HgCl
2によって誘起したラットの急性腎不全においてrenin-angiotensin(R-A)系の阻害剤SA-446あるいはβ-遮断剤propranololを前処置した場合の尿量,尿および血漿電解質(Na
+,K
+およびCl
-)および血漿urea nitrogen(PUN)およびcreatinine(PCr)値に対するazosemideの効果をfurosemideの場合と比較検討した.HgCl
2 2mg/kgの皮下投与により血漿renin活性(PRA)は3時間目にHgCl
2投与前の1.8倍の有意な上昇を示し,その後下降し24時間目には正常値に回復したがPUNおよびPCrはその後も増加を続けた.HgCl
2 2mg/kg皮下投与後24時間目において,azosemideおよびfurosemideは320mg/kgの大量経口投与にもかかわらず無効か,わずかな利尿活性しか示さなかった.HgCl
2 2mg/kgを皮下投与後9および23時間目にSA-446 1回50mg/kgあるいはpropranolol 1回80mg/kgを3回経口的に前処置した場合のazosemide(320mg/kg経口)の尿量,尿中へのNa
+,K
+およびCl
-排泄は対照に比しSA-446前処置の場合はそれぞれ4.4,3.8,2.2および4.5倍の著しい増加を示した.一方,propranolol前処置の場合には2.5,3.4.1.8および3.1倍の増加を示した.また,azosemideは単独投与ではPUNおよびPCr値に対してほとんど影響を及ぼさなかったが,SA-446前処置により両パラメーターを強力に減少させ,またpropranolol前処置により減少の傾向を示した.以上のR-A系遮断薬の前処置によるazosemideの利尿増強効果はfurosemideの場合に比べて幾分強力であった.以上の結果から,ラットのHgCl
2による急性腎不全の発症には一部分R-A系の関与が考えられ,PRAの高い時期にazosemideとSA-446あるいはpropranololとの併用はazosemideの利尿効果を増強するのに有益と思われる.
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