日本薬理学雑誌
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Slow reacting substance of anaphylaxis(SRS-A)の遊離および平滑筋収縮に及ぼすTranilastの影響
小松 英忠氏家 新生内藤 惇
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1983 年 82 巻 1 号 p. 47-55

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抄録
アレルギー性疾患治療剤であるtranilastのslow reacting substance of anaphylaxis(SRS-A)遊離およびSRS-Aに対する拮抗作用について検討し,以下の結果を得た.1)bovine serum albuminで感作したモルモット肺に抗原を添加したmedium,またはラット腹腔浸出細胞にionophore A23187(0.5μ/ml)を添加したmedium中には10-7g/ml atropine,10-6g/ml mepyramineおよび10-7g/ml cyproheptadineで処置した摘出モルモット回腸を強く収縮する物質が遊離された。その収縮は選択的抗SRS-A剤のFPL55712によって拮抗された(それぞれSRS-AおよびSRS),またSRS-AおよびSRSはいずれも酸性側で不安定であり,arylsulfatase(4units/ml)処置によりSRS-Aはleukotriene(LT)D4と同様に失活したが,SRSはLTC4と同様に失活しなかった.2)SRS-A遊離は10-5~10-3M tranilastおよび10-9~10-7M isoprotcrenolによって用量依存的に抑制され,IC50(conccntration of 50% inhibition)はそれぞれ1.1×10-4Mおよび8.3×10-9Mであった.しかし10-6~10-3M DSCGは遊離抑制作用がみられなかった.3)10-3M tranilastのSRS-A遊離抑制作用は3×10-6M propranololによって影響されなかったが,10-7M isoproterenolの抑制作用はpropranololによって著明に減弱した.4)SRS遊離は3×10-5~3×10-4M tranilastによって用量依存的に抑制きれ,そのIC50は6.4×10-5Mであった.しかし10-9~10-7M isoproterenolおよび10-6~10-3M DSCGは軽度な抑制作用を示したにすぎなかった.5)0.5ng/ml LTC4および1ng/ml LTD4による摘出モルモット気管筋収縮は10-4M以上のtranilastによって拮抗され,そのIC50はそれぞれ2.2×10-4Mおよび2.0×10-4Mであった.以上の結果よりSRS-Aの大部分はLTD4であり,SRSはLTC4と思われた.またtranilastによるSRS-A遊離抑制作用および気管筋におけるLTに対する拮抗作用はtranilastの抗喘息作用を担っているものと考えられ,その作用機作はisoproterenolとは異なる.
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