日本薬理学雑誌
Online ISSN : 1347-8397
Print ISSN : 0015-5691
ISSN-L : 0015-5691
血管弛緩作用を有するVinpocetine(TCV-3B)の環状ヌクレオチド代謝に及ぼす影響
萩原 正敏遠藤 登代志日高 弘義
著者情報
ジャーナル フリー

1982 年 80 巻 4 号 p. 317-323

詳細
抄録

脳循環代謝改善薬vinpocetine(TCV-3B)はこれまでに,家兎摘出血管条片標本において,KCl拘縮を弛緩させ,脳底動脈標本のhistamine,serotonin,noradrenaline,prostaglandinF,angiotensin II等の種々agonistによる反応を非選択的に抑制することが明らかになっている.そこで,このように非選択的抑制作用を示すTCV-3Bの作用部位の一つとして,血管の収縮・弛緩に関与が考えられている細胞内情報伝達系を想定し,TCV-3Bの血管弛緩作用と血管壁のcyclic AMPおよびcyclic GMPとの関連性について検討した.TCV-3B投与により,血管壁cyclic AMPレベルに変化は認められなかったが,cyclic GMP量はTCV-3Bにより有意に増加し,血管壁cyclic GMP量の増加とTCV-3Bの投与量の間には相関が認められた.さらにTCV-3Bは環状ヌクレオチド合成酵素adenylate cyclase,guanylate cyclaseに影響を与えなかったが,分解酵素Ca2+-calmodulin dependent phosphodiesterase(Ca2+-PDE)を選択的に阻害した.このCa2+-PDEに対する阻害作用はCa2+-calmodulinの存在に影響されず,また基質であるcyclic GMPとも競合しなかったため,TCV-3BはCa2+-PDEに直接作用することで,この酵素の活性を選択的に阻害し,血管壁中のcyclic GMPレベルを上昇させると考えられる.

著者関連情報
© 社団法人 日本薬理学会
前の記事
feedback
Top