日本薬理学雑誌
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生体内膵分離潅流ラットにおけるInsulin分泌に及ぼす交感神経作働薬の影響
木村 文男深沢 晶子齊藤 文子庄内 香代竹内 節弥
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1983 年 81 巻 2 号 p. 143-148

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抄録
先に報告されたラットの生体内膵分離灌流標本を用いて,noradrenalineおよびisoproterenolのinsulin分泌におよぼす影響を検討した.noradrenaline: 標準灌流液(0.1%glucose含有)灌流下,1μg/0.1mlを膵灌流液中に投与したが,insulin分泌反応は一定の傾向を示さなかった.高濃度のglucose(0.2~0.3%)を含有する灌流液(以下,高糖灌流液と略す)灌流下では,insulin分泌は低下した.高糖灌流液灌流下でのnoradrenalineのinsulin分泌低下作用は,phentolamine(10μg/ml,灌流液中添加)前処置により逆転され,propranolol(10μg/ml,灌流液中添加)前処置により有意(P<0.05)に増強された.isoproterenol: 標準灌流液灌流下,1μg/0.1mlを灌流液中に投与したが,isoproterenol投与前後のinsulin分泌量に変化はみられなかった.高糖灌流液灌流下では,insulin分泌は促進された.高糖灌流液灌流下でのisoproterenolのinsulin分泌促進作用は,phentolamineおよびpropranolol前処置で有意(P<0.01)に増強された.atropine(100μg/ml,灌流液中添加)の前処置は,isoproterenolのinsulin分泌促進作用に無影響であった.以上のように,noradrenalineおよびisoproterenolがinsulin分泌に対して相反する2様の作用を有しているということは,insulin分泌の抑制はα-受容体を介して,またinsulin分泌の促進はβ-受容体を介して惹起されるという在来の模式によっては解決されない.そこには膵「ラ」氏島内のB,D細胞のそれぞれにadrenergic α-およびβ-受容体の存在,およびその生理的役割についてのいくつかの可能性が示唆された.
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