アレルギー性疾患治療剤であるtranilastのslow reacting substance of anaphylaxis(SRS-A)遊離およびSRS-Aに対する拮抗作用について検討し,以下の結果を得た.1)bovine serum albuminで感作したモルモット肺に抗原を添加したmedium,またはラット腹腔浸出細胞にionophore A23187(0.5μ/ml)を添加したmedium中には10
-7g/ml atropine,10
-6g/ml mepyramineおよび10
-7g/ml cyproheptadineで処置した摘出モルモット回腸を強く収縮する物質が遊離された。その収縮は選択的抗SRS-A剤のFPL55712によって拮抗された(それぞれSRS-AおよびSRS),またSRS-AおよびSRSはいずれも酸性側で不安定であり,arylsulfatase(4units/ml)処置によりSRS-Aはleukotriene(LT)D
4と同様に失活したが,SRSはLTC
4と同様に失活しなかった.2)SRS-A遊離は10
-5~10
-3M tranilastおよび10
-9~10
-7M isoprotcrenolによって用量依存的に抑制され,IC50(conccntration of 50% inhibition)はそれぞれ1.1×10
-4Mおよび8.3×10
-9Mであった.しかし10
-6~10
-3M DSCGは遊離抑制作用がみられなかった.3)10
-3M tranilastのSRS-A遊離抑制作用は3×10
-6M propranololによって影響されなかったが,10
-7M isoproterenolの抑制作用はpropranololによって著明に減弱した.4)SRS遊離は3×10
-5~3×10
-4M tranilastによって用量依存的に抑制きれ,そのIC50は6.4×10
-5Mであった.しかし10
-9~10
-7M isoproterenolおよび10
-6~10
-3M DSCGは軽度な抑制作用を示したにすぎなかった.5)0.5ng/ml LTC
4および1ng/ml LTD
4による摘出モルモット気管筋収縮は10
-4M以上のtranilastによって拮抗され,そのIC50はそれぞれ2.2×10
-4Mおよび2.0×10
-4Mであった.以上の結果よりSRS-Aの大部分はLTD
4であり,SRSはLTC
4と思われた.またtranilastによるSRS-A遊離抑制作用および気管筋におけるLTに対する拮抗作用はtranilastの抗喘息作用を担っているものと考えられ,その作用機作はisoproterenolとは異なる.
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