日本薬理学雑誌
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薬物の胎仔毒性に関する薬理学的研究
(VI)ラットにおけるTrypanblueおよび関連化合物の催奇形作用について
江馬 真川崎 浩之進小川 義之伊丹 孝文加納 晴三郎
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1984 年 83 巻 5 号 p. 459-465

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抄録

trypanblue(TB)およびその関連化合物の催奇形作用を検討した.Wistarラットを用い,精子発見日を妊娠0日として妊娠20日にラットを開腹し胎仔への影響を調べた.1)市販TB(C-TB)に混入する可能性のあるο-tolidine,1-amino-8-naphthol-3,6-disulfbnic acidまたは1-nitronaphthalene-3,6-disulfonic acid 0.26m mol/kgを妊娠7日に皮下投与したところ,いずれの化合物投与群においても胎仔への影響は認められなかった.2)C-TBあるいはGTBからシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって分画したblue fraction(blue fr.)またはred仕action(red fr.)を妊娠7日に皮下投与した結果,bluefr.100および50mg/kg投与群において奇形胎仔の発現が認められた.発現頻度はそれぞれ40.2および25.1%であり,同量のC-TB投与群(31.9および12.2%)に比べて高い傾向がみられた.blue fr.投与群で観察された奇形の型はC-TB投与群と同様であり,脊椎裂,尾奇形,彎曲足および椎骨奇形などであった.しかし,red fr.投与では100mg/kgの投与量でも奇形胎仔の発現はみられず,胎仔致死作用も認められなかった.3)妊娠11日にblue fr.あるいはred fr.の2.5または1.0μg/1μl/embryoを胚外体腔内に投与した。blue fr.2.5μg投与群における奇形胎仔発現頻度は38.9%であり,対照群との間に有意差が認められた.観察された奇形の型は尾や椎骨の奇形であり,これらの奇形はC-TBまたはblue fr.を妊娠ラットに皮下投与したとき最高頻度で認められたものと同一であった.しかし,red fr.には催奇形作用は認められなかった.以上の成績より,C-TBによる奇形胎仔の発現はblue fr.の作用であると考えられる.

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