1982 年 79 巻 3 号 p. 203-223
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
    reserpine潰瘍の成因について,その防御因子側の要因の一つである胃粘膜血管系の病変がerosion発生にどの様に影響をおよぼしているか,ラットを用い,血管内に色素を注入した透明標本を作製して検討した.その結果血管系病変は集合静脈,粘膜層血管の狭窄によるischemiaであり,これはreserpine投与初期の約1時間後より3時間後まで大弯側腺胃部に多発する.erosionは約3時間後より小弯側腺胃胃底腺幽門腺境界域に初発し,時間の経過と共に大弯側に拡大する.また,ischemiaはphentolamine,hexamethonium,methysergideなどで抑制されることから,reserpine投与による内因性のcatecholamineおよびserotoninの遊離によるものと思われる,erosionはatropine,vagotomy,propranololで抑制され,hexamethoniumでやや抑制,diphenhydramine,metiamide,methysergideで影響されず,carbachol,phentolamineで悪化する.これらを考え合わせるとerosionの成因は,初期病変であるischemiaならびに内因性catecholamine遊離枯渇後の副交感神経優位状態に基づく胃運動,胃液分泌の亢進によるものと考えられるが,ischemia好発部位はerosionの初発部位と異なることから,このischemiaの直接的な関与は少ないものであると考えられる.また,erosionは胃液分泌を抑制するmetiamideでは抑制されず,胃運動,胃液分泌を共に抑制するatropine,vagotomy,propranololおよび粘膜血管系を拡張してischemiaを抑制し,胃運動も抑制するl-isoproterenolの持続静注によって抑制されること,さらにerosionの初発部位が,胃運動の活発な小弯側にあることなどから,ischemiaのみならず胃運動の亢進がその成因に強く関与していると考えられる.
  • 府川 和永, 本多 秀雄, 久保田 英雄, 畑中 佳一, 澤辺 隆司
    1982 年 79 巻 3 号 p. 225-236
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
    dihydroergotamine mesylate(DEM)の呼吸および循環器系,自律神経系および中枢神経系に対する作用をイヌ,ラット,ウサギを用いて検討した.その結果DEMは中枢神経系に対する作用は弱いが,norepinephrine,serotonin(5-HT),頸動脈閉塞による昇圧反応を用量依存的に抑制し,呼吸数および心拍数を減少させ,また血圧も用量依存的に上昇させた.DEMの昇圧作用はmethysergideならびにindomethacinにより抑制され,5-HT様作用およびprostaglandins(PGs)の関与が推定された.DEMによる大腿動脈条片の収縮反応はmethysergideで抑制され5-HTとの関連性が示されたが,indomethacinでは軽度ではあるが逆に増強を示した.DEMの動脈からのPGE遊離作用がindomethacinで抑制されていることより,DEMの動脈に対する作用は動脈拡張性PGsの生合成促進が推察され,またDEMの昇圧作用がindomethacinにより抑制されることから血中における昇圧性PGsの生合成促進作用が考えられる.一方DEMによる大腿静脈条片収縮反応はindomethacinで抑制されPGsの関連性が示されたが,methysergideでは軽度にしか抑制されず収縮時の静脈片からのPGE遊離はDEMにより著しく促進され,その促進作用はindomethacinにより抑制された.したがってDEMの血管平滑筋に対する収縮作用は動脈と静脈とでは異なっており,動脈に対しては主として5-HT受容体を介し,静脈に対しては主としてPGEを介することが示唆された.
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