日本薬理学雑誌
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Phenol振戦に関する薬理学的研究(第7報) ―Choline作動性神経系の関与について―
鈴木 崇彦木皿 憲佐小野寺 憲治小倉 保己
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1983 年 81 巻 2 号 p. 127-134

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抄録

1%phenolの皮下投与により,マウスに誘発される振戦に対するコリン作動性神経系の関与について,薬理学的に検討した.cholinesterase阻害薬のうち,physostigmine腹腔内投与では,振戦に対してほとんど影響しなかった.しかし,neostigmine腹腔内投与では,振戦発現までの時間が短縮し,かつ振戦の強きが増加した.一方,muscarinic receptorに対する作用の強い,methacholine,atropine,methylatropineおよびscopolamincは,いずれも振戦に対して著明な影響は与えなかった.他方,nicotineおよびcarbacholの脳室内投与は,振戦発現までの時聞を延長し,nicotineはさらに,腹腔内投与および脳室内投与において,軽度の振戦抑制を示した.これに対して,mecamylamineの腹腔内投与および脳室内投与は,用量依存的に振戦を増強し,hexamethonium脳室内投与によっても振戦は著明に増強された.以上の結果から,phenol振戦に対して,末梢でのacetylcholine量の増加は,振戦の増強をもたらす基調を形成し,中枢では逆に,末梢運動系の興奮に対してnegative feedback制御を行っている可能性が示唆され,また,これに関与するのは,主に中枢性nicotinic receptor systemであると考えられる.

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