日本薬理学雑誌
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循環器疾患患者の血漿ブラジキニン濃度について
南 勝富樫 広子佐野 真知子遠藤 泰斉藤 秀哉橋本 文教藤田 克裕安田 寿一栗谷本 厳也西野 友善
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1983 年 82 巻 2 号 p. 159-169

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抄録

カリジンを家兎に免疫して得られた抗血清を用いたRIAによってヒト血漿ブラジキニン濃度(BK)を測定し,本態性高血圧症患者(HYT),労作性狭心症(IHD)および他の心疾患患者(CARD)の血漿BKを比較した.同時に採血測定した血漿カテコールァミン(CA;NE,E)濃度,血漿レニン活性(PRA)との関連牲,ついでcaptopril(SQ14225)投与前後および寒冷昇圧試験前後での血漿BKの変動について検討した.測定値のバラッキを防ぐため,キニネース抑制薬とカリクレイン抑制薬ならびにXII因子の活性化を抑制するポリブレンの混合液をあらかじめ真空採血管に入れておき採血した.血漿CA濃度はHPLCを用いたTHI螢光法により,PRAはRIAにより測定した.1)50サンプルを3群にわかち,採血当日(17.6±4.1 pg/ml),10日後(18.4±4.8 pg/ml)さらに17日後(19.5±3.1 pg/ml,mean±SD)の間隔をおいて測定した値は良好な再現姓を示した.2)健常者の血漿BK濃度は12.24±10.00 pg/mlであった。HYTは9.25±5.09 pg/ml,IHDは8.04±3.17pg/mlとともに低値を示しCARD(14.07±8.70pg/ml)との間に有意な差異があった(P<0.05).3)心不全患者にcaptoprilを投与したところ30分より血圧,肺毛細管圧が下がり,心拍出量は増加し,肺うっ血が改善した.PRAはcaptopril投与後30分より上昇した.血漿BK濃度は一旦下降した後上昇を示した.血漿NE濃度は一時上昇した後,もとのレベルに復した.4)寒冷昇圧試験による血漿BK濃度の変化では,健常者の場合は,血圧の上昇とともに血漿BK濃度が上昇したが,HYTは血圧の上昇とともに血漿BK濃度が下降するものが多かった.従来,血漿BK濃度の測定値はパラツキが大きく臨床的評価は困難であった.本RIAは再現性も良く,血漿BK濃度を変化させる寒冷ストレスやcaptopril投与に応じて血漿BK濃度も変化することがわかった.今後,血漿BK濃度は同時に採血した他の体液性因子と比較検討され,その臨床的意義が明らかになっていくものと思われる.

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