日本薬理学雑誌
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83 巻, 1 号
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  • 鈴木 潤, 木村 正康
    1984 年 83 巻 1 号 p. 1-10
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    漢方方剤はいわゆる随証療法的に使用されるので,成因の異なる糖尿病病態モデル,アロキサン糖尿病マウスおよび遺伝性糖尿病マウスKK-CAyを用いて,塘尿病治療に繁用される漢方方剤の血糖下降効果を対比研究した.その結果,i)アロキサン糖尿病マウスでは,metforminによる血糖下降効果はみられたが,sulfonylurea系薬物に対する感受性は微弱だった.ii)KK-CAyマウスはtolbutamideに対してmetforminと同程度の感受性を示し,また7日間のtolbutamide連続投与により持続的な血糖下降効果がみられた.iii)漢方方剤の効果は,アロキサン病態において,竹葉石膏湯>白虎加人参湯≈麦門冬湯>八味丸≈人参湯>五苓散の順で,方剤間に感受性の差がみられた.iv)KK-CAyマウスにおいては,絶食条件下,人参および甘草を共通に含む4方剤でやや強く,八味丸と五苓散の効果は弱かった.v)非絶食条件下のKK-CAyマウスでは,八味丸に対する感受性が強く,他の方剤間には差がみられなかった.vi)白虎加人参湯および八味丸の27日間連続経口投与による効果は,投与時に見られる一過性の効果のみで,累積的な効果は認められなかった.以上,成因の異なる糖尿病病態モデルを使用することにより,糖尿病治療漢方方剤の病因論的な解析および作用区分が可能であることが示された.
  • 前川 寛, 関谷 淳, 野村 裕子, 山本 順之祐
    1984 年 83 巻 1 号 p. 11-15
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    著者らは,先にurethane麻酔したWistar系ラットにβ遮断薬を静注した場合,持続的な血圧上昇が見られることを観察し,その原因がラヅトの未梢血管,特に骨格筋血管のβ受容体を介する拡張性緊張が他の動物の場合より強いためであろうと推論した.今回は,この機序をさらに明らかにするために,urethane麻酔したラットの後肢動脈を自己血で定流量潅流して末梢血管潅流圧を測定した.propranolol 0.001~0.1mg/ml(5μl)末梢動脈内投与により血管潅流圧の有意な上昇が認められた.モルモットおよびウサギでの同様な実験では血管潅流圧の有意な変化は認められなかった.このことから,ラットが末梢血管,特に骨格筋血管のβ受容体を介する拡張性の緊張がモルモットやウサギにくらべて強く,β遮断薬による昇圧作用の原因となっているものと考えられる.
  • 南 勝, 佐野 真知子, 富樫 広子, 遠藤 泰, 斎藤 巌, 野村 朗, 斎藤 秀哉, 中村 仁志夫, 栗本 文彦, 桜井 兵一郎, 安田 ...
    1984 年 83 巻 1 号 p. 17-31
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    ヒトおよびラットの血漿カテコールアミン(CA)濃度を酵素アイソトープ法(REA),高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いたtrihydroxyindole蛍光法(HPLC-THI)ならびにHPLCを用いた電気化学検出法(HPLC-ECD)によって同時に測定し,三法の比較を行った.さらに,ラットの血漿を用いて血漿CA測定値におよぼす種々の因子について検討を加えた.1)血漿norepinephrine(NE),epinephrine(E)の感度や再現性は,三法間に差異はみられなかった.2)REAは少量の血漿量で測定できるという利点があった.末梢血中の血漿dopamine(DA)濃度がHPLC-THIでは測定困難であるがREAおよびHPLC-ECDでは測定可能であった.3)ラットの血漿CA濃度は5ml以上の採血で有意な上昇を示した.4)無麻酔,無拘束ラットの血漿CA濃度は,urethane,α-chloralose麻酔したラットの大腿動脈血中の血漿CA濃度とほぼ同値を示した.無麻酔・無拘束ラットの暗期の血漿NE濃度は明期のほぼ2倍の値を示した.5)脳卒中を発症していた例を含んだ全ての脳卒中易発症高血圧自然発症ラット(SHRSP)で検討すると,週齢と血漿NE濃度との間に有意な正相関がみられた。Wistar京都ラット(WKY)には,この相関がみられなかった.雄SHRSPの血漿NE濃度は雌SHRSPに比較して高い傾向を示した.脳卒中を起こしていたSHRSPはWKYや健常なSHRSPに比較して血圧も血漿NE濃度も高値であった.6)血漿試料の取扱いの検討では,一度に解凍融解処理をすると,2~4°Cにおかれてあっても10時間で,およそ3分の1に血漿CA濃度が減少することがわかった.また,適当な量の過塩素酸処理による除タンパクは遊離型DA濃度を上昇させなかった.以上より,血漿CA濃度を測定する際には,測定法の吟味はもちろんのこと,とくに小動物を用いての実験については,採血条件,採血量,週齢,性差,麻酔,採血時間,血圧,凍結融解,除タンパク処理さらに脳病理の検索などの慎重な検討が必要と思われる.
  • 溝淵 真人, 松岡 信夫, 斎藤 康, 吉田 尚, 熊谷 朗
    1984 年 83 巻 1 号 p. 33-37
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    ラット(500g)にmazindol 0.5mgを5日間経口投与した.mazindol投与群で体重が10%減少した.mazindol投与群は非投与群に比べて副睾丸脂肪組織重量が19%減少した.血清遊離脂肪酸,中性脂肪,総コレステロール,リン脂質は低下し,血糖は上昇した.〔1-14C〕-palmitic acidを外頸動脈より注入し,15分後の大脳皮質の脂質画分への取り込みでは,摂食状態ではmazindolの投与により,血中からの遊離脂肪酸の取り込みの減少がみられ,リン脂質,トリグリセライド画分への取り込みの増加が認められた.36時間絶食にした後のmazindolの投与では,遊離脂肪酸の増加,リン脂質,トリグリセライド画分への取り込みの減少が認められたが,エステル化した脂肪酸の和/遊離脂肪酸の比は摂食状態のそれと同じであった.
  • 吉村 弘二, 堀内 裕一, 井上 譲, 山本 研一
    1984 年 83 巻 1 号 p. 39-67
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    精神依存能を有する主な中枢神経作用薬を対象にラットによる静脈内自発的摂取法を確立し,本方法を用いて筋弛緩作用の弱い新しい睡眠導入剤1H-1,2,4-triazolyl benzophenone誘導体450191-Sの薬物依存能を調べた.1)methamphetamine 0.25~1mg/kg/infusionに対して24例中20例のラットは昼夜を問わず30~60分間隔で自発的摂取を行い,定率を増加するとレバー押しは著しく強化された.うち15例は大量摂取により死亡した.cocaine 1.2mg/kg/infusionにおいてもほぼ15分間隔で連続摂取が行われ強化効果が認められた,両薬物の自発的摂取パタンの特徴は摂取期と休息期が周期的に現れることでビークルに置換するとオペラントレベルは著しく増加した後速やかに消去された。2)morphine 0.1~5mg/kg/infusionでは20例中13例のラットが対照より高いオペラントレペルで自発的摂i取を行い少数例に強化効果が認められた.一日の摂取量は用量に依存して増加したがその摂取パタンには周期性がなかった.3)Pentazodne 1~2mg/kg/infusionでは12例中10例が自発的摂取を行いうち4例に強化効果が認められた.4)phcnobarbital 0.5~2mg/kg/infusionでは8例中4例,diazepam 0.5~1mg/kg/infusionでは22例中14例のラットが夜間優位の自発的摂取を行いdiazepamの3例では定率を増やすとレバー押しが著しく強化された.ビークルに置換しても両薬物とも容易に消去作用は現れなかった.このようにラットは主な中枢神経作用薬を積極的に静脈内に自発的摂取を行ったが,その摂取様式は薬物により異った.5)ラットに450191-Sを8週間経口投与した後突然休薬を行うとdiazepam,nitrazepamと同程度に軽度の体重減少,中等度の摂餌量の減少があり,diazepamとの間に交差依存性が成立したので450191-Sにはトランキライザー型の身体依存能のあることが示唆された.一方,静脈内自発的摂取法では11例中2例のラットが450191-S 0.5~2.5mg/kg/infusionを摂取したが,その程度はdiazepamのそれより著しく弱かったので精神依存能は低い化合物と推定された.
  • ラット酢酸潰瘍治癒経過の内視鏡観察(2) ―潰瘍の治癒および再発,再燃について―
    府川 和永, 河野 修, 三崎 則幸, 内田 勝幸, 入野 理
    1984 年 83 巻 1 号 p. 69-77
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    ラット酢酸潰瘍を365日にわたり内視鏡で観察し,その治癒,再発,再燃経過を明らかにした.さらに,それらに対する潰瘍作製部位,動物の週齢および性の影響についても検討した.1)7週齢雄ラットの胃前壁胃底腺幽門腺境界部の漿膜下に20%酢酸0.05mlを注射して作製した潰瘍は,作製後3日目で潰瘍底に凝血,壊死物を伴う類円形の活動期潰瘍として観察され,日数の経過とともに縮小し(10~50日),約50%が辺縁のひだ集中を残して搬痕治癒した(35~154日).一方,50日目以降,縮小した潰瘍が再び大きくなって再燃(37%),あるいは治癒例に再び潰瘍が生じて再発(治癒例の40%,全例数の21%)する例が観察され,累積再燃・再発率は365日目で59%となった.2)大弩胃底腺部に作製した潰瘍は,縮小が速く,20日目で初発治癒例がみられ,133日目までに全例治癒した.さらに365日目まで再燃あるいは再発する例はなかった.3)25週齢雄ラットに作製した腺境界部潰蕩の累積治癒率は33%,累積再燃・再発率は67%であり,7週齢雌ラットでは累積治癒率,累積再燃・再発率はいずれも60%であった.以上の結果から,ラット酢酸潰瘍の治癒,再発,再燃に種々要因が影響し,特に潰瘍の存在部位の影響が大きいことが示された.
  • 長谷川 順一, 野崎 正勝, 藤村 一
    1984 年 83 巻 1 号 p. 79-83
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    血清アルブミンをダンシル化し,ピリルビンの結合によって生じる蛍光の消光現象を用い,血清アルブミン上のビリルビン強結合部位に対する薬物の影響を検討した.ビリルビンの血清アルブミンへの結合はウシ血清アルブミンに比してヒト血清アルブミンの方が強力であった.抗炎症薬のなかでfenamate類,allylphenyl propionic acid類は比較的強いビリルピン遊離作用を示し,flufenamic acidおよびketoprofenはヒト血清アルブミンからビリルビンを遊離した.indomethacinはほぼ無影響であったがclidanacはビリルビン結合部位に対し強い影響をあたえた.サルファ剤,抗生剤,warfarin,tolbutamide,phenytoinまたステロイド剤などはビリルビンを遊離しなかった.ここで用いた実験系は血清アルブミン上のビリルビン強結合部位に対する薬物の作用を検討するためのすぐれた方法であると考えられた.
  • 長谷川 順一, 中山 環, 野崎 正勝, 藤村 一
    1984 年 83 巻 1 号 p. 85-91
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    新規抗炎症薬suprofen(SPF)の血清アルブミン相互作用をindomethacin(IM)およびketoprofen(KTP)と比較検討した.牛血清アルブミン(BSA)との結合に基づく紫外部差スペクトル法による結合定数はSPFとIMは同等であり,KTPはやや小さかった.BSA熱変性抑制作用はこの結合定数の差をよく反映していた.BSAのトリプトファン蛍光に対しIMが最も強い消光を示し,ついでSPFでありKTPは弱かった.アゾ色素HABAのBSA結合によるメタクロマジー吸収をIM,SPFは著明に増強した.KTPは弱い増強傾向を示した.他方phenylbutazoneはこの吸収を強く抑制した.人血清アルブミン(HSA)に対しSPFはサイトIIのプローグであるdansylprolineの結合のみを阻害した・KTPとIMはサイトIプローブのdansylamideおよびサイト豆プローブの両者の結合を阻害した.BSAあるいはHSAにおけるビリルビン結合に対しKTPのみがビリルピン遊離作用を示し,SPF,IMの作用は無視できた.SPFは血清アルブミンに対し強い相互作用を示すがその様式はKTPやphenylbutazoneとは異なると考えられた.
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