日本薬理学雑誌
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実験的胃潰瘍の研究(第5報) ラット酢酸潰瘍治癒経過の内視鏡観察(1)―潰瘍縮小期について―
府川 和永三崎 則幸河野 修内田 勝幸大林 繁夫入野 理
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1983 年 81 巻 2 号 p. 167-174

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抄録

ラット酢酸潰瘍の治癒過程を内視鏡で経日的に観察し,以下の成績を得た.1)潰瘍の大きさは注射した酢酸の濃度・容量に依存した.2)胃底腺・幽門腺境界部潰瘍と胃底腺大彎部潰瘍の潰瘍縮小速度・治癒率は著しく異なり,胃底腺大彎部潰瘍の治癒経過の方が有意に速かった.3)7週令と25週令ラットの治癒経過に大きな差は認められなかった.4)潰瘍縮小速度は雄に比べ雌の方が速い傾向を示した.5)aldioxa(ALD),sucralfate(SUC)の投与による潰瘍縮小速度は対照群に比べ有意に速かった.しかし,cimetidine(GIM)は対照群との間に差を認めなかった.6)ALDとSUCの併用およびALDとCIMの併用では20日目で対照群より有意に小さいulcer index(UI)を示した.それぞれ単独投与では50日目以後で対照群との間に有意差が認められるのに比べ,併用投与では著しく潰瘍縮小期間が短縮きれた.とくに,ALDとSUCの併用では治癒率が著しく高く,治癒促進作用が認められた.7)潰瘍作製後日数(x)とUI値(y)とを対数にとると両者は直線性を示し,log y=a log x + bの式で表わすことが出来た.この式で勾配aは潰瘍の縮小速度を表わす指数として用いられることがわかった.

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