日本薬理学雑誌
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Ambulo-Drinkometerを用いたラットの生活行動の時間生物学的解析と薬理学的応用
南 勝富樫 広子佐野 真知子斉藤 巖野村 朗小池 勇一黒澤 美枝子斉藤 秀哉
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1984 年 83 巻 4 号 p. 363-371

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抄録

群大式automatic Ambulo-Drinkometerを用いて,1)ラットの自発運動と飲水行動とを同時に長時間記録し,2)両行動の時間生物学的分析法を検討し,3)この両行動におよぼすclonidineとguanfacineの影響をみた.さらに,4)代謝ケージを接続したDrinkometerによって行動と代謝データーを同時に得られる装置を試作検討した.時間生物学的には,自己相関関数を求め,フーリェ変換を行いパワースペクトル分析を行った.その結果,1)明暗を逆転した環境に馴化するのにおよそ10日間が必要であった.2)パワースペクトル分析によって脳卒中易発症高血圧自然発症ラット(SHRSP)の雌の行動リズムは,24時間の概日リズムのほかに,およそ5日間の長い行動周期が見出された.3)Wistar京都ラットもSHRSPも,ともに週齢を重ねるにつれて自発運動が減少する傾向を示した.4)clonidineもguanfacineも,ともにそれぞれの投与中の行動は,投与前と比較して有意な変動を示さなかったが,投与中止後に,24時間より短い行動リズムであるウルトラディアンリズムがみられた,投与中止後のウルトラディアンリズムの出現は,自発運動および飲水行動ともにみられた,この行動リズムの異常の出現は,clonidine投与中止後にあらわれ,しかもguanfacine投与中止後にもみられることより,これらの薬物の中断(withdrawal)現象の一つを示すものと思われた.5)飲水行動と尿中へ排泄された体液性因子を同時に測定した結果,飲水行動,尿量,尿中アルドステロン排泄量:および尿中カテコールアミン排泄量はともに暗期で大,明期で小の傾向がみられた.以上より,auto maticAmbulo-Drinkometerは行動薬理学の研究にとって非常に有用であることが示された.今後の行動薬理学の研究においては,振幅である活動量の多少を分析するぼかりでなく,時間生物学的に行動リズムを周波数分析により求め,さらに尿中へ排泄される体液性因子の測定をも同時に行うべきと思われた.

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