日本薬理学雑誌
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FUT-175(nafamstat mesilate)の薬理学的研究
II.実験的急性膵炎に対する作用
岩城 正廣尾関 正之佐藤 拓夫鈴木 邦彦元吉 明美鈴木 祥之藤田 允僧青山 卓夫
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1984 年 84 巻 4 号 p. 363-372

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抄録

蛋白分解酵素阻害剤 FUT-175(nafamstat mesilate)の種々実験的急性膵:炎モデルに対する作用を静脈内持続注入により検討した.ウサギのtrypsin膵炎に対し,FUT-175(5~50μ/kg/min)は,用量に依存した延命効果を示すとともに,膵炎発症にともなう血中trypsin活性の上昇を著明に抑制した,一方,FUT-175(50μg/kg/min)は,血清amylase,lipase,glucose,ヘマトクリット,血清補体価およびcalciumの変動に対しては,一部改善傾向を示したものの明らかな作用は示さなかった.ウサギ膵の病理組織学的検討において,病態対照群が典型的な急性膵炎像を示したのに対し,FUT-175(50μg/kg/min)投与群では,病変の発現領域は小さく,また,その程度も軽減され,その効果を認めることができた.ラットのtrypsinおよびendotoxin膵炎において,FUT-175(1~50μg/kg/min)は,ウサギの場合と同様,用量に依存した延命効果を示した.また,その効果はgabexate mesilatdこ比し,約100倍強力であった.イヌの実験で,FUT-175(1~100μg/kg/min)は,trypsinおよびkanikreinの静脈内注射による降圧反応を用量依存的に抑制したが,bradykinin,histamineおよびacetylcholineの静脈内注射による降圧反応にはほとんど影響を与えなかった.また,trypsinの静脈内持続注入による血圧低下とこれに続くショック相の発現,および血中trypsin活性の上昇に対し,FUT-175(1~50μg/kg/min)は,同時投与およびあと投与ともに抑制作用を示し,膵炎発症にともなうショックに対するFUT-175の予防的および治療的効果が期待された.

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