日本薬理学雑誌
Online ISSN : 1347-8397
Print ISSN : 0015-5691
ISSN-L : 0015-5691
ラット赤血球の解糖系に及ぼす2,3-Dimethoxy-5-methyl-6-(10'-hydroxydecyl)-1,4-benzoquinone(CV-2619)の影響
嶋本 典夫後藤 紀子平田 稔
著者情報
ジャーナル フリー

1982 年 80 巻 2 号 p. 137-145

詳細
抄録

Sprague Dawleyラットの30%赤血球(RBC)懸濁液を用いて,RBCの解糖系に及ぼすCV-2619およびubiquinone-10(Q-10)の影響をNaF存在下および非存在下で検討した.NaFの0.3~10mM存在下,RBCを37°C30分間インクベートした時,RBCのATPおよびlactate含量は,用量依存性に低下した.NaFの1.5mMはATP含量を対照時の約30%に減少させた.その際,phosphofructokinase(PFK)の活性化およびglyceraldehydephosphate dehydrogenase(GAPDH)およびenolaseの抑制が認められ,NaFによるATP減少は,後二者の抑制による解糖系阻害の結果と考えられる.NaF非存在下では,CV-2619(0.3~30μM)およびQ-10(1~100μM)は,ATP含量に影響を与えなかった.NaF 1.5mM存在下,CV-2619は0.3~30μM濃度で,用量依存性にNaFによるATP含量の低下を抑制し,CV-2619,10μM共存下では,ATP含量は対照時の73%であった.CV-2619共存下でもNaFによるenolaseの抑制およびPFKの活性化は認められたが,GAPDHの抑制はCV-2619により解除された.NaF 1.5mM存在下,低下したATP含量はQ-10(1~100,μM)共存で全く影響を受けなかった.以上のことから,正常赤血球の解糖系には,CV-2619およびQ-10いずれも影響を及ぼさないが,NaFにより解糖を阻害した状態ではCV-2619は,GAPDH抑制を解除することにより,解糖の流れを亢進しATP含量を回復させる.一方Q-10にはこのような作用は認められなかった.

著者関連情報
© 社団法人 日本薬理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top