日本薬理学雑誌
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新しい睡眠導入剤1H-1,2,4-Triazolyl benzophenone 誘導体450191-Sの薬理(III)
450191-Sと他の中枢作用薬との相互作用に関する行動薬理学的研究
伊比井 信廣堀内 裕一山本 研一
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1984 年 84 巻 2 号 p. 155-173

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抄録
マウスを用い,新しい睡眠導入剤450191-Sと臨床的に併用が予想される代表的な薬物haloperidol,imipramine,phenytoin,morphineまたはaminopyrineとの相互作用を行動薬理学的に検討し,nitrazepam,estazolamおよびtriazolamと比較を行なった.450191-Sおよびnitrazepamの抗pentetrazol痙攣作用の効力はaminopyrineとの併用によって著明に減弱し,一方estazolamの効力はphenytoinとの併用によって著明に増強された.さらに,nitrazepamの場合はaminopyrine以外の薬物との併用によって,またestazolamの場合はhaloperidolとの併用によって,作用パターンが変化することが示唆された.しかし,triazolamの抗pentetrazol作用は他剤によって何ら影響を受けなかった.haloperidolの抗apomorphine作用(climbing行動抑制作用)の効力はnitrazepamとの併用によって有意に減弱し,またhaloperidolの作用パターンはestazolamあるいは450191-Sとの併用によって変化することが示唆された.しかし,triazolamはhaloperidolの作用に何ら影響を及ぼさなかった.imipramineのreserpine低体温拮抗作用はnitrazepamによってほとんど影響を受けなかったが,450191-S,estazolalnおよびtriazolamによって軽度に減弱された.phenytoinの抗最大電撃痙攣作用の効力は450191-Sおよびtriazolamによって有意に減弱され,またnitrazepamはphenytoinの作用パターンを変えた.しかし,estazolamはphenytoinの作用に有意な影響を及ぼさなかった.morphineおよびaminopyrineの鎮痛作用の双方あるいは何れか一方は,estazolam,triazolamおよびnitrazepamによって有意に増強されたが,450191-Sによっては何れも影響を受けなかった.以上の成績から,450191-Sの抗pentetrazol痙攣作用は,その強さおよび安定性において,triazolamより劣るが,nitrazepamおよびestazoiamよりは優れていること,また450191-Sはmorphineおよびaminopyrineの何れの鎮痛作用に対しても増強作用を示さないことで,他の睡眠導入剤とは区別され得ることが示唆された.
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