日本薬理学雑誌
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高血圧自然発症(SHR)ラット肥大心における心筋エネルギー代謝に及ぼす2,3-Dimethoxy-5-methyl-6-(10'-hydroxydecyl)-1,4-benzoquinone(CV-2619)の影響
嶋本 典夫田辺 正雄今本 哲治平田 稔
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1982 年 80 巻 4 号 p. 299-306

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抄録

20週齢のSHRラットにCV-2619(10および30mg/kg p.o.)およびubiquinone-10(Q-10,10mg/kg p.o.)を5週間連続投与し,両薬物の抗高血圧作用および心筋エネルギー代謝に及ぼす影響を検討した.CV-2619の10および30mg/kg連続投与は,ともに,週齢による緩徐な血圧上昇に対し,抑制作用を示したが,Q-10の 1Omg/kgでは同作用は認められなかった.本SHRラットに認められた心肥大に対しては,いずれの薬物も軽減しなかった.CV-2619およびQ-10ともに,心筋解糖系中間代謝物(glycogen,glucose,pyruvateおよびlactate)および高エネルギーりん酸化合物(creatine phosphate,ATP,ADPおよびAMP)には有意の影響を与えなかった.しかし,CV-2619の高用量では,心筋のエネルギー状態を示すenergy chargeを有意に増大させ,またlactate/pyruvate比の有意の低下およびcyclic AMP含量の有意の増加が認められた.以上の成績から,CV-2619は高血圧維持期のSHRラットにおいて,緩和な抗高血圧作用を示し,心筋エネルギー状態を改善し,この心筋エネルギー状態の改善は,血圧上昇抑制による後負荷の減少と心筋代謝改善によることが示唆された.

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