日本薬理学雑誌
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Guanabenz:[(2,6-Dichlorobenzylidene)amino]guanidine acetateのMorphine型およびBarbital型身体的依存形成能について
金戸 洋小坂 信夫高栖 政博三野 照正
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1982 年 80 巻 5 号 p. 405-415

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抄録

guanabenzは構造の一部にclonidineと共通の部分を含み,その薬理作用も類似しともに中枢神経系のα2-アドレナリン受容体を介して作用する降圧薬とされている.本研究では,guanabenzの中枢作用に加え,morphine型およびbarbital型身体的依存形成能の有無をclonidineと比較しつつ検討した.1) guanabenz,clonidineはマウスにおけるHaffner変法によって強い鎮痛効果を示し,guanabenzの効果はclonidineの約1/10であるがほぼmorphineに匹敵し,この効果に対し反復投与によって耐性が形成される.2) morphine10日間の漸増投与によって依存としたマウスにおいて発現する自然退薬症状は,morphine最終投与10分前のguanabenzあるいはclonidineの投与によって用量依存的に著明に抑制された.しかしながら,このguanabenzの抑制効果は顕著な体重減少と動物の衰弱を伴い,これが退薬症状の抑制と動物の鎮静状態をもたらしたものである.3) 10日間のbarbital処置によって依存としたマウスにおけるsingle dose suppression testで,guanabenzは高用量で退薬症状を抑制したが,これに要する用量は著明な体重減少と,時に死亡例のみられる大量であった.同じくbarbital依存マウスにおけるsubstitution testでも,guanabenzによってbarbital依存を維持することはできなかった.また,clonidineにはbarbita1退薬症状抑制効果はみられなかった.4) さらに,ラットに対するguanabenzの30日間の連日,1日2回の反復経口投与実験においても,投与期間中に用量に応じた体重増加の遅延がみられたのみで,投与を中止しても体重減少をはじめ退薬症状の発現は認められなかった.以上の如く,guanabenzにはmorphine型あるいはbarbital型の身体的依存形成能を証明することはできなかった.

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