日本薬理学雑誌
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80 巻, 5 号
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  • 東 治喜, 岩井 克己, 押野 臨, 佐藤 勝彦, 菊田 正彦, 劉 鴻栄
    1982 年 80 巻 5 号 p. 325-339
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
    lisurideはpostsynaptic dopamine受容体に作用し,常同行動・旋回運動の誘発,自発運動量の増加,血漿prolactin濃度の低下などの強い中枢dopamine(DA)作用を示す麦角アルカロイド誘導体である.そこで,ラット中枢DA神経末端部でのDA生成・遊離・代謝に対するlisurideの影響を,次の実験条件下で測定した.DA生成:presynaptic DA受容体を介するDA生成の変化を検討するために,DA神経のimpulse flowを遮断するγ-butyrolactone(GBL)を投与したラットを用い,aromatic amino acid decarboxylase inhibitor,NSD 1015投与後のDOPA生成(tyrosine hydroxylase in vivo活性)を測定した.1) 1isuride(10,50μg/kg s.c.)は,線条体・前脳辺縁部におけるDOPA生成を,有意に約50%抑制し,用量(10~250μg/kg s.c.)の増加とともに抑制度は高まった.さらに,lisurideはGBL処置ラット正中隆起のDA螢光を減弱させた.以上のlisurideによるDA生成抑制効果はDA受容体遮断薬(haloperidol,sulpiride,metoclopramide)前処置により消失した.2)DA遊離:神経末端からシナプス間隙へのDA遊離の指標としてmonoamine oxidase inhibitor,pargyline投与後の3-methoxytyramine(3-MT)の蓄積を測定した.lisurideは低用量(10μg/kg s.c.)で線条体・前脳辺縁部でのDA遊離(3-MT生成)を約30%抑制し,さらにmethamphetamineによって誘発されるDA遊離を抑制した.3)DA代謝:tyrosine hydroxylase inhibitor,α-methyl-P-tyrosine投与後の線条体・嗅結節・正中隆起におけるDA組織螢光の消失に対して1isuride(50μg/kg s.c.)はapomorphine(1mg/kg i.p.)と同様に抑制した.しかし,dihydroergotoxine(1mg/kg i.p.)による変化は認められなかった.以上のように,lisurideは行動薬理学的に中枢興奮作用の現れない低用量で,presynaptic DA受容体にagonistとして作用し,DA神経末端におけるDA生成・遊離・代謝を抑制することが明かとなり,lisurideがpostsynaptic DA受容体よりもpresynaptic DA受容体に対して,より強い親和性を有すると結論された.
  • 伊藤 敬三, 能勢 尚志
    1982 年 80 巻 5 号 p. 341-348
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
    Benzimidazole系の新しい抗炎症薬,2-(5-ethylpyridine-2-yl)benzimidazole(KB-1043)のprostaglandin(PG)ならびにSRS-A生合成に対する作用を検討し,他の抗炎症薬の作用と比較した.1) KB-1043はウシ精のう腺から得られたPG synthetaseによるPGE2生合成を3×10-5~3×10-4Mで用量依存的に抑制し,そのIC50値は1.33×10-4Mであった.KB-1043のPG生合成阻害活性はindomethacin(IM)の約1/100,mefenamic acid(MA)の約1/25,aspirin(ASA)の約8倍であった.2) 感作モルモット肺切片から抗原により遊離されるtotal mediatorならびにSRS-A量に対して,KB-1043は10-5Mまで何ら作用を示さず,10-4Mでは両者とも減少させた,IM,MAおよびASAはそれぞれ10-6,10-6および10-4Mでtotal mediatorならびにSRS-A量を明らかに増大させた.従ってKB-1043はIM,MAやASAと異なり,PGならびにSRS-A両者の生合成を阻害する化合物であると思われる.
  • 船木 比佐子, 時頼 由香里, 原 公生, 押野 臨
    1982 年 80 巻 5 号 p. 349-365
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
    摘出臓器を用いて,lisuride hydrogen maleate(lisuridc)の薬理作用を検討した.1) lisurideは2.2μMの濃度でモルモット心房の拍動数を有意に抑制し,この作用はsulpiride(2.9μM)で完全に拮抗された.2) 抗α-adrenaline作用(ID50:64nM),抗β-adrenaline作用(ID50:26μM)がそれぞれラット輸精管,ウサギ気管で観察された.前者はphentolamineとほぼ同じ程度の力価で競合拮抗を示した.後者はpropranololと比較して30分の1の力価にすぎなかった.3) 抗5-hydroxytryptamine作用(ID50:11nM),抗histamine作用(ID50:15nM)がそれぞれラット胃底部,モルモット回腸で認められた.どちらもそれぞれmethysergide,diphenhydramineと同程度の力価であった.4) 麦角アルカロイド様作用として,平滑筋収縮作用がウサギ腎動脈,モルモット回腸でみられ,またモルモット心房では陽性変力作用がみられた.子宮に対する刺激作用は,ラットで検討したところまったく観察されなかった.以上の成績から,lisurideは既知の中枢への作用に加えて,強い末梢抗5-hydroxytryptamineおよび抗histamine作用を有すると結論された.
  • 細川 友和, 亀井 淳三, 三澤 美和, 柳浦 才三, 福原 武彦
    1982 年 80 巻 5 号 p. 367-374
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
    咳嗽反射時における各周波数帯域成分毎の変化に及ぼす鎮咳薬の影響を横隔神経活動を構成する周波数帯域成分毎のパワースペクトル解析による計量的評価を行い検討した.横隔神経遠心性発射活動は横隔神経切断中枢端より導出記録した.横隔神経活動電位の各周波数帯域成分はフィルターを用いて100Hz毎に帯域濾波しパワースペクトル解析を行って算出した.気管粘膜の器械的刺激により誘発した咳嗽反射時には各周波数帯域成分のパワー値の増大が認められ,特に,2~100Hz帯域成分のパワー値が他の周波数帯域成分に比べ有意に増大することを見出した.codeine 1,3mg/kgの静脈適用では咳嗽反射時に認められた各周波数帯域成分のパワー値の増大は全周波数帯域にわたり用量依存的に抑制した.dextromethorphan 5mg/kg適用後5分においては咳嗽反射時に認められた2~100Hz帯域成分の増大は約30%抑制されたが,他の帯域成分にはほとんど影響は認められなかった.10mg/kg適用では2~100Hz帯域成分のパワー値の抑制とともに適用後10~15分には全周波数帯域成分のパワー値の抑制が認められた.fominoben 4mg/kg適用では各周波数帯域成分のパワー値の増大に対する抑制は認められなかった.一方,fominoben 8mg/kg適用後5~30分に低周波数帯域成分のパワー値の増大は有意に抑制された.本研究において,咳嗽反射時に認められた100Hz以下の帯域成分のパワー値の増大が三薬物により抑制されたが,他の周波数帯域成分のパワー値に対してはそれぞれの薬物の正常呼吸に対する作用に一致した傾向の変化が認められた.以上のことから,咳嗽反射発現の中枢内統合過程における三種鎮咳薬の作用機序には相異のあることが考えられる.したがって,咳嗽反射の求心路と呼吸リズム形成の両システムにおける主導的なニューロン機構が異なる可能性が考えられ,またその結果が横隔神経活動の帯域成分の構成比率の変化に反映されてくるものと考える.
  • 塩田 千代, 笹川 祐成, 原 公生, 生駒 幸弘, 押野 臨
    1982 年 80 巻 5 号 p. 375-384
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
    lisuride hydrogen maleate(lisuride)誘発運動量,および,水泳能を指標にして,脳卒中易発性高血圧自然発症ラット(SHRSP)の高血圧発症進展過程での中枢ドーパミン(DA)作動性機能の変化を検討した.1) 1ヵ月齢,および,2ヵ月齢 Wistar-Kyotoラット(WKY)にlisuride 50μg/kgを皮下投与すると,運動量は顕著に増加したが,6ヵ月齢WKYではほとんど増加しなかった.1ヵ月齢SHRSP(収縮期血圧の平均値=128mmHg)ではlisuride 50μg/kgの投与により運動量は増加したものの,その反応はWKYに比して小さかった.2ヵ月齢SHRSP(176mmHg)ではlisuride投与による運動量の増加は検出されず,6ヵ月齢SHRSP(238mmHg)では運動量の減少効果のみが誘発された.2) 4ヵ月齢SHRSPはWKYとほぼ同等の水泳能を示したが,8ヵ月齢SHRSPでは有意の低下が見られた.この低下したSHRSPの水泳能はlisuride 50μg/kg投与により有意に改善された.以上の結果から,SHRSPでは高血圧発症過程の早期に中枢DAニューロンのシナプス部位での変化がもたらされ,高血圧の長期持続下で強制水泳能で検出可能な運動協調機能の低下にまで進展することが示唆された.
  • 原 公生, 生駒 幸弘, 中尾 寿夫, 江角 吉造, 押野 臨, 塩田 千代, 笹川 祐成
    1982 年 80 巻 5 号 p. 385-394
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
    水泳能低下が発症し始めた8ヵ月齢脳卒中易発性高血圧自然発症ラット(SHRSP)に中枢ドーパミン作動薬,lisuride hydrogen maleate(lisuride)50μg/kg/日を5週間投与し,水泳能に対する効果を検討し,さらに一般症状観察,および,組織学的検索により高血圧症に付随した病変の進行に対するlisurideの効果を検討した.lisurideの5週間連用では水泳能低下の進行それ自体は阻止できなかったが,低下した水泳能は1isurideの直接作用下で有意に改善され,その効果は第2週目で顕著であった.投薬終了後1週目頃に対照群の8例中2例に脳血管障害時に特有の凶暴性を伴なう異常行動が出現したが,lisuride投与群には異常行動の出現を認めなかった.投薬終了2週後の剖検,および,組織学的検索では,腎,副腎,睾丸組織での小動脈硬化の程度,および心筋壊死などの高血圧症に伴なう組織傷害度は対照群に比してlisuride投与群で有意に軽度であった.
  • 鈴木 良雄, 伊藤 幹雄, 高村 俊史
    1982 年 80 巻 5 号 p. 395-404
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
    HgCl2によって誘起したラットの急性腎不全においてrenin-angiotensin(R-A)系の阻害剤SA-446あるいはβ-遮断剤propranololを前処置した場合の尿量,尿および血漿電解質(Na+,K+およびCl-)および血漿urea nitrogen(PUN)およびcreatinine(PCr)値に対するazosemideの効果をfurosemideの場合と比較検討した.HgCl2 2mg/kgの皮下投与により血漿renin活性(PRA)は3時間目にHgCl2投与前の1.8倍の有意な上昇を示し,その後下降し24時間目には正常値に回復したがPUNおよびPCrはその後も増加を続けた.HgCl2 2mg/kg皮下投与後24時間目において,azosemideおよびfurosemideは320mg/kgの大量経口投与にもかかわらず無効か,わずかな利尿活性しか示さなかった.HgCl2 2mg/kgを皮下投与後9および23時間目にSA-446 1回50mg/kgあるいはpropranolol 1回80mg/kgを3回経口的に前処置した場合のazosemide(320mg/kg経口)の尿量,尿中へのNa+,K+およびCl-排泄は対照に比しSA-446前処置の場合はそれぞれ4.4,3.8,2.2および4.5倍の著しい増加を示した.一方,propranolol前処置の場合には2.5,3.4.1.8および3.1倍の増加を示した.また,azosemideは単独投与ではPUNおよびPCr値に対してほとんど影響を及ぼさなかったが,SA-446前処置により両パラメーターを強力に減少させ,またpropranolol前処置により減少の傾向を示した.以上のR-A系遮断薬の前処置によるazosemideの利尿増強効果はfurosemideの場合に比べて幾分強力であった.以上の結果から,ラットのHgCl2による急性腎不全の発症には一部分R-A系の関与が考えられ,PRAの高い時期にazosemideとSA-446あるいはpropranololとの併用はazosemideの利尿効果を増強するのに有益と思われる.
  • 金戸 洋, 小坂 信夫, 高栖 政博, 三野 照正
    1982 年 80 巻 5 号 p. 405-415
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
    guanabenzは構造の一部にclonidineと共通の部分を含み,その薬理作用も類似しともに中枢神経系のα2-アドレナリン受容体を介して作用する降圧薬とされている.本研究では,guanabenzの中枢作用に加え,morphine型およびbarbital型身体的依存形成能の有無をclonidineと比較しつつ検討した.1) guanabenz,clonidineはマウスにおけるHaffner変法によって強い鎮痛効果を示し,guanabenzの効果はclonidineの約1/10であるがほぼmorphineに匹敵し,この効果に対し反復投与によって耐性が形成される.2) morphine10日間の漸増投与によって依存としたマウスにおいて発現する自然退薬症状は,morphine最終投与10分前のguanabenzあるいはclonidineの投与によって用量依存的に著明に抑制された.しかしながら,このguanabenzの抑制効果は顕著な体重減少と動物の衰弱を伴い,これが退薬症状の抑制と動物の鎮静状態をもたらしたものである.3) 10日間のbarbital処置によって依存としたマウスにおけるsingle dose suppression testで,guanabenzは高用量で退薬症状を抑制したが,これに要する用量は著明な体重減少と,時に死亡例のみられる大量であった.同じくbarbital依存マウスにおけるsubstitution testでも,guanabenzによってbarbital依存を維持することはできなかった.また,clonidineにはbarbita1退薬症状抑制効果はみられなかった.4) さらに,ラットに対するguanabenzの30日間の連日,1日2回の反復経口投与実験においても,投与期間中に用量に応じた体重増加の遅延がみられたのみで,投与を中止しても体重減少をはじめ退薬症状の発現は認められなかった.以上の如く,guanabenzにはmorphine型あるいはbarbital型の身体的依存形成能を証明することはできなかった.
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