日本薬理学雑誌
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漢方方剤による糖尿病病態マウスの血糖下降作用
鈴木 潤木村 正康
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1984 年 83 巻 1 号 p. 1-10

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抄録
漢方方剤はいわゆる随証療法的に使用されるので,成因の異なる糖尿病病態モデル,アロキサン糖尿病マウスおよび遺伝性糖尿病マウスKK-CAyを用いて,塘尿病治療に繁用される漢方方剤の血糖下降効果を対比研究した.その結果,i)アロキサン糖尿病マウスでは,metforminによる血糖下降効果はみられたが,sulfonylurea系薬物に対する感受性は微弱だった.ii)KK-CAyマウスはtolbutamideに対してmetforminと同程度の感受性を示し,また7日間のtolbutamide連続投与により持続的な血糖下降効果がみられた.iii)漢方方剤の効果は,アロキサン病態において,竹葉石膏湯>白虎加人参湯≈麦門冬湯>八味丸≈人参湯>五苓散の順で,方剤間に感受性の差がみられた.iv)KK-CAyマウスにおいては,絶食条件下,人参および甘草を共通に含む4方剤でやや強く,八味丸と五苓散の効果は弱かった.v)非絶食条件下のKK-CAyマウスでは,八味丸に対する感受性が強く,他の方剤間には差がみられなかった.vi)白虎加人参湯および八味丸の27日間連続経口投与による効果は,投与時に見られる一過性の効果のみで,累積的な効果は認められなかった.以上,成因の異なる糖尿病病態モデルを使用することにより,糖尿病治療漢方方剤の病因論的な解析および作用区分が可能であることが示された.
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